三菱ケミカルが推進するグローバル化に向けたダイバーシティ戦略のチャレンジ―SAP HR Connect Autumn 2018 基調講演レポート


企業の人事課題に取り組む担当者の皆さまをお招きして、2018年11月7日に東京・汐留で開催されたSAP HR Connect Autumn 2018。このブログでは「真のグローバル企業、KAITEKIカンパニーを目指して」と題して行われた、三菱ケミカル株式会社 取締役 常務執行役員を務める二又一幸氏による基調講演の模様をレポートします。
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真のグローバル化に向けた人材育成の新たな仕組みづくり

三菱ケミカル株式会社(以下、三菱ケミカル)は、2005年に設立された株式会社三菱ケミカルホールディングスの事業会社の1つです。三菱ケミカルホールディングスグループでは、グループ共通のスローガンとして「KAITEKI(カイテキ)経営の推進」を掲げ、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続くこと」をコンセプトに、「資本の効率化を重視する経営」「イノベーション創出を追求する経営」「サステナビリティの向上を目指す経営」の3つを価値基準として、企業活動を推進しています。

まずセッションの冒頭で二又氏は、社会変革のうねりがますます激しさを増し、グローバル化やデジタル化といった変化の多くは、実際に目前に現れるまでは予測が困難であることなど、深まる時代の不透明性を強調しました。

こうした変化への対応を進める上で、同社が2つの柱として捉えているのが、「真のグローバル化の推進」と「多様性を強みにする経営(ダイバーシティの推進)」です。そして、この考え方は人材に関する戦略にも生かされ、全社規模のさまざまな取り組みが進められています。

「真のグローバル化の推進」については、すでにいくつかの具体的な施策が展開されています。その中でも筆頭に挙げられるのが、「タレントマネジメント」です。同社では、各部門から将来の幹部候補生となる人材をリストアップし、全社での議論をもとに計画的かつ戦略的な人材の配置を行っています。ここでは「コンピテンシーフレームワーク」という概念を採用し、グローバルビジネスで有用なコンピテンシーをあらかじめ設定し、研修や人材の適材適所のアサインに活用しています。

もう1つ、同社が力を入れているのが「リーダーシップトレーニング」です。これは上級幹部候補者を対象に、グローバルおよびリージョンごとに選抜研修を実施するもので、2017年から欧州エリアでスタートしています。
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ダイバーシティ戦略のキーマンを外部から招聘し、社員の声を広く集約

変化への対応に向けたもう1つの柱である「多様性を強みにする経営(ダイバーシティの推進)」について、二又氏は「人材の多様性には2つの捉え方がある」と話します。1つは「属性による多様性」です。ここでは性別、年齢、国籍、人種などの属性が多様性を示す判断基準となります。もう1つは「内なる多様性」で、これは1人ひとりの人材の個性を意味します。同社では、まず属性レベルの多様性の実績を積み重ねることで、最終目標としてそれぞれの人材の個性を最大限に引き出せるダイバーシティに到達できると考えています。

しかし、実際の組織づくりや職場におけるダイバーシティの推進には、さまざまな困難が伴います。各人が互いに自分とは異なる意見や考え方を受け入れながら、個々の能力を最大限に発揮する。この一見矛盾した理念を成長につなげていくためには、いくつものハードルを乗り越えなくてはなりません。

そのため、三菱ケミカルでは「No Diversity, No Innovation!(ダイバーシティなくしてイノベーションの実現はない)」をスローガンに、継続的な取り組みを展開しています。その象徴とも言えるのが、新たな発想やカルチャーを持った人材の社外からの登用です。2018年3月にダイバーシティ推進担当役員に就任した中田るみ子氏は、外資系企業で役員を務めた経験を生かし、就任から約7カ月間で全事業所を訪問し、600名以上の社員と直接対話を重ねています。

その結果、現場の若手や女性社員を中心に、これまでは聞かれなかったさまざまな意見や要望、提案が集まってきました。これまで男性ばかりだった経営層に異なった視点やキャリアを有する女性が登用されたという事実に、社員たちが新たな可能性を感じてくれたのではないかと、二又氏はその手応えを話しています。

人材の多様性には「属性」と「個性」の2つがある。

人材の多様性には「属性」と「個性」の2つがある。

新たな研修制度「Experience Japan」で中長期的なグローバル人材の育成を推進

優れた人材の育成においては、そのための仕組みづくりが重要であることは言うまでもありません。もちろん、三菱ケミカルでもこれまで幅広い人材育成・研修の制度を実施してきました。そして今回、グローバルビジネスを支えるダイバーシティの推進を目的として新たにスタートするのが、「Experience Japan」と呼ばれる海外人材の研修プログラムです。

これまで日本人が海外へ出向く研修はありましたが、将来的なグローバル人材の獲得のためには、日本人が海外を知るのと同様に、もっと外国人人材に日本に対する理解を深めてもらう必要があります。『Experience Japan』では、2019年度から毎年10名程度の海外の現地社員が来日し、彼らに本社や事業所で日本での業務や文化を学び、相互理解を深める機会を提供します。

同社では、このプログラムを国境や地域を越えて各人が持ち前の個性を発揮し、ビジネスを成長させる人的ネットワークを構築するための布石にしたいと考えています。二又氏によると、初年度に予定している研修生の主な出身地域は、EU 地域とアジア・パシフィック地域が共に37%、中国が15%、そしてアメリカが11%の内訳だといいます。

海外の人材に日本を知ってもらう目的でスタートした 研修プログラム「Experience Japan」。

海外の人材に日本を知ってもらう目的でスタートした
研修プログラム「Experience Japan」。

SuccessFactorsで人事DBを刷新、デジタル活用で働き方改革を加速

三菱ケミカルグループがスローガンとして掲げる「KAITEKI経営の推進」には、グループを支える1人ひとりの人材の「健康支援」および「働き方改革」を支援する「KAITEKI健康経営」という考え方も含まれています。
とりわけ「働き方改革」においては、デジタルの積極的な活用を目指し、その基盤としてSAP SAP S/4HANAやMicrosoft Office 365をはじめとしたクラウドサービスを利用しています。具体的な活用例としては、オフィスのフリーアドレス化やテレワークの推進、サテライトオフィスの展開などが挙げられます。

その他にも、電子承認や文書のデジタルライブラリー、社内SNS・ポータル・掲示板、Web会議やスケジュール管理ツールなどがあり、各種のデジタルソリューションをグループ内に浸透させていくことで、働き方改革の大きな推進力していく考えです。

こうした現場に向けたソリューション展開の一方で、マネジメント側の人事制度においてもデジタル活用を推進しています。同社が「SAP SuccessFactors」を使って人事DB「One Global Database」を新たに構築した目的は、まさにここにあります。これにより、未来の成長を支える優秀な人材の発掘、育成、配置、管理をグローバルで一元的に進められるようになります。

最後に二又氏は、三菱ケミカルが目指す理想的な働き方として、テレワークなどのリアルタイムコミュニケーションを通じた「いつでも、どこでも、柔軟に働く」体制の必要性を強調しました。それを足がかりにすることで、さらなる業務の効率化や生産性の向上を追求し、新たなビジネスにチャレンジするための基盤が強化されます。最新のデジタルテクノロジーとクラウドソリューションを活用した同社の取り組みは、まさに「未来を切り開く人事」という今回のイベントのテーマにふさわしい、大きな可能性を感じさせる内容となりました。

>>参考資料:SAP SuccessFactors製品カタログはこちら

三菱ケミカルの人事戦略を支える SAP SuccessFactorsによる「One Global Database」。

三菱ケミカルの人事戦略を支える
SAP SuccessFactorsによる「One Global Database」。