P&G社のグローバル戦略を支えた経理・財務組織変革


こんにちは、SAPジャパンで経営管理ソリューションを担当する高橋です。
今回から3回にわたって、先日東京で開催された当社セミナー「グローバル競争力強化に向けたファイナンス組織/業務の変革」のセッションをもとに、プロクター&ギャンブル(P&G)社における経理・財務組織の変革事例についてご紹介します。

連載の第1~2回では、元P&G社ディレクター Timothy Biehle氏による基調講演をもとに、P&G社における経理・財務組織変革の背景や狙い、そしてシェアードサービス構築の具体的な取り組みをご紹介します。また3回目は、Biehle氏とSAPジャパン株式会社CFOのChristian Jehleによるパネルディスカッションをもとに、日本企業における経理・財務の業務変革のヒントを探っていきます。

グローバル展開のための過程が新たな成長と効率化の妨げに

世界最大の消費財メーカーとして知られ、300アイテムを超える商品を世界180か国で販売するP&G社が、経理・財務組織の大々的な変革を実施したのは1999年。ここで新たに創設されたシェアードサービス組織は、業界最大の規模と先進的なコンセプトを持ち、コスト削減、効率性、サービス、イノベーション、品質といった一連の課題について大きな成果を挙げると共に、競争上の優位性を生み出しました。

この経理・財務組織変革の構想の背景には、当時急速にグローバル化を進めるP&G社をさらに成長させていく上で、組織のあり方にも大きな変革を求められたことがあったと、Biehle氏は語ります。

1990年代後半、P&G社は拠点を持つ国ごとにゼネラルマネージャーを長とする事業組織(プロフィットセンター)を作り、その国における利益を独立的に管理すると共に、ほとんどの事案に対して意思決定の権利を持っていました。

「商品のブランドポジションニングからパッケージデザインまで、すべてを現地のリーダーが決めていました。こうしたアプローチは、P&G社が各国の市場に参入し、売上を拡大していく過程では大変有効なものでした」(Biehle氏)。

しかしこのメリットがやがて、さらなるビジネス成長を目指す上で克服すべき大きな課題に変化していったとBiehle氏は明かします。

「各国に同じような、しかしまったく異なるビジネスユニットが多数展開していることが、P&G社というグローバル企業のスケールメリットを活かす妨げになっていったのです。重複した業務や効率の悪いプロセスが数多く見られ、1つの業務を遂行するにも多額の間接費がかかっていました」(Biehle氏)。

さらには経営陣やビジネスリーダーがバックオフィス業務の意思決定や課題解決に手をとられ、肝心のイノベーションや成長に費やす時間がないといった深刻な問題も生まれていたと言います。

また、こうした従来の組織の問題点をひときわ明確に示したのが情報システムでした。P&G社は長年にわたり、経理・財務領域を始めとして、弊社SAP製品を軸にした情報システムを構築していました。しかしながら、その設計やデータモデル、プロセスまでもが国ごとにまったく異なっていたのです。

「これは、成長のための財務データ活用といった視点からも非常に大きな問題でした。たとえば紙おむつの各国ごとの製造コストを見ようとしても、データの仕様からして国ごとに違います。そこでまずスプレッドシートのテンプレートを配布して、数週間後に戻ってきたそのテンプレートから、私自身がデータを拾い出しながら数週間がかりでデータをまとめていました。基礎データの仕様や集計方法も異なっており、データ自体の精度も満足のいくものではありませんでした」(Biehle氏)。

コア業務と間接業務の分離、そして統合化されたITシステムの実現

P&G社はこれらの課題を根本的に解決すべく、経理・財務を始めとした組織の一大改革と、それを実現するに相応しい情報システムの導入を決意しました。またその実現にあたって、具体的に「3つのなすべきこと」を決めたのです。

1.事業の再編成

従来各国ごとに行われてきた意思決定や業務を、グローバル規模のビジネスユニットで展開できるよう事業や組織を編成。経営層や各部門のリーダーたちが、イノベーションや成長につながる意思決定に集中できるよう、ビジネスのコア業務と間接業務とを分けた組織形態を創出。

2.グローバルビジネスサービス(シェアードサービス組織)の創設

各国の組織ごとに行われてきたバックオフィスの業務をシェアードサービス化することで、グローバル企業のスケールメリットの創出と組織全体のコスト削減を実現。

3.プロセスとシステムの簡素化および標準化

1~2で述べた新たな組織形態を世界中で展開・導入するため、各プロセスとデータをグローバルで標準化し、全社的に情報システムを統合。

グローバルに事業を展開するP&G社では、世界のどこでも活用できるシステムを構築するため、相応しい実績と適切な機能を備えたSAP 製品の採用を、新たな組織においても決定されました。

グローバルのスケールメリットを実現するシンプルで合理的な組織構成

ここまでの一連の取り組みによって生まれた、新たな P&G社の組織形態は、一見すると複雑なようですが、実は非常にシンプルかつ合理的な構成になっています(図参照)。

「ここで、もっとも重要かつ大きなユニットは、3つのグローバルビジネスユニットです。製品分野ごとに、ビューティ/グルーミング、ヘルス/ウェルビーイング、ハウスホールドケアの3つに分かれています。これらグローバルビジネスユニットがP&G 製品のプロダクトコンセプトに責任を持ち、コンシューマのニーズを把握しています。さらにR&D(製品開発)、生産、マーケティングや広告等もこちらの組織が担っています」(Biehle氏)。

最上部の「市場開拓組織」は、各国それぞれの地域でお客様とじかに接し、P&G社とお客様との仲立ちとなる組織で、いわゆる営業・販売組織にあたります。各国のニーズに基づいて製品をグローバルビジネスユニットに発注し、現地への入庫や配送、流通、そしてエンドユーザへの販売等を手がける地域密着の組織です。

グローバルビジネスユニットの下にある長方形が、今回の組織改革の目玉でもあるグローバルビジネスサービス(シェアードサービス組織)です。ここではさまざまなバックオフィス業務が行われています。そして一番下の長方形は、コーポレート機能です。ここにはCEO、CFO、CMOといった経営方針の決定やコーポレートガバナンスに関わる機能が置かれています。

以上のように、第1回ではP&G社が導入した新たなグローバル企業構造とその背景をご紹介しました。簡素化・合理化されていながら、巨大なグローバル企業のスケールメリットが十二分に発揮される組織形態であるとBiehle氏は語っています。次回の第2回では、これらの組織の中から特にグローバルビジネスサービス(シェアードサービス組織)に絞って、さらに詳しい内容をご紹介していきます。

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