タスネットワークス:デジタルトランスフォーメーションによる託送料削減を実現


前回は、オーストラリアの最南端にあるタスマニア州から風力発電の再生可能エネルギー会社ハイドロ・タスマニアのモバイル活用による作業員の生産性向上と意思決定の迅速化についてご紹介しましたが同じタスマニアから、送配電事業を担っているタスネットワークスのデジタルトランスフォーメーションの取り組みが公開されました。今年10月の最新情報をご紹介します。

スクリーンショット 2018-12-03 1.58.22タスネットワークスはタスマニア州全域の送配電および電気通信ネットワークを所有し運用しています。タスマニア州は北海道の約80%の広さがあります。2014年7月1日に、オーロラ・エナジーとトラセンドネットワークスの合併により設立された会社です。

送配電会社にとって最も重要なことは停電なくお客様の元へ安定的に電気をお届けすることです。そのためには送配電設備の最新情報をリアルタイムで把握できることが必要です。また送配電設備運用のための費用は託送料としてお客様の電気代に加算されるため、お客様の満足度向上のためには出来るだけコストも削減しなければなりません。
しかし合併したばかりのタスネットワークスは、それまで使ってきたレガシーシステムを継承し、多くの重複したシステムを利用していました。部門が違えばシステムも違い業務の標準も出来ません。
そこでまずタスネットワークスはデジタルトランスフォーメーション、ビジネストランスフォーメーションを実現する計画を立てました。プロジェクトは3年間、まず最初にITの統合プラットフォームとしてバックオフィス業務にERPとしてSAP ERPを選択しました。第1段階で会社のコアとなるバックオフィス業務を導入し第2段階では事業のコアとなる設備管理業務とプロジェクト管理業務にSAP ERPを導入したのです。
これによりまずはシステム統合によるシステム運用コストが下がりました。システム統合と共に業務の標準化も進み業務効率も向上しました。そしてSAP ERPを統合プラットフォームとしたことで、設備の情報が一元化され、設備保全に紐つくお金の管理も可視化できるようになったのです。どの設備にどれだけのコストがかかっているということが把握できるようになると、どこを節約すべきか、どこに投資すべきか、設備の最適化を図ることができるようになります。
このようにして運用コストを下げたことで、タスネットワークスは託送料を平均で20%も下げることが出来たのです。

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もちろん、ただ単にシステムを入れたからという理由だけではありませんが、事業のコアとなる設備管理の仕組みと会社のコアとなるバックオフォスシステムの仕組みが連携しているということによって大きな効果をもたらすという素晴らしい事例だと思います。

日本でも資源エネルギー庁より2018年3月に出された 「2030年以降を見据えた次世代電力ネットワークの在り方」の電力ネットワークコスト改革に係る3つの基本方針の中でも”既存ネットワーク等コストの徹底削減” が取り上げられています。タスネットワークスは小さいからこそシンプルで本質を捉えた仕組みを作ることが出来たのかもしれません。しかし経済産業省より2025年の崖問題が大きく取り上げられ、送配電事業においても10月より「次世代技術を活用した新たな電力プラットフォームの在り方研究会」が設置されました。このような転換期を迎える日本の送配電事業にとって、事業基盤の転換に向けた事例と捉えると大いに参考になるのではないでしょうか。

TasNetworks Helps Tasmania Run at its Best With SAPの動画

 

 

※ 本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、タスネットワークスのレビューを受けたものではありません。