オデロ:陳腐化したオランダ生まれのERP撤去と自動車業界デファクトなデジタルプラットフォームの短期導入


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今回は、ドイツで創業したLEDテールライトのリーディングカンパニーであるオデロ社を取り上げます。90年代後半に基幹業務システムとしてオランダ製Baan ERPを採用し、リーマンショックで業績低迷する中、トルコ企業に買収され、メガトレンドに打ち勝つビジネス変革のために自動車業界デファクトスタンダードのデジタルプラットフォームを短期導入した事例をお伝えします。

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トルコからの救世主

日本ではあまり馴染みがないと思いますが、オデロ社は1935年に南ドイツのエスリンゲンアムネッカーで自動車のインテリアライトを供給するサプライヤとして創業し、昨年の売上高は約330億円、従業員数は約1,800人の中堅企業です。これまでさまざまな照明技術を応用した製品を市場投入し、1998年に世界初LEDを使用した自動車部品の商品化に成功しました。取引先にはドイツ自動車メーカーの御三家、高級車の代名詞のロールスロイス、スーパーカーの代名詞のフェラーリなど欧州17自動車メーカーとの取引があり、ドイツ国内のテールライトのシェアは20%を占めています。

納入先自動車メーカー

Audi                                                Maserati                                         Rolls Royce Bentley                                           Maybach                                        Saab BMW                                              McLaren                                         Smart Ferrari                                            Mercedes-Benz                              Volkswagen Fiat                                                Opel                                                Volvo Lancia                                            Porsche

順風満帆にビジネスを拡大しているかに見えるオデロ社も2008年のリーマンショックでは、特に高級車メーカーとの取引比率が高かったこともあり、業績には暗雲が立ち込めていました。

イスタンブール

そんな状況下、2011年トルコから救世主が現れました。トルコはイスタンブールに本社を構える自動車部品サプライヤグループのバイエルクラタル社に買収されました。トルコ企業がドイツ自動車関連企業を救済するというレアな買収劇ですが、これによりオデロ社は欧州自動車メーカー以外との取引拡大やメガトレンドをテコにした新製品・新サービスに向けたビジネス変革の準備を概ね整えることができました。

 

――― さて、ここで少し時計を巻き戻して、当時の様子を覗いてみましょう ――― 

 

脱“陳腐化オランダ製ERP

オデロ社は、ビジネス変革のプランニングをすすめる過程で見えない時限爆弾を抱えていることをトルコの親会社から指摘されます。それは経営や業務の屋台骨を支えている基幹業務システムです。20年前に大規模アドオン開発を伴い導入されたBaan ERPは、度重なる改修の積み重ねでプログラムはスパゲッティ化しています。経営や業務からの新たな要件にタイムリーに応えることができない老朽化、陳腐化したレガシー状態です。このままでは、ビジネス変革どころか、日常の業務改善や得意先要請にも耐えられない状況です。時限爆弾を抱えたままで事業の継続や変革に取り組むことはあり得ないことです。オデロ社の経営層も強い課題認識を持ち、ビジネス変革のロードマップに基幹業務システム刷新を組み入れることを親会社にコミットします。
新基幹業務システムの要件
・ビジネス変革のロードマップの足かせにならないスピード感ある本稼働
・エンドツーエンドの業務プロセスの標準化と入出力データ項目の統一化
・全社共通評価指標(顧客軸、パートナー軸、従業員軸、製品軸、品質軸、環境軸)
・人が介在する情報のバケツリレーの最小化
・業務処理自動化の最大化による生産性向上
・ユーザービリティや操作性の向上
・月次や週次ではない、リアルタイムな意思決定
・評価指標から原始伝票までのオンライントレーサビリティ
・将来のシミュレーションによる意思決定精度の向上
・IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)へ対応
・コンプライアンスおよびガバナンスの強化
・情報システム保守運用費削減と新しいビジネスチャレンジへの投資

 

――― ここからは現在に戻り、システム選定の取り組みをお伝えします ――― 

 

デファクトスタンダードな次世代ERPの採用

ドイツ生まれのオデロ社は、20年前はBaan ERPを採用しましたが、今回は、自動車産業、とりわけ自動車部品サプライヤの基幹システムでは、ドイツ国内のみならず欧州においてデファクトスタンダードなSAP ERPを採用しました。

機能要件や非機能要件を満たすことに加えて、確実に・早く・安く本番稼働できる導入方法論も、SAP ERP採用の重要なファクターでした。

ModelCompany

SAP以外のパッケージベンダーからはウォーターフォール方式の提案があり、SAPからは、下敷きを使ったFit to Standardアプローチによる提案がされました。下敷きとは、SAP Model Company for Automotiveのことです。そこには自動車産業で全世界106か国、7,100社以上の採用実績とノウハウがテンプレートとして埋め込まれており、オデロ社が必要とするエンドツーエンドの業務プロセス定義、マスタ・トランザクションデータ項目のほとんどがそこに揃っていました。その下敷きは、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)への対応もされているインテリジェントな次世代ERPのSAP S/4HANAの上で稼動し、使いやすさと分かりやすさを兼ね備えたユーザービリティを提供するSAP Fioriと組み合わされたデジタルプラットフォームは、唯一無二のベストな選択肢であることを親会社も納得し、採用が決定しました。

SAP Model Company for Automotiveの業務プロセスの例

・JIT/JIS(ジャストインタイム/ジャストインシーケンス)

・調達部品のJIT納入スケジュールと連携した輸送オーダーとの連携

・部品や製品の物理的ロケーション(例 棚)に対応した倉庫管理

・製品属性やモノづくりの特徴に合わせた生産形態(繰り返し生産、指図生産)

・生産能力、リードタイム制約、段取り制約などを考慮した時間単位の生産スケジューリング

・生産に関わる梱包材の倉庫管理

・同一会社内での工場間の在庫の受け渡し

・財務会計と管理会計

ModelC Schedule

イノベーションへのチャレンジ

今後は、グローバルにビジネス変革やイノベーションへの取り組みを推進し、自動車産業100年に一度の大変革時代を打ち勝つチャレンジしてゆくことでしょう。

オデロ社が経験した陳腐化したERPからデジタルプラットフォームへのリプレースは、日本の中堅・中小自動車部品サプライヤにも該当企業が多くいるのではないかと思っています。
今後も先進国や新興国、グローバルメガサプライヤや中堅企業などなど、自動車産業に関わる方々にデジタルトランスフォーメーションの一助となる海外や日本の事例を引き続き発信してゆきたいと思います。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、オデロ社のレビューを受けたものではありません。