クラウドERPの特長を活かした3カ月サイクルの機能アップデート―ビジネスに最適化されたSAP S/4HANA Cloud


クラウドERPの価値をお伝えすべく、2018年10月10日に開催されたSAP×Deloitte共催セミナー「導入企業に学ぶ、グローバル展開とクラウドERPの親和性」。このブログでは、SAPジャパン株式会社 SAP S/4HANA Cloud事業本部 植木貴三のセッション「Cloud journey with SAP S/4HANA Cloud ~ERPクラウド化のメリットを最大限享受する~」をレポートします。

SAP S/4HANA Cloudと従来のERPの2つの違い

次世代のクラウドERPとしてインテリジェントな機能を備えた注目を集めるSAP S/4HANA Cloudですが、その多彩なポートフォリオゆえに、これまでのERPと何が違うのか、そこからどんなメリットがもたらされるのか、今ひとつわからないという声をよく耳にします。
今回のセッションで、まず植木が言及したのはこの点でした。SAPはこれまで40年以上にわたって、ERPのトップベンダーとして世界の企業に向けて基幹システムを提供してきました。しかし、その間で世の中は大きく変化し、今や「デジタル」がビジネスの成否を左右する重要なキーワードとなっています。そこで、これからのデジタルビジネスを支えるための新たなコンセプトのもとで開発されたのがSAP S/4HANA Cloudです。
従来のERPとSAP S/4HANA Cloudは、2つの点で大きな違いがあると植木は話します。

1つは従来のERPという“箱”、すなわちオンプレミス型のERPが社内にあって、ユーザーのほとんどはその企業の社員でというあり方を、デジタルビジネスにより最適な仕組みに刷新したことです。デジタルビジネスは多くの関係者のエコシステム、ネットワークによって成り立っています。こうした環境では、ERPには特定の企業の社員だけではなく、取引先や顧客といったさまざまな人々が異なる場所からアクセスします。その最適解となるの、クラウドというより柔軟な環境です。

もう1つの違いは、SAP S/4HANA Cloudはこれまで以上にデータ活用に特化したコンセプトで設計されています。本格的なデジタル化時代を迎え、ERPに蓄積されるデータ量は加速度的に増加しています。こうした膨大なデータを全社横断的に活用できる点は、SAP S/4HANA Cloudの最大のアドバンテージであり、これによりデータドリブンな意思決定とビジネススピードの向上が実現します。

オンプレミス からパブリッククラウドまで4つの導入オプションを用意

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日本企業のデジタル化を支援するSAP S/4HANA Cloudの3つのメリット

植木はSAP S/4HANA Cloudのもたらす代表的なメリットとして、次の3つを挙げます。

  1. TCO(総保有コスト)の削減:“相乗り”だから導入・運用コストが大幅に安くなる
  2. クラウドならではの短期導入:必要な時にクイックに導入できる
  3. 継続的なイノベーション:導入後も拡張・改善を盛り込むことができる

これらをもう少し詳しく見ていきましょう。クラウドは、従来のオンプレミスに比べてコストメリットが高いことが特長です。これについて、よくお客様から「なぜあえて価格を下げるのか?」という質問を受けます。それではSAPの利益が減ってしまうではないかと。
実はデジタル化を推進する上で、企業の大きな悩みの種となっているのは、既存システムの運用・維持コストです。これはIT投資の総コストの内72%におよび、新しい分野へのIT投資に使われているのは残りのわずか28%でしかありません。このままでは日本の企業は古いシステムの保守に体力を奪われてしまい、いつまでたってもイノベーションの領域に投資を集中することができません。
こうした状況の打開に向けて、SAPは既存のシステムの運用コストを大幅に下げるべく、クラウド化の提案に注力しています。これにより、わが国の企業がより革新的な分野にIT投資をシフトできるようになれば、日本企業は新たな成長に向けて大きな一歩を踏み出せるはずです。このことがお客様と共に成長することを目指すSAPにとって、大きなビジネスチャンスであることは言うまでもありません。

クラウド化で日本企業のIT投資を未来のデジタル投資に振り向ける

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「スコープアイテム」を活用した短期導入と3カ月サイクルの機能アップデート

とはいえ、SAP S/4HANA Cloudを導入して、クラウドERPならではのメリットを享受するためには、ユーザー側で守らなければならないルールもあると植木は話します。パブリッククラウドという環境は、いわば公共交通の列車のようなもの。これらを快適かつ効率的に利用するためには、やはりルールが存在するということです。
なかでも一番に挙げられるのが、“Fit to Standard”。すなわち「業務を標準機能に合わせる」です。従来の企業システムの導入では、ユーザーの注文に応じてシステムを開発し、パッケージで対応できない機能はカスタマイズするオーダーメイドが当たり前でした。

しかし、SAP S/4HANA Cloudでは発想を180度転換したアプローチが必要です。あらかじめSAP S/4HANA Cloudが提供する機能に、ユーザーがビジネスを合わせる。SAPが用意した標準の機能に合わせる、まさに“Fit to Standard”が求められるのです。
SAP S/4HANA Cloudには、長年にわたるERP導入・運用の実績から生まれた多彩なベストプラクティスが搭載されています。それらは「スコープアイテム」と呼ばれる標準の業務フローとしてライブラリ化され、SAP S/4HANAユーザーに提供されています。導入企業は自社のビジネススキームに最適なスコープアイテムを選択・組み合わせることで、短期間でシステムを導入し、利用を開始することが可能です。
SAP S/4HANA Cloudのサービス開始時には57種類だったスコープアイテムは、現在はすでに350種類に達しており、2018年末には400種類を超える見込みです。これら新機能には機械学習のような最新テクノロジーも含まれ、しかも3カ月ごとに新機能がアップデートされます。
またSAP S/4HANA Cloudの導入に当たっては、SAP Activateと呼ばれる導入プロセスのベストプラクティスをSAPが用意しており、ユーザー側はこのメソッドに準じて進めていくだけで、導入が完了できる点も大きなメリットです。

SAPの提供するベストプラクティスを利用して高品質なクラウド導入を可能に

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SAP Leonardoなど最新技術を応用したツールも継続開発

ここまでで紹介したSAP S/4HANA Cloudの3つのメリットのうち、植木は「継続的なイノベーション」について、数多くのスコープアイテムの中からいくつかのサンプルを挙げて、さらに詳しく紹介しました。会計、設備保全管理、ソーシングおよび調達、生産、さらにプロジェクトポートフォリオ管理やグループレポーティングといった業務別アイテムは、今後さらに充実していくことでほとんどの業務をカバーできるようになるはずです。

また、「機械学習」「予測分析」「インテリジェントアシスタント」といった最新のテクノロジー領域についても、AI機械学習機能による会計管理などの活用事例を紹介し、現在もSAP Leonardoを活用したプロジェクトコストの予測分析など、最新のツールを開発中だと明かしました。

植木が最後に強調したのは、クラウドを活用していく上で一番大切なポイントは、これまでとは考え方を大きく変えなければならないという点です。システムの稼働はゴールではなく、あくまでスタートです。ROIの向上とイノベーションの実現には、クラウドならではのスピードを活かした継続的なビジネスプラットフォームの拡充が不可欠であることを呼びかけて、セッションを終了しました。

3カ月ごとに追加される新機能がクラウドの可能性を拡げていく

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