80カ国のバックオフィスを統合したP&G社のシェアードサービス


SAPジャパンの高橋です。連載第2回目の今回は、P&G社における経理・財務組織変革の中でも、革新的な試みとなったグローバルビジネスサービス(シェアードサービス組織)の構築について詳しくご紹介します。

第1回 : P&G社のグローバル戦略を支えた経理・財務組織変革

間接業務をマルチファンクションでグローバル共通に提供する組織

グローバルビジネスサービス(シェアードサービス組織=以下、GBS)の構築に当たり、当時の多くの企業が導入していたシェアードサービスとは、まったく異なるものを作ろうと決めたと、元P&G社ディレクターの Timothy Biehle氏は語ります。

1999年当時、多くの企業においてシェアードサービスは、会計や人事、調達といった単一機能のサービス提供にとどまっていました。このためユーザーは複数のシステムを自分で使い分けねばならず、またシェアードサービスセンターも地域ごとに個別運営されていたため、せっかくのサービスを全社で同様に享受することができないケースも珍しくありませんでした。

「そこで私たちは、会計や人事、調達、さらには設備管理や建物管理まですべてを包含する、全社で統一されたサービスを構築しようと考えたのです。この最初のコンセプトが、後にGBSという形で結実することになりました」(Biehle氏)

GBSの特長としては、独立した組織として自社の間接業務の大部分を管理し、なおかつ業務プロセスの最初から最後までEnd to Endで完結できること。また、統合されたERPおよびBIソリューションによって、業務全体の標準化や企業コンプライアンスをサポートできることが挙げられます。

「間接業務の大半を1つに統合し、それぞれのビジネスユニットから活用できる形にしようと考えました。そのためには組織的にもシステム的にも、SAP ERPのように、統一・統合されていることが求められました」(Biehle氏)

P&G社では、この考えに基づいて具体的な業務の洗い出しを進め、2000年には14種類からなるGBSのサービスメニューを整えました。

ビッグバン移行による早期導入を進め、4年で約80カ国に展開

各地域のビジネスユニットからGBSへのサービス移管は、ビッグバン型の移行で行われました。

「多くの企業のように、既存のプロセスを生かしながら一部だけをシェアードサービスへ移行する方法や、まず標準化を実施してそこに合わせた新しいシステムを作っていくという方法もありましたが、それぞれの一長一短を考慮した結果、P&G社では業務移行も標準化もすべて同時に実施するという、思い切った方法を選んだのです」(Biehle氏)

P&G社では、移行の実践部隊として2つのチームを立ち上げました。1つは新しい業務プロセスを設定する運用チーム、もう1つは新たにサービスセンターサイトの設置を行うチームです。

「特に運用チームには、世界中の拠点から最も優秀な人材を選抜し、6カ月間で標準化された新しいプロセス構築しました。立ち上げの部分で、書面でのレビューなどを行っていたのでは時間がなくなってしまうので、とにかく世界中から優れた人材を集め、オペレーションのあり方をその場で決めていきました」(Biehle氏)

最初のサービスセンターのテスト運用は、南米のペルーで行われました。ここで問題点の抽出と改善を重ねた後、日本、カナダ、西ヨーロッパも含めた14カ国に順次展開。最終的には4年で約80カ国への展開を完了しました。

2003年にはサービスセンターの運用が始まり、当初の目標だったコスト削減やビジネスの標準化および安定化に大きな成果を挙げました。P&G社ではこれまでの成果を踏まえ、次のステップを探るとともに、いくつかのプロセスのアウトソーシング化も進めていきました。

現在、GBSの主な拠点は、ニューキャッスル(アメリカ)、サンホセ(コスタリカ)、マニラ(フィリピン)の3カ所に設けられています。いずれも良い人材を調達できる土地柄に加え、治安や現地政府との関係性などを重視して選択されています。また、これら3拠点がそれぞれ「欧米、アフリカ、中東」、「南米」、「アジア パシフィック」を担当し、P&G社のグローバルネットワークを構成しています。

GBSの業務拡大の裏で効率化・自動化を支えたSAPソリューション

Biehle氏はGBSの目的は大きく変化してきていると言います。当初はコスト削減や業務標準化、プロセスの簡素化が主要なミッションでしたが、現在はビジネスの進め方そのものを変えていくといった、より大きな視点が求められるようになったと言うのです。

「GBSの役割が、社内の業務だけでなく企業全体のオペレーションを変えていくという点にシフトしています。言い変えれば、各々のビジネスユニットや経営管理ユニット、さらに製造部門やR&D部門も含めたすべての組織のビジネス変革において、いかにGBSが貢献できるかが問われているのです」(Biehle氏)

役割の変化に伴い、GBSの業務規模も大きく拡がりました。2000年に14種類から始まったサービスメニューは、現在は170を超えるサービスメニューに拡大しました。従来ビジネスユニットや経営管理ユニットが行っていた間接業務の多くがGBS に移管され、さらに意思決定支援やデータ分析といった業務までが含まれるようになりました。

Biehle氏は、GBS の成功を通じて学んだ多くの中から、改めて簡素化、標準化、および自動化の重要性を指摘します。

「業務プロセスの85%は標準化が可能です。この部分を積極的に標準化し、システム化・自動化していくことで、いわゆる規模の経済を有効に活用できるようになるのです。たとえばインボイスや発注書などを電子化することで、入力や発送における人為的なミスを排除し、業務効率を向上させてきました。もちろん、ここにはSAP の素晴らしいシステムが貢献しています」

Biehle氏は、GBSがこれまでに実現した大きな価値の1つとして「コスト削減」を挙げます。実際にGBSを含めた組織変革により10億ドルを超えるコスト削減が達成され、売り上げ原価は2003年と比較して3割以上下がりました。

また一方で、ビジネスの迅速性やイノベーションの面での効率化も進んでいます。「2005年のジレット社の買収では、業務統合をわずか15カ月で完了し、間接業務やレポート作業をGBSに取り込んだ結果、世界中で同様にP&G との共同販売管理プロセスを実現できました。これもまたSAPのシステムがなければ実現していなかったことです」とBiehle氏は話します。

基調講演の最後にBiehle氏は、現在のP&G社では、世界の約40カ所の状況がリアルタイムに把握できる液晶画面がボードルームに設置されており、毎週本社で行われるエグゼクティブミーティングで意思決定・判断に活用していることを例に挙げ、これはP&G社が自社の成長戦略に合わせて、SAP BusinessObjects BISAP HANAといったソリューションを導入してきた成果だと締めくくりました。

次回は、Biehle氏とSAPジャパンのCFOを務めるChristian Jehleによるパネルディスカッションをもとに、日本の企業における経理・財務の業務変革のヒントを探っていきます。

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