モバイルアプリ特集⑤:情報分析アプリがスピーディな意思決定をサポート
作成者:井口 和弘 投稿日:2013年1月22日
モバイルアプリ特集と題して、SAPが企業向けに提供しているモバイルアプリを4回にわたって解説してきました。今回は、情報分析系のツールとして、SAP BusinessObjectsのモバイル版「SAP BusinessObjects Mobile」と、予算情報をリアルタイムに取得する「SAP RealSpend」をご紹介したいと思います。各種レポート情報を、いつでもどこでも分析することができれば、その場で意思決定につなげたり、PDCAサイクルを早く回せるようになるため、経営に多くのメリットをもたらします。
商談や移動の合間に情報を分析して「次の一手」をいち早く
SAPでは、SAP ERPに蓄積した膨大な情報を活用するための情報分析ツール「SAP BusinessObjects」を提供しています。地域別、製品別などの売上詳細や、工場や人員の稼働率、会計情報のKPI分析などが簡単に実行できるほか、ビジュアルに富んだビジネスレポートも簡単に作成できます。今まで、これらのツールはデスクトップでの利用に限られていましたが、モバイル版のSAP BusinessObjects Mobileが登場したことで、情報分析の機動力が一気に向上します。
Eコマースサイトの営業マネージャーの業務を例にとってみましょう。Eコマースで扱う製品は、ゴルフクラブやスキーウェアなどのスポーツ用品から、テレビやパソコンなどのAV機器、Xboxやプレイステーションなどのゲーム機器、自転車、生活用品など多岐にわたるため、各種商品の売上分析は簡単ではありません。また、販売エリアも広いことから、地域特性を考慮した販売戦略も必要です。しかし、営業責任者として毎日外出しているマネージャーにとって、オフィスに戻ってからゆっくり売上分析をする時間が取れないケースがほとんどでしょう。
こうしたケースでも、SAP BusinessObjects Mobileを利用すれば、商談の合間の移動時間や休憩時間などを利用して、各種商品の売上高の推移、売れ筋商品、エリア別売上高などが、グラフを見ながら分析できます。売上げが伸びてない商品や、販売目標を下回るエリアに関しては、商品担当者やバイヤー、エリアマネージャーなどにメールで売上げの推移情報を送信し、新たな対応を指示することも可能です。オフィスのデスクトップでSAP BusinessObjectsを利用して詳細な分析レポートを作成しておけば、外出先の会議室などでレポートを見せながら、営業チームで対策を考えるといったことも実現します。
製造業の生産管理担当者が利用することを想定した場合でも、全国に分散している工場の稼働率、平均生産高、各工場の雇用者数、従業員の休日取得日数などを横並びで比較することができます。生産効率が上がらない工場については設備投資を見直したり、雇用の調整をしたりするなどして、生産性効率を高める対策を打つことも可能です。SAP BusinessObjects Mobileは、SAP BusinessObjectsの持つ多彩な分析機能を、モバイル環境で気軽に使えるツールとして非常に有益なアプリです。
プロジェクトの予算配分を項目別にわかりやすくビジュアル化
プロジェクトが長期間にわたるアプリケーション開発の現場では、予算と支出の適切な管理が求められます。SIerのプロジェクトマネージャーは、開発費や人件費、外注費はもちろん、移動交通費から接待費まで、トータルコストを厳密にコントロールしなければなりません。
従来環境でのコスト管理は、Excelなどの表計算ソフトやプロジェクト管理ツールを利用するケースが大半でしたが、いずれのツールも使い勝手の面で劣るのは否めませんでした。こうした既存ツールを改善し、長期間のプロジェクトのコスト管理に特化したモバイルアプリが「SAP RealSpend」です。SAP ERPから予算および費用情報をリアルタイムに抽出し、わかりやすく視覚化します。SAP RealSpendを活用すると、開発途中の正確な支出金額や予算残高が確認できるので、適切なコストコントロールが実現します。
例えば、大型のアプリケーション開発を請け負ったSIerのPMの利用を想定してみましょう。SAP RealSpendでは、「部門別」「経費タイプ別」「プロジェクト別」で予算情報と支出情報の両方がチェックできます。部門別管理では、開発、製品管理、研究費の3部門に項目が分かれ、画面上には予算残が5%以下の部門については緑色(安全圏)、予算残または予算超過が5%は黄色、予算超過が5%以上は赤(危険信号)で表示します。詳細情報を確認したい場合は、各部門の項目をタップするだけ。詳細情報では、経費タイプ別の予算状況を棒グラフで表示します。PMは予算と支出のバランスを見ながら、プロジェクトを適切にコントロールすることができるでしょう。「経費タイプ別」の表示も「部門別」と同様の要領で確認ができます。
予算超過に陥りそうなケースでは、あらかじめ設定したしきい値に合わせてアラートが発生し、注意を喚起します。開発担当者のコメントも合わせて表示するので、手遅れになる前に適切な対処が可能です。
SAP RealSpendを使うことで、各部門から寄せられる厳しい予算要求に対しても、対応できないケースでは理論的な裏付けのもとに回答ができるようになります。また、コストがかかる部門の予算については、余裕のある部門の予算を融通するといった対応が柔軟にできるようになるでしょう。
SAP RealSpendは、SIer用途以外にもプロジェクト期間の長い建設業界や、生産リードタイムの長い個別生産型の製造業にも向いています。モバイルデバイスであれば、どの現場でも持ち歩けるので、予算と支出管理に特化したツールとして幅広い用途での活用が期待されています。
次回以降もさまざまなモバイルアプリを紹介していきます。SAPが提供するアプリについては、専用のアプリケーションストアでご確認ください。
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