新事業創造に取り組む老舗トップ企業ライオンに学ぶ、日本企業の価値創造力を高める上での勘所


2018年12月に開催された「SAP Leonardo Now Tokyo」からSAPジャパンのチーフイノベーションオフィサー 首藤聡一郎がホストしたセッション「日本企業の価値創造力を高める上での勘所」にて行われた事例講演の要旨をレポートします。

ライオンの挑戦「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニー」を目指す

ライオン株式会社研究開発本部イノベーションラボ所長の宇野大介氏は、全社で展開されるイノベーションのハブという位置付けとして2018年1月に立ち上げた「イノベーションラボ」とそのミッションについて紹介しました。

首藤の質問に答える宇野氏

※イノベーションラボ独自のユニフォームを着て講演する宇野氏

日用品メーカーとして120年以上の歴史を持つライオンは、2030年に向け「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」という経営ビジョンを掲げています。人々の生活習慣を「リ・デザイン」するために自分たちの働き方や考え方もリ・デザインしようという方針により、イノベーションラボが発足。この組織は、所属は製品・技術開発を行う研究開発本部に所属しますが、ミッションは「新しい事業を創造すること」となっています。

Lab Mission

開発部門、生産技術部門を経てイノベーションラボ所長に抜擢された宇野氏は、ラボの発足に先立って訪れたパロアルトのSAPでさまざまな発見をしたと振り返ります。「シリコンバレーでの働き方に触れるとともに、デザインシンキングの存在を知り、これならイノベーションラボの取り組みに活用できると確信しました」

デザインシンキングを活動のコアに据えた取り組み

宇野氏はラボ立ち上げに際して、SAPにも協力を求め全社的なワークショップを開催。人事部や経営企画などさまざまな事業部から参加者を募り、ラボの在り方、方向性を示すビジョンを作成しました。次世代ヘルスケアソリューションの創造に向け、「失敗」をも新たな学びを得るための機会として尊重するという姿勢を貫きつつ、お客様を主体とした価値の向上に挑戦しています。

ラボの担当者たちは、技術開発からは離れていても、新たなビジネスの創造を担う心意気を表し、モチベーションを保つために、白衣と同じ形のブルーのユニフォームを身に着けています。ライオンとして従来展開していない技術をお客様に試していただきながら、実際のビジネスに昇華させるため、デザインシンキングを活用してトライアル&エラーを行っています。約1年間でイノベーションラボは、次のようなまったく新しいビジネス分野のソリューションを開発しました。

■口臭ケアのサポートアプリ

スマートフォンのカメラで舌の状態を撮ると、AIが口臭リスクのレベルを解析して判定するアプリ。口腔科学の研究で蓄積した口臭データと社外のデジタル解析手法を組合せて技術を開発。さらに、SNSに投稿されるコメントのビッグデータ解析を通じて発見された「相手に自身の口臭リスクを気づかせ、ケアさせたい」という生活者インサイトに基づき、口臭が営業上の課題となる接客業を中心に接客スタッフの口臭ケアをサポートするB2Bビジネスを検討しています。

口臭ケアアプリ

■美容機器VISOURIRE(ヴィスリール)

口の中から外側の表情筋にアプローチする美容機器(電動歯ブラシ程度の大きさ)。想定しているターゲットは、ほうれい線やたるみが気になる方。製品化に際して生活者から直接資金を集めるクラウドファンディングを実施。わずか4週間で目標金額を達成しています。

開放美

■マウスピースを使ったアスリート支援器具

SAPと共同開発中のスポーツを行う際の噛む力を、IoTを使って測定することで、アスリートに対してより効果的なパフォーマンス向上の方法をアドバイスするというソリューションです。SAP APJ Innovation Challengeのアワードも受賞しています。

イノベーションラボの立ち上げ直後は、他の部所は遠巻きに見ているという雰囲気だったと宇野氏は語ります。それでもアイデアの事業化まで漕ぎ着け、営業も率先してやるといった姿勢を見せることで、応援のムードは徐々に高まってきています。宇野氏は、事業を続けていく意思、ビジョンを持つことの重要性をあらためて強調し、講演を締めくくりました。

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※講演後にセッションホストSAP首藤の質問に答える宇野氏