攻めの視点で経理財務部門のポジショニングと業務改革を


本連載では、2回にわたってP&G社における経理・財務組織変革の背景や狙い、シェアードサービス構築の具体的な取り組みをご紹介してきました。連載最終回となる第3回は、元P&G社ディレクターTimothy Biehle氏とSAPジャパンのCFOを務めるChristian Jehleによるパネルディスカッションをもとに、日本企業における経理・財務の業務変革のヒントを探ります。

第1回 : P&G社のグローバル戦略を支えた経理・財務組織変革
第2回 : 80カ国のバックオフィスを統合したP&G社のシェアードサービス

「成長」という攻めの視点から経理財務部門(F&A)の役割を見直す

ディスカッションの冒頭でBiehle氏は、まず経理財務部門(F&A)が現代のビジネスにおいて担う役割を、「成長」という視点から見るべきだと強調しました。また、そのためにP&G社が採用した新しいシェアードサービス組織がもたらす効果を、コスト削減や生産性の向上にとどまらない、成長戦略を支えるものと捉えていると語ります。

「現在の西ヨーロッパおよびアメリカにおけるマクロ経済を考えると、P&G社の成長は踊り場にあります。そこで同社では『40/20/10=40の重要なビジネス領域の達成、20のイノベーション、10の新興市場開拓』というスローガンを掲げて、新たな成長に向けた取り組みを進めています。同時に財務・経理部門によるビジネスサポートや意思決定プロセスの戦略を策定し、この実践チームをシェアードサービス組織や各業務ユニット、経営ユニットの中に創り上げることで、それぞれのビジネスリーダーたちが本来のビジネスに注力できる体制を整えているのです」(Biehle氏)

これに対して、SAPジャパンのJehleも「今後の企業経営においては、経理・財務部門(F&A)を強力なビジネスパートナーとしてポジショニングするべきであり、そこで非常に重要になってくるのがITの活用である」と指摘します。ITとりわけSAPが提供するERPやBIといったツールは、ビジネスプロセスを標準化し、それをシェアードサービスに移管することによって、ほとんどの経理財務関連のタスクから各ビジネスユニットのリーダーや担当者を解放します。

「その結果、彼らは自分たちのリソースをより付加価値の高いビジネスに振り向けることができるのです。こうした観点に立ってみると、経理財務という部門は、ビジネスの成長を考える上で非常に重要なポジションにあり、なおかつその役割をITによって最大化することで、自社のビジネスの成長を支えるというミッションを担っているといえるでしょう」(Jehle)

ITとシェアードサービスセンターの仕組みを組み合わせることで、標準化されたプロセスそのものを効率的に管理・運営し、ビジネスのパフォーマンスを飛躍的に向上させることが可能になります。また現代にあっては、コンプライアンスも避けて通ることのできない課題ですが、これについてもJehleは「まさに息をするのと同様に、コンプライアンスを維持することは重要であり、そのためにテクノロジーの活用が不可欠なのです」と付け加えます。

変革のメリットを示し、互いの信頼関係を築くことが成功のカギ

自らのアイデンティティと役割を再認識する一方で、経理財務部門(F&A)には、刻々と変化するグローバルビジネスに迅速かつ柔軟に対応できる組織作りも求められます。従来の単純なアカウントオペレーションにとどまることなく、ビジネスの成長そのものを支えるチームやラインへと変化を遂げていくためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

この問いに対してBiehle氏は、反復的な作業のシェアードサービスへの移行や、グローバル税制や新しいプロセスの実装に関する知識を持った優れた人材の育成が必要だと説きます。特に人材育成に関しては、これまでになかった新たな要件として、「プロジェクトマネージメント」「変更管理」「カスタマーサービスの拡充」の3つの注力ポイントを示しています。

「なかでも、プロジェクトマネージメントは重要です。P&G社では、シェアードサービスセンターの運営を通じて、大型プロジェクトを管理できるプロジェクトマネージャーを数多く輩出してきました。同様に、経理財務の領域でも優れた人材を育成することで、市場の環境変化に対応できる体制を築き上げています」(Biehle氏)

市場をはじめとする社外の環境へ向けた体制固めが重要な一方で、社内に対してはグローバル対応に伴い組織や体制、そしてプロセスのドラスティックな変化を逐次適確に説明し、業務現場の抵抗感を払拭していく取り組みも欠かせません。とりわけBiehle氏は、標準化を大きな注力ポイントだと示唆します。

「『標準化の考え方はいいが、うちの部署とはやり方が違うので、うまくいかないだろう』という人々に対しては、まず標準化の価値を明確に示すことが大切です。この価値に対する期待と信頼を得なくては、人を動かすことはできません。P&G社では標準化をラテンアメリカ、北米、アジア、ヨーロッパで同時に導入しましたが、ここでもまず現場の説得に大きな力を注ぎました」(Biehle氏)

この信頼関係という点にはJehleも深く共感し、SAPにおける事例を挙げています。「SAPのシェアードサービスセンターはアジア、ヨーロッパ、南米の3カ所にありますが、私たちはお互いの信頼関係を築くために、コミュニケーションを非常に重要視しています。日本のローカルチームもシェアードサービスセンターとは常にコミュニケーションをとっていますし、(日本法人のCFOである)私自身、センターのリーダーと緊密な連絡を取り合いながら、さまざまな課題や互いの要望、リスクへの対応について常に話し合っています。このことが組織の一体感や課題の共有、そして適確な解決に結びついていると考えます」(Jehle氏)

経理財務とITの緊密なチーム連携がビジネスの成長を促す

冒頭でJehleがふれたように、経理財務部門(F&A)を企業経営に貢献する組織とする上で、ITは非常に重要な役割を果たします。そして現在こそ、その機能がもたらす恩恵を十分にビジネスに活用できる好機だとBiehle氏は語ります。

「まだ標準化が進んでいなかった1980~1990年代と比較して、今日はビジネスのプロセスとITが密接に結びついており、その能力を十分に活用することが可能になっています。つまりITのもたらす技術的な恩恵が直接ビジネスのパフォーマンスにつながるという点で、テクノロジーの重要性は今までになく高まっているのです」(Biehle氏)

現在のP&G社には、財務、会計、購買をはじめさまざまなシェアードサービスが運用されています。そこでは各々のサービスにグローバルプロセスオーナーがおり、Centre of Excellence(CoE)と呼ばれる小さなチームを持っています。このメンバーの50%は財務・会計・購買の担当者、残りの50%がITの担当者で構成されています。彼らはソリューションの開発、維持、そして改善のミッションを担っており、ビジネスのプロセス側の担当者とIT担当者が協働することで、ビジネス要件とテクノロジーがバランスよく機能している例といえます。

「このグループとはまた別に、グローバルビジネスオーナーに対するIT組織があります。ここではアプリケーションの開発やデータセンターの運用を担っており、SAPなどのパートナーとコミュニケーションを取りながら、次のトレンドやアップグレードの時期を常に検討しています。この他にはSAP HANAなどの最先端技術を研究する担当者もいます」(Biehle氏)

年を追うごとにITとビジネスの関係は切り離せないものになっており、今後この関係はより大きな成果を目指してさらに緊密なものになっていくとBiehle氏は語り、パネルディスカッションを締めくくりました。

3回にわたって当社セミナー「グローバル競争力強化に向けたファイナンス組織/業務の変革~企業のグローバル化を経理・財務が支える!」の模様をお伝えしてきました。言わずもがな、日本国内でもビジネスのグローバル化が進む中、こういったすでにグローバルで先陣を切っている企業の事例は、多くの点で参考にできることがあると思います。我々は自らもグローバルにビジネスを推進する企業として、今後もさまざまな情報を発信しながら、皆様の改革のお手伝いをして参りたいと思います。

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