ノーザンガスネットワークスのリアルタイム経営

作成者:田積 まどか 投稿日:2019年3月22日

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ノーザンガスネットワークスはイギリス北部を中心に670万のお客様にガスを供給しています。
2年間でSAP S/4HANA、SAP SuccessFactors、SAP Concur、SAP Analytics Cloud、SAP Digital Boardroomなどを導入し大きなデジタル変革を遂げています。経営状況がリアルタイムに可視化されたことで、事業計画を2年前倒しで策定し次の事業目標へ着手することが可能になりました。

「スピード経営」や「リアルタイム経営」という言葉は日本の公益企業ではまだまだ浸透していません。お客様からも安定供給を第一優先に考える上で計画は時間をかけて慎重に行うべきであり、リアルタイムの情報を得て、瞬時に決断するということは想像しがたいというお話をよく伺います。

ノーザンガスネットワークスでも同じような壁がありました。しかし視野を広げチャレンジしてみようと一歩を踏み出したのです。
まずはSAP Digital Boardroomを採用しました。SAP Digital Boardroomは蓄積されたデータをいろいろな切り口で可視化することが出来ます。多くのお客様はSAP S/4HANAやERPの情報を可視化するために使っていますがノーザンガスネットワークスはDigital Operations Roomと名付け顧客の情報やガス漏れや不具合の状況、未解決ガス漏れの修繕見込みなど現業に関わる情報をリアルタイムに可視化するところから始めました。

これにより業績と苦情の因果関係までがわかるようになりました。地図上に表現することで、不具合の発生地や苦情の出処の位置関係も把握できます。
またこのDigital Operations Roomをデータに基づく意思決定のプラットフォームと位置づけ、戦略的かつスピーディーな意思決定が各階層で実行されるようになったことは、社員の意識そして事業の成長に大きく影響を与えています。

現在は過去の情報とリアルタイムの情報を表示できるようになっていますが、将来は予測情報までを表示する予定です。例えば、ガス漏れの予測、苦情の予測、緊急の道路作業の発生予測などです。これにより、顧客満足度の向上と作業効率の向上が期待されています。

ノーザンガスネットワークスはこのDigital Operations Room稼働の半年後にSAP S/4HANAを導入しました。
Digital Operations Roomは現業の情報のリアルタイム化でしたが、その効果を実感した上で経営のリアルタイム化へ踏み出したのです。
公益事業の特性から現業の業務のように経営に関してリアルタイム情報を得て瞬時に決断するという場面は少ないのかもしれません。
しかし、ノーザンガスネットワークスは事業計画を2年前倒しで策定し次の長期12年先までの事業目標へ着手を始めています。
言い方を変えれば2年も先取りして行動を起こすことができるようになったということです。
時間をかけて長期の経営計画を立て、中期計画にブレークダウンし次年度の実行計画を策定するというサイクルを脱しようとしています。
公益事業のリアルタイム経営は「経営判断を瞬時に行う」ということより「事業計画のサイクルを短く早く」していくことではないでしょうか。

本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、ノーザンガスネットワークのレビューを受けたものではありません。

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