ホンダオーストラリア:世界初! 自動車販売会社向けクラウド型デジタルプラットフォームの短期導入
作成者:山﨑 秀一 投稿日:2019年3月22日
今回は、2017年度の連結売上高14兆円、二輪車販売1,123万台世界首位、四輪車販売368万台世界8位の本田技研工業を親会社に持つ、ホンダオーストラリア社を取り上げます。世界6極体制のアジア・大洋州の販売会社の一社として1969年に創業し、今年2月に創業50周年を迎えました。
ホンダの製品、自動車、二輪車、船外機、芝刈り機を仕入れて、900拠点以上のディーラーへ供給しています。
背景
自動車産業を取り巻くグローバルトレンドは、オーストラリアにおいても例外ではありません。クルマの所有から使用・利用に代表されるエンドユーザーの価値観の変化、つながる車・自動運転車・電動化の特徴を活かした新たなカスタマーエクスペリエンスに直結するモビリティサービスの拡大、クルマ一台あたりの稼働率向上・走行距離延長、点検・故障修理の機会増加、ディーラーメカニックに要求されるスキルの高度化と後継者不足などの外部環境の変化が日々着実に近づいています。
社内的には、ホンダグローバルの2030年ビジョンステートメント「すべての人に“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する - 世界の一人ひとりの「移動」と「暮らし」の進化をリードする -」に対して、豪州販社としての責任と役割のもと、経営から現場までが、その実現に向けて、エンドユーザーとの接点を持つディーラーを含むビジネス変革に取り組まねばならないことへの意識が高まりました。
――― さて、ここで少し時計を巻き戻して、立ち上げ当時の様子を覗いてみましょう ―――
脱レガシー
2013年頃、ホンダオーストラリア社は、ビジネス変革をすすめてゆく中で、情報の視点で時限爆弾を抱えていることに気が付きます。それは経営や業務の屋台骨を支えている販社基幹業務システムです。30年前に導入したレガシーシステムは、度重なる改修が繰り返されています。経営や業務が求める改善にもタイムリーに応えることができない状態です。ディーラーとのさらなる協業を深めるための取り組みにも影響をします。将来の外部環境と内部環境の変化に素早く対応できずに大きな事業リスクを負うことになります。こうした情報の足かせは、経営層も強い課題認識を持ち、販社としての基幹業務システム刷新に踏み出す決定をします。
――― ここからは現在に戻り、システム選定の取り組みをお伝えします ―――
自動車産業販社向けデジタルプラットフォーム
自動車産業向け販社基幹システムでは、グローバルに採用実績のあるデファクトスタンダードなSAPが選ばれました。次世代ERPのSAP S/4HANAに統合されたAutomotive Industry SolutionのひとつのSAP Vehicle Management for Automotive packageがSAP HANA® Enterprise Cloud上で稼働する、世界初のユースケースとなりました。業務機能要件や非機能要件を満たすことに加えて、確実に・早く・安く本番稼働できる導入方法論が成功要因のひとつと評価されました。
その導入方法論とは、Fit to StandardアプローチのSAP Activateでした。参照先のベストプラクティステンプレートには、自動車産業で全世界106か国、7,100社以上の採用実績とノウハウが埋め込まれています。また、eコマースのような新しい業務を含め、オーストラリアの2つの子会社が必要とする業務プロセス定義、マスタ・トランザクションデータなどのデータモデルがそこに揃っていました。
私が心から喜んでいるのはSAP が親切に私たちをガイドしパートナーとして活動してくれることです。将来へのガイダンスとしてSAP に注目するとすべての範囲の製品に可能性がありそうです。
Carolyn McMahon, Director
SAP Vehicle Management System for Automotive package が提供する標準業務プロセスの例
- ディーラーポータルによる販社・ディーラー間のオンラインコラボレーション
- メーカーからの仕入からディーラーへの納品までの受発注連携
- 車両のカスタマイズ発注
- 車両識別番号(VIN:Vehicle Identification Number)をキーにしたトラッキング
- アフターサービス部品・用品・アクセサリーのオーダー管理
- 点検や修理なでのサービスオーダー管理
- リコールやワランティ
- 財務会計
3つの喜びへの絶え間ない追及
ホンダフィロソフィーの「創る喜び 売る喜び 買う喜び」を今後も追及し、他の自動車メーカーにないユニークさを活かして自動車産業100年に一度の大変革時代を打ち勝つチャレンジしてゆくことでしょう。 ホンダオーストラリア社の成功体験は、国産自動車メーカーにも十分活かせるものと思っています。少なくとも海外拠点の販売会社法人においては、欧州はじめとする自動車メーカーの販社基幹システムとしては、SAP VMSはリーディングソリューションであり、今後はホンダオーストラリア社同様、Cloud型の次世代デジタルプラットフォームがデファクトになると思っています。 これからは、日本を代表する企業のサクセスストーリーをお伝えすることで、自動車産業に関わる方々にデジタルトランスフォーメーションの一助となれる発信してゆきたいと思います。
※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、ホンダオーストラリア社のレビューを受けたものではありません。