守りの経営にも貢献する次世代型ERPと機械学習 & GRCのハイブリッド利用について


財務・経理など「守り」の経営領域においても、新しいデジタルテクノロジーを活用することで、飛躍的に省人化や工数削減、時間短縮、網羅性の向上をもたらすことができる。SAPジャパン株式会社、プラットフォーム事業本部シニアソリューションプリンシパル(公認内部監査人)の関口善昭は、2019年3月12日に開催されたセミナー「SAP Finance Day 2019 次世代CFO組織の役割の変化とそれを支える仕組み」で、AI・機械学習、次世代型ERP(SAP S/4HANA)およびガバナンス、リスク、コンプライアンスのソリューション(GRC)を組み合わせることによって、どのようにそれが実現できるかについて紹介した。

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「人依存」からの脱却で後れを取った日本

まず、非常にショッキングなデータをご紹介したい。2000年から2018年までの日本の名目GDPを見ると、わずか6%しか伸びていない。一方アメリカは約2倍に伸びている。実質GDPを見ても、アメリカは48%増、中国は4.82倍、インドは3.52倍も成長しているのに対し、日本の伸びはわずか16%だ。この差が生まれたのは、決して日本企業が手を抜いていたからではない。これは日本企業が「高度経済成長の勝利の方程式」から、脱却できなかったためではないかと考えている。

日本人は優秀でまじめで能力が高いために、人依存で高度成長できてしまった。そして今もその図式から抜けられず、人依存のパターンで進んでしまっている。しかしその間、海外では人依存ではなく、デジタルの活用で成長してきた。日本は人依存から抜け出せなかったためにデジタル活用で遅れをとってしまったのだ。
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破壊的イノベーションの進行は留まるところを知らない。「デジタイゼーション(デジタル化)」から始まり、「デジタライゼーション(デジタルの有効活用)」、そして、ビジネスモデルやプロセスの変革を伴う「デジタルトランスフォーメーション」の波がやってきている。特に、人に依存できなかった日本以外の国々は、生き残りのために、デジタルを活用して新しいビジネスモデルを作っている。

例えば、ドイツのケーザー・コンプレッサー社は、かつては圧縮空気を作るコンプレッサーを販売するビジネスを行っていたが、圧縮空気を使った分だけ課金するビジネスモデルに変革した。同社は、個々のコンプレッサーがどこに設置されていて、どのように稼働しているか、IoTによってモニタリングしている。「機器の売り切り」から、「利用した分だけ課金する」というビジネスモデルに変革できたのは、デジタルテクノロジーの進化に依るところが大きい。

 

CFOは、CEOと対等のリーダーに

このような変化が進む環境において、CFOの役割はどう変化させるべきだろうか。まずCFOは、経理や財務の責任者であると同時に、CEOと対等のリーダーになる必要がある。グループ全体のポートフォリオのバランスを考え、次の時代の主軸を担う製品群を見極め、それを担う組織づくり、人材育成の環境づくりを担う新しい価値創出に向けた旗振り役となることが求められている。

リスクマネジメントにはネガティブな面とポジティブな面がある。「ここにどんなリスクがあるか」だけを言うのではなく、「この分野には将来性がある。もっとリスクを取って積極果敢に攻めるべき」と、事業部側の背中を押す役割もCFOが担わなければいけない。CFOが背中を押さないと、事業側では積極的に打って出にくい。逆に、CFOが背中を押せば、腹をくくって頑張ることができるはずだ。

さらに、CFOは経営プラットフォームの実現をリードする役割もある。経営プラットフォームのシステム基盤といえば、CIOが責任を持つものと思い込みがちだが、CFOもどのような経営情報を見るべきかを見定めなくてはならない。IT投資の方向性やリターンについては、CIOだけでなくCFOもともに責任を担うべきではないだろうか。

ここでもう1つ、私がショックを受けたデータを紹介する。2018年9月の、アビームコンサルティングの調査によると、CFOが認識している経営課題として最も多くの方が挙げたのは「経理・財務業務の効率化」、2番目が「経営情報、KPIの整備」、3番目が「最適機能配置と資源配分」、4番目が「デジタル技術の活用」、5番目が「キャッシュフローマネジメント」と続く。回答のうち、4番目の「デジタル技術の活用」と12番目の「ビッグデータ分析」だけが新規項目で、それ以外の項目は基本的に10年前の調査と全く変化していない。本来CFOは、人依存からの脱却や、デジタルトランスフォーメーションをリードするべき立場にあるにも関わらず、経営課題としてCFOが認識しているテーマがほとんど変化していないことに、私は大きなショックを受けた。冒頭に紹介した、GDP成長率が惨憺たる結果である要因の一つは、こうしたところにもあるのではないかと考えている。

 

「守りの経営」を支える高性能なエンジン、GRCソリューション

新幹線が320キロもの最高時速を出せるのは、高性能のブレーキがあるから安心して最高速度が出せるのだ。「攻めの経営」と「守りの経営」も同じだ。守りの経営の信頼性が高いからこそ、思い切り勝負ができる。そしてこの、守りの経営をつかさどるエンジンがGRC(ガバナンス、リスク、コンプライアンス)だ。

不正行為は、不正をしようと思えばできてしまうという「機会」、不正をしたいと考えてしまう「動機」、良心の呵責を軽くし不正の理由付けとなる「正当化」の3つがそろうと、発生する確率が高まると考えられている。これらの「不正のトライアングル」のうち、「動機」と「正当化」は個人の心の問題なので、システムでは如何ともし難い。しかし「機会」は、システムの力を使って徹底的にゼロに近いところまで抑制できる。この1カ所を断ち切ることで、確実にリスクは大きく下がる。

ここでは数ある主要なGRCソリューションの中からSAP Business Integrity Screeningを紹介する。

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多くの企業では不正取引のチェックは、サンプリングテストを実施し、内部監査人が確認しているのではないだろうか。SAP Business Integrity Screeningは、全件チェックを行う仕組みだ。登録してある不正取引のパターンと、基幹システムに入る受注、請求、入金、発注などのデータ全てをリアルタイムで突き合わせ、合致したものについてはアラートを出す。黄色信号であれば、当該業務を管理している部署にアラートを飛ばし、深刻な不正の可能性の高いものについては、内部監査部門に直接アラートを飛ばすことができる。

さらに、リスクが非常に高いものについては、該当する支払いを止めるなどの対応も可能だ。なお、不正取引のパターンは、内部監査部門の承認を得てから登録するのが基本。また、未知のシナリオについては機械学習を活用する手もある。出荷先、請求先、受注先などが、ブラックリストに掲載されているところかどうかもチェックが可能である。

最後に、GRCソリューションは、決して従業員を摘発するためのソリューションではないことを強調したい。これは不正を予防し、牽制することが目的のソリューションだ。人間は弱い動物であり、時に魔が差すものであるが、GRCソリューションは、不正のトライアングルを断ち切ることで魔が差さない環境を作り、結果として従業員を守るソリューションなのだ。

 

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