ジェットブルー航空: XデータとOデータの統合によるエクスペリエンス革命


Why Experience Matters?   なぜ エクスペリエンスが重要なのか

IT業界のみならずビジネスの現場においても、その重要性が活発に議論され始めてきたのが、ここ
10年ぐらいのことでしょうか。

最初サムネイルXdata Odata”カスタマー”エクスペリエンスや”ユーザー”エクスペリエンスというキーワードで、商品やサービス自体の金銭的価値ではなく、それらの購入や利用過程とその体験を通じて、消費者に対しポジティブな感覚的価値・体験をいかに提供できるかが、競合との差別化施策として意識されるようになりました。

主にはB2Cとしての消費者にスポットがあたってきましたが、広義に捉えれば企業活動において優れた“感覚的価値や体験”を与えるべきステークホルダーには、それ以外にもサプライヤーや従業員なども、ビジネスの成果を最大化するという観点から当然挙げられることができるでしょう。

また、“顧客”のエクスペリエンスについては、B2Cのみならず、B2B、B2B2Cを通して顧客の全てのタッチポイントとしてのカスタマーエクスペリエンスブランドに対する知名度や好意度といった観点からのエクスペリエンス製品やサービスから直接得られるエクスペリエンス に細分化して考えた方が、より実態に即した適切なエクスペリエンスを提供できるかもしれません。

ここで、エクスペリエンスの優劣が経営に与えるインパクトをいくつかこ紹介いたします。

  • 86% の消費者は、良いカスタマーエクスペリエンスの結果、より多く購入をする傾向がある 売上向上
  • 新製品開発に成功した96%の企業は製品コンセプトテストを実施しているが、その内約半数しか定期的に行っていない(プロダクトエクスペリエンスの把握不足) 新製品開発の成功率の低下
  • 好きだったブランドでも、たった一度の悪い体験で、3分の1の顧客がそのブランドから離れていく ブランド好意度、ロイヤルティの低下
  • 従業員満足度調査の結果を基に企業内プロセスや働き方に改善が見られた(良い従業員エクスペリエンス)と感じる従業員は、そうでない従業員と比べて、4倍離職率が低い → 優秀な人財の維持

ご覧いただいたように、エクスペリエンスの優劣が与える経営へのインパクトは決して小さいものではなく、優先度の高い戦略的取り組みだと言えます。

“なぜ”起こったのか ビジネスの現場で理解できていますか?

製品やサービスのモニター調査や製品コンセプトテスト、また従業員満足度調査などを通じて、我々もいちステークホルダーの一員として企業に頻繁に声を届けています。それら声を軽視する企業など、現代ビジネスの世界においてほとんど存在しないでしょう。きちんと耳を傾ける企業ばかりだと思います。

一方で、企業は売上や発生コストの状況、また生産やサービス提供活動の状況に応じて、様々な改善活動も常に行っています。つまり日々のオペレーションで発生する業務データ(= 何が起こったのか )に対する分析に基づいた改善策を実行しているのです。では、ステークホルダーの声と業務データを結びつけて改善のオペレーションを日常的に行なっている企業はどれぐらいいらっしゃるでしょうか?

ステークホルダーの声とは、それがポジティブなものであろうが、ネガティブであろうが、「なぜそう思ったのか」という生々しいデータと言えます。つまり、そこには”なぜ?“起こったのかという、改善策をたてるにあたって最も重要なヒントが隠されているのです。”なぜ?“を日々のオペレーションに取り込まずに改善策を模索しているのは、過去の成功体験または企業側の想像に基づくもので、人々の思考・行動に多様性や激しい変化が見られる現代においては、もはや成功確率がどんどん下がっていく非効率なやり方かもしれません。

これまで企業は、業務データ(Operational Data以下O-data)を基にPDCA(Plan Do Check Act)サイクルをまわしてきましたが、その前段階として、エクスペリエンスデータ(Xperience Data以下X-data)をつぶさに取り込む(Listen)ことが、改善の成功確率を高める最善策と考えられるのではないでしょうか。

乗客数が減少した、あるLCC。どんな改善策が考えられますか?

スクリーンショット 2019-05-10 13.43.58

jetBlue Airwaysは低価格を売りにする格安航空会社の中でも、機材の新しさや良質なサービスの評判により、1999年の設立から収益を伸ばし続けている航空会社で、東海岸に強く、アメリカ国内線とカリブ海の島々を結ぶリゾート路線が充実しているのが大きな特徴です。

顧客とのコミュニケーション戦略にデジタルとソーシャルネットワークの活用を中核に据え、twitterやFacebookを年中無休、24時間体制で監視するなど、顧客の声を大事にする会社でもあります。


閑話休題:jetBlueは、ある母の日の一日限定のサプライズイベントですが、飛行中機内で泣いた子供の人数に応じて、全搭乗者に対し次回の割引航空券(一人泣けば25%割引、二人泣けば50%・・・)をプレゼントをすると言った面白いイベントも過去行っています。さて、その結果は? ご興味あればこちら


そんなjetBlueですが、フィラデルフィア発の早朝便で売上が伸び悩んでいることが発覚します。さてどんな改善の手立てがあるでしょうか?

チケット価格を下げる? 新規のマーケティングキャンペーンをうつ? ところが、顧客の声を聞いたjetBlueは意外な事実を知ることになります。

「 搭乗ゲート近くで早朝に空いている売店がないので、不便 」 早朝便なので家で食事を取ってくる時間もなく、空港でちょっとした飲み物ぐらいを購入したいがそれもできないので、この早朝便は選ばないということでした。結果、搭乗時に無料の水やジュース、コーヒーなどを配るサービスを始めたことで、売上は順調に伸びていったそうです。

“売上が落ちた”という業務データからだけで類推した改善策では、このケースのように”なぜ?“を踏まえた策と違って、目的を達し得ない見当違いなものになっていたかも知れません。

Qualtricsを活用したjetBlue航空のエクスペリエンス革命

Qualtricsは、①顧客の声を収集し、②そこからインサイトを抽出・提示、③改善アクションを促すためのエクスペリエンスマネジメントプラットフォームを提供しています。(Qualtricsの詳細については、本リンクよりホームページをご参照ください)Qualtricsソリューション

jetBlueはこのQualtricsソリューションを活用して、顧客や従業員の声(なぜ?) を日常的に取り込み、そこから得られるインサイトを瞬時に分析、即座に改善アクションを打つことで、優れたカスタマーおよび従業員エクスペリエンスを提供することに成功しています。

我々は企業主導ではなく、お客様の声(VOC)主導の組織になるよう日々努力してます。お客様の貴重な時間をかけて意見を求める際には、その声がお客様の実の利益に繋がるよう、企業として忠実にインサイトを分析するし改善する必要があります。Qualtricsのような革新的なパートナーなしでは、それを実現できませんでした。

DANNY COX,  DIRECTOR OF CUSTOMER SUPPORT & INSIGHTS,  jetBlue

★jetBlue航空のQualtrics導入効果

X-data + O-data がもたらすビジネス革新

スクリーンショット 2019-05-21 12.36.52

Qualtrics社は、本年1月の買収完了を経て、新たなSAPファミリーの一員となりました。ここ10年積極的にM&Aを繰り返しているSAPですが、今回の約80億ドルでの買収は過去最大級のものです。

同じSaaS型クラウドソリューションのSuccessFactors(人事ソリューション)やAriba(調達ソリューション)と買収発表当時の売上高はほぼ同じでしたが、買収金額はそれらの2〜2.5倍、Qualtricsよりも売上が大きかったConcur(経費・出張管理ソリューション)とほぼ同等の買収額であることから、今回のQualtrics買収がSAPにとって大きな戦略的意義があることが見てとれます。

SAP S/4HANAをコアとしたSAPソリューション群は、企業のEnd to Endのビジネスプロセスをカバーし、そこで発生するO-dataを一元的に管理しビジネスに活用いただくことにこれまで強みを持ってきました。今回のQualtricsの買収により、X-dataをビジネスプロセスに日常的に取り込み(Listen)、O-dataと組み合わせたPDCAサイクルをまわすことで、改善の成功確率を高める最善策をうてる包括的なビジネス基盤をSAPはご提供できるようになったと言えます。

では具体的にどのように業務が変革するのか、カスタマーサービス業務を例にとってご紹介したいと思います。下記のシナリオ動画をご覧ください。

ご覧いただいたシナリオにおいて、Dosch社のカスタマーサービス担当であるマシューが取ったアクションをそれぞれで関連するX-data (Qualtricsのデータ) とO-Data (SAP Service Cloud のデータ)に分類して整理すると下記のようになります。

スクリーンショット 2019-05-21 12.48.19

なぜ? を示すX-Dataと何が?を示すO-Dataを、マシューのように組み合わせることで、問題の真の根本原因の特定から、それを改善するためのアクションまで淀みない一気通貫のプロセスを実行することが可能になります。

ビジネスで発生する様々なデータを企業経営に活用するという意味において、時代は新たな差別化要素をもたらすための次の段階に来ていると言っていいでしょう。ステークホルダーのなぜ?(X-Data)の声はもちろんのこと、何が起こっているのか? (O-Data)という情報さえも、非タイムリーで相当な労力をかけて入手できるのがやっとという状態では、グローバルビジネスの戦場においては、相当なハンデを背負って戦っているのかも知れません。


後記 :今回のブログに関連する話が、5月に開催されたSAPのグローバル最大のイベントである2019 SAPPHIRE NOWオープニング基調講演でも弊社 CEOよりなされ、X-Data + O-Dataの価値提供を重要視していることが見て取れます。

本イベントのハイライト記事(外部ニュース記事) およびリプレイ動画をご参照ください。


本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、jetBlue Airways社のレビューを受けたものではありません。