コープの持続可能な買い物と”廃棄ゼロ(ゼロ・ウェイスト)”の取り組み


食品ロス対策待ったなし

昨今日本でも、賞味期限切れ食品を売る店が人気を博していたり、食品ロスを減らそうと、コンビニ各社が消費期限が迫った弁当やおにぎりにポイント還元していくなどロスの削減は世界的な課題になっています。282843_Hands-recycling_R_purple

世界の食料廃棄量は年間約13億トン で、人の消費のために生産された食料のおよそ1/3が廃棄されているといいます。*1
食料が消費されずに捨てられるということは、その食料を育てるのにかかった人件費や土地代、肥料代など莫大なコストも無駄にしていることになります。また食品廃棄を処理するのにも費用が発生しているのです。

2030年までに一人当たりの食品廃棄物を半減させ、サプライチェーンにおける食品の損失を減少させるという国連の持続可能な開発目標(SDGs)*2 の目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」の実現に向けて各国、各社取り組みを行っています。今回は、最先端のテクノロジーを使ってこの目標にチャレンジするコープの取り組みを紹介します。

Jackson Hole, Wyoming, United States of America.

スイス全土に2,400以上の店舗展開しているコープは、約260万の共同組合員を擁し年間売上高は305億ドル

コープが、お客様のニーズに答えるため、幅広い商品でクリック&コレクトのサービスを提供しはじめたのはもうずいぶん前のことです。(「マルチチャネル」化を着々と進めるスイスの巨大小売業、コープ
コープはさらにそれを進化させ、「廃棄ゼロ(ゼロ・ウェイスト)」*3 のビジョンを掲げ、注文や在庫に関するリアルタイムの洞察を活用するだけではなく、人工知能(AI)で予測をすることで再びそのビジネスモデルを拡大しています。

食品ロスに対するコープの課題

コープは、すべての商品カテゴリー(60,000以上の商品)において販促が主導のビジネスを行っており、販促品の販売はかなり重要な事業の構成要素となっています。しかし販促は、定番商品ではないことが多く、新商品や散発的な商品では適切な数量を決定することは難しく、以前はルールベースで計画数量を決定していましたが、配分数量が需要に合わず過剰在庫や販売ロスになっていました。小さな店舗には必ずしもすべての販促品が配分されるわけではないので、お客様の需要はあるのにがっかりさせる事になっています。そんな統計的な配分を行った結果、コスト増や過剰在庫、販売ロスに繋がり従業員の販促業務への信頼度も落ちました283507_Discount-tag_R_purple

ロス削減のキーは、販促計画業務にあった

コープはすべての店舗の販促の最適な数量を自動的に提供し、需要に応じた店舗配分をするようにしました。SAP CAR(Customer Activity Repository)に蓄積されたPOSの店舗と商品の販売実績に基づいて、SAP UDF(Unified Demand Forecast)で販促数量を計算しSAP PMR(販促管理)で数量が登録されます。予測モデルは100以上の属性を含む様々な履歴データで学習されます。
現在450以上の販促の業務が自動化され例外処理のみ従業員がサポートします。

 「スイスの全店舗で、販促の商品の計画を元に2000万回の個別の配分数量の意思決定をしていることを想像してみてください。私達はそれを800万回未満に減らすことができるでしょう。これはもちろん私達の店舗で多くの時間を持てるということで、さらに無駄を減らしお客様に必要な商品を必要な店で提供することができました。」

ハイナー ハンサー
マスタデータ管理・マーケティング責任者
コープ

coopのアーキテクチャ

SAP HANA 2.0・SAP UDF ・ SAP PMR Fiori UI ・ SAP BI on HANA

効果は、廃棄ロス削減だけではなかった

在庫過剰にならない持続可能な施策によって多くの無駄を減らすことができ、より新鮮な商品と最適な在庫数でお客様満足も向上しました。スイス全土の店舗約1000店舗において、販促計画配分数量の自動化を行い、60%以上の販促にかける時間を削減。さらに自己学習アルゴリズムで予測の精度が増し、自動化された業務が増えました。その分店舗での作業負荷を排除し接客に時間を使うことができるようになりました。

日本企業はどう取り組むべきか?

2016年度、国内で年間646万トンの食品ロスがあったと推計されています。この量は、国連世界食糧計画(WFP)が1年間に、途上国などへ援助している食糧の2倍に相当します。そもそも、日本全国に加工食品が「多すぎ」のようにも思います。短い納品期限や販売期限などの「3分の1ルール」*4 を緩和したり、賞味期限の表示を年月日から年月に切り替えたりする動きは出ているものの、食品ロスより機会ロスが悪とされる日本の悪しき慣習があります。メーカーが欠品を起こすとコンビニやスーパーから取引停止を命じられる可能性があり絶対に欠品しないように常に多く作り過ぎざるを得ない。店頭でも欠品しないよう、より多くの数量を仕入れているのではないでしょうか?

フードシェアや寄付の仕組みが成立したとしても、本質的な解決策は環境配慮の原則である、3R(スリーアール)*5 のうち、最優先のReduce(廃棄物の発生抑制、ごみやロスを出さない)を心がけ、販促担当者や仕入れ担当の経験や感や、販売目標など売り手の都合によって決めていたものを消費者の動向にあわせた予測に応じて自動化して人間の慣習をとりはらうことによって初めて実現できるかもしれません。

 

なおこの取組は本年度のSAP Innovation Awards 2019を受賞されました。ご興味のある方は、COOP Innovation Award詳細資料も合わせてご覧ください。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、コープのレビューを受けたものではありません。


*1 国連食糧農業機関(FAO)レポートより
http://www.fao.org/3/a-i2697e.pdf

*2 持続可能な開発目標(SDGs)とは?https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

*3 ゼロ・ウェイストとは、無駄・ごみ・浪費 をなくすという意味。
出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方

*4 3分の1ルール”とは、賞味期限の3分の1までを小売店への納品期限、次の3分の1までを消費者への販売期限とする業界の商慣習

*5 3Rは、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つの英語の頭文字をとり、それぞれ意味は下記の通りです。

  • Reduce(リデュース)は、使用済みになったものが、なるべくごみとして廃棄されることが少なくなるように、ものを製造・加工・販売すること
  • Reuse(リユース)は、使用済みになっても、その中でもう一度使えるものはごみとして廃棄しないで再使用すること
  • Recycle(リサイクル)は、再使用ができずにまたは再使用された後に廃棄されたものでも、再生資源として再生利用すること