アバングリッドのインテリジェントパイプライン

作成者:田積 まどか 投稿日:2019年6月19日

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アバングリッドは米国のニューヨーク州とニューイングランド州全体で電力ガスの配送と再生可能エネルギーでの発電事業を展開する公益企業です。約325万人の顧客にサービスを提供しています。

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アバングリッドは地下に埋設されたガスパイプラインの管理をより安全でより信頼性の高いものにするために高精度GISでの正確な位置情報の把握、IoTとAIを使ったパイプラインの破損や漏洩の検知、ARによる地下設備の可視化の3つの最先端技術を活用しWiproと共同で実証検証を行いました。

地下埋設のガスパイプライン設備管理の主なビジネス上の課題は、設置された設備の状態の追跡、および保守と監視活動の改善でした。これはプロセス効率を改善するためだけではなく、米国連邦および州のガスパイプラインの安全規制に準拠するためにも必要なことでした。

これまでの設備情報の管理では紙の図面に情報を記録するのみでした。設計時と施工後では仕様が変更になることもありますが、それが図面に正しく反映されていないこともありました。
この検証では現場で設置された設備情報をリアルタイムに更新することができるようになりました。実際の現場で地下の設備を掘り起こした時に、位置情報、設備の状態や使用部材の確認を行い、その場で正確な情報を記録します。

またインテリジェントデバイスを設置し、地下パイプラインの状態を監視することで最適な保全計画の策定や供給システムの運用を実現しました。パイプラインの圧力監視システムには、SAP Leonardo のプラットフォームを活用し、パイプライン内の圧力状況を確認するためにグラフなどを使い視覚効果を高めるとともに、通常より高いまたは低い圧力の自動検知と過去履歴から最適圧力の算出、システムの自動調整までを実行します。

さらに興味深い取り組みはARを活用した地下設備の可視化です。
新しい設備の設置や既存の設備のメンテナンスのための工事計画を立てる前にデータを活用して地下にある既存の設備を可視化することで、机上では見えなかった問題や検討すべきことが見えるようになりました。具体的には地図や大規模なストリートビューに設備情報を3Dで被せることで、地上のみならず地下にある障害物を確認し事前に対応策を打つことが出来たり、地面を掘り起こす範囲の確認をしたり、いろいろなことに活用することが出来ます。
今までは実際に現場で作業を開始しなければ見えなかった課題が事前に確認できるため効率的な計画を立てることが可能になるのです。

この実証検証では3つの最先端技術を活用し、リアルタイムにその場の状況をデータとして得ること、それを可視化することで、ビジネスプロセスを再考し効率化するのみならずパイプラインの安全性も高めることが出来ました。今後はアバングリッド全社への展開が期待されます。

今、設備保全の世界ではビッグデータと機械学習のテクノロジーを活用して時間計画保全から状態監視保全へそしてAIによる予兆保全の自動化へと変革していくと言われています。しかし実際にはお客様からデータが足りなかったりどこまでAIに判断させることが出来るのかといったお悩みを伺います。アバングリッドの実証検証では、現場の負担は少なく正確な設備情報をリアルタイムに更新すること、インテリジェントデバイスを設置しオペレーションデータを収集すること、圧力調整の自動判断など、設備保全業務の課題解決のヒントになるのではないかと思います。

 

※ なおこの取組は本年度のSAP Innovation Awards 2019を受賞されました。ご興味のある方は、Intelligent Pipeline Innovation Award詳細資料も合わせてご覧ください。本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、アバングリッドおよびWiproのレビューを受けたものではありません。

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