アクセンチュアが示したSAP Ariba を活用した購買改革の可能性


アクセンチュアは今年、SAP Innovation Award を受賞しました。これは、SAPのお客様の中でSAPソリューションを活用して顕著に Innovative な活動をされた企業又は組織に授与されるものです。今回受賞の内容は“Intelligent Procurement”。“高度で洗練された購買”と言えばいいのでしょうか。アクセンチュアの調達・購買最高責任者(CPO)がアクセンチュアが今後予定しているイノベーションについて語っています。

現在はすべての購買要求がSAP AribaのGuided Buyingという購買ソリューションに一元管理されていて、ユーザーはここに来れば必要なものが見つかり購入できるという体験を実現しています。そしてその先で、自社だけでなくSAP Aribaの全顧客データを活用して、コンサルタントが出張するときにどうすれば最適な航空券の予約ができるか?必要な外部人材がどこにいるのか?などを特定できるという、ユーザーにとっての購買業務の複雑性を一切排除することを実現したいのです

Kai Nowosel — Chief Procurement Officer, Accenture

つまり、彼らが予定しているのは AI などの技術によって得たい情報を瞬時にキャッチし、分析し、業務に落とし込むということです。実際に SAP Ariba では、既に顧客データを活用した様々なベンチマークやベストプラクティスの構築などを行っており、購買データが情報セキュリティーの安全性を担保したなかでそれぞれのお客様で活用できる日はそう遠くないでしょう。では、アクセンチュアが既に実現している“ここに来れば必要なものが見つかり購入できるという体験”とはいったいどういうものなのでしょうか?

オンプレミスからの脱却

アクセンチュアは、2017年に従来の SAP Ariba のオンプレミス・ソリューションから SAP Ariba Cloud ソリューションに移行しました。従来導入していたオンプレミスはカタログ中心のソリューションで、ソーシングや都度見積機能はサプライヤーとの連携も弱く、サービス系の発注情報はテキストのベタ打ちでした。もちろんカスタマイズができる利点はありますが、日進月歩の機能追加への対応は大きな負担でした。アクセンチュアでの Cloud への移行は単にソリューションとしての利便性を得るだけでなく、より戦略的に変革を進めるために、①プロセス改善や使い勝手の向上を主とする“Business Enablement”、②統合ソリューションの設計、実装、テストなどを行って導入及び移行が出来る“Technology Enablement、そして、③ユーザー本位のチェンジマネジメントを主体とする“Change Adoption and Mobilization”の3つを目的としていました。2017 年の時点でアクセンチュアのグローバル調達・購買グループの状況は以下の通りです。

  1. 業務展開:69か国
  2. 人員:930
  3. 間接材外部支出の管理割合:84%
  4. 年間の調達案件(RFP/Q):2,600
  5. 年間の請求書処理:年間826,000
  6. SAP Fieldglassでの業務委託スタッフ管理:30,000人以上

この数値は日本企業の平均と比較すると相当に管理が進んでいるよう見えますし、グローバルの基準でもまずは80%を管理しようというKPIが一般的なので、業務としては進んでいると言えます。ただ、グローバル企業では大きくなればなるほど不正などの問題が企業活動に与えるダメージが大きく、場合によってはひとつの不正発覚から会社が消滅してしまうという危機感もあり、これで十分という安心感はないでしょう。アクセンチュアの場合は実際には直接的な影響はなかったものの、かつての母体であったアーサー・アンダーセンがエンロン事件の際の不正会計関与で消滅してしまったこともあり、この数字には満足しなかったようです。2018年には ERP 側をアップグレードしながら、SAP Ariba に関しても “Guided Buying” 機能と“SAP Ariba Spot Buy Catalog”を追加導入しました。

背景となった購買戦略

欧米の企業(特に米国)は間接材の調達・購買業務の専門化を2000年以前から行っていましたが、特に前述のエンロン事件やワールドコム事件を経て成立したSOX法(サーベンス&オクスリー法)施行後に間接材の統制は本格化しました。私もそれまで携わった直接材から2003年に間接材調達部門に身を置くとすぐに、当時の会社(BtoC ソフトウェア世界最大手)が SOX 法施行前年度のテストモデル3社のうちの1社だったので監査を受け、取引先選定経過、決定の手順、契約書、購買ポリシーなどの資料提出を厳しく求められました。ここで重要なのは①取引に至る経緯が明確で、記録が保管されている②それぞれのプロセスに明文化された基準(規則、ポリシー等)があり、それらに沿って業務が行われている、のふたつです。

クラウドの SAP Ariba Buying & Invoicing では、カタログが Ariba Network を通じてカタログサプライヤーによって常に最新であるようにメインテナンスが出来るので、バイヤーの負担が軽減されます。またソーシング側で契約締結されたサービス品のデータが Procure to Pay プロセス側と連携されているために購買統制が取れ、ユーザーインターフェースを含めて非常に利便性の高いものとなっています。それでもなお、調達・購買業務を本業としない一般的なユーザーにとっては、元来購買規定、出張旅費規程、派遣法、契約関連法規などの知識や理解が十分でないため、冒頭で Nowosel さんが指摘したような“購買業務の複雑性”を感じてしまいがちです。

しかし、Guided Buying 機能を活用すると、例えばエンドユーザーは欲しい製品やサービスがカタログに存在していればそのまま購買を行うことができます。もしカタログ上で見つからなくても、該当カテゴリーの推奨サプライヤーから契約書の締結なしに都度購買ができます。

また、人間系のサービス購買であれば最初から SAP Fieldglass、出張手配であれば SAP Concur に飛ぶというような制御がかかり、発注前に必要な手続きやポリシーがあれば注意や警告を出してくれます。

また、シェアード・サービスが扱う新規取引先などでは、どのような契約内容が適切であるかなどを提示してくれる機能もあります。さらに、今までは低額でビジネスリスクも少ない購買は部門で独自購入しながらも支払いの為にサプライヤー登録を行って、その後他の発注には使われないように登録抹消などを行っていたものが、Ariba Spot Buy Catalog の導入によって、すべての少額の単発購買も Guided Buying 機能を通じて購買することができるようになりました。ユーザーはどんなものを買うにもまずは一元的な入口にログインすれば必要な購買ができるようになり、単発購買でもSpot Buy サプライヤー又は P カード(パーチェシング・カード)での決済となるため新規のサプライヤー登録が不要になりました。

購買改革の最新状況そしてその先へ

最終的にアクセンチュアではGuided BuyingをUSでは6か月で立ち上げ、他の68か国でも12か月で導入しました。そして、初年度には世界中で14,000人の申請者から43,000件を超える購買依頼が発行され、導入から18か月でカタログ購買数は2倍になりました。このことは、①すべての購買がGuided BuyingとSpot BuyによってAriba上で行われるようになり、②探している製品が直観的なインターフェースによって見つけやすくなった、のふたつを示しています。結果的に今までは他のサイトや都度見積に流れていた支出が、既に交渉された製品やサービスを活用することによって大きなコスト削減につながりました。彼らが予測するコスト削減額は年間2千万ドル(約22億円)を超えるであろうとのことです。

以上のように、外部支出が把握しきれない、業務の複雑性取り除けないといったチャレンジの殆どは既に取り除かれており、通常であればいわゆる“購買のあるべき姿”というものは実現されているように見えます。しかし冒頭にあるようにアクセンチュアは“あるべき姿のその先”を目指しています。それは、単にAIなどのソリューションだけに頼ったものではなく、ユーザーの利便性を極限まで追求しながらも、不正のZero Tolerance(完全排除)を同時に行ってきた運用サイドでの不断の努力があってこそと言えるでしょう。その意味では、Guided Buying や Spot Buy は Nowosel さんの理想を支えるツールとして活躍していますが、そもそもツールは正しいプロセスを行うという意志と業務インプットがなければ本来の機能を発揮しきれませ今回のアクセンチュアの SAP Innovation Award の受賞は、それまでアクセンチュアが力強く推進してきたことが SAP Ariba 製品と相まって生み出された結果です。そしてその実績に甘んじることなく先を目指す想いに対してものでしょう。皆様の組織でも、是非このような経験をしていただきたいと思います。そして、そんな想いの元に SAP Ariba をご活用いただき、是非ご一緒に成功体験を作り上げていただければと思います。

尚、来る7月23日(火)に SAP では、国内最大級の調達・購買カンファレンス”SAP Ariba Live Tokyo“を六本木のグランドハイアットホテルで開催します。アステラス製薬副社長の岡村直樹氏、元ニュースキャスターの国谷裕子氏など多彩なキーノートスピーカや、SAP Ariba に関する最新情報、お客様事例、パートナー企業による々なセッションをご用意して皆様のお越しをお待ちしています。

Ariba Live Tokyo Picture (2)

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、アクセンチュアのレビューを受けたものではありません。