IDC Japan 寄藤幸治氏「全社横ぐしの業務プロセスが見えるのはITだけ。IT部門がリーダーシップを発揮して、”2025年の崖”を飛び越えろ!」


経済産業省が昨年発表した「DXレポート」では、多くの日本企業のITシステムが限界を迎える「2025年の崖」を乗り越えるために、デジタル変革(DX)への取り組みの優先順位上げと推進役としてのIT部門の重要性を提唱しています。SAP Intelligent Enterprise Summitに登壇したIDC Japanのリサーチバイスプレジデント 寄藤幸治氏は、IDCの調査結果を交えながら、IT部門が「2025年の崖」にどのように向き合い、自社のDXを具体的な成果にどう結びつけていくかについての知見を披露しました。

広範な業務領域に拡大するDXの本質は「データの有効活用」

少し時代をさかのぼると、ITはメインフレームを中心としたコンピュータの時代からクライアントサーバー型の時代を経て、2000年代後半からはクラウドやモビリティ、ビッグデータ、ソーシャルと呼ばれる第3のプラットフォームが市場を牽引しています。

最近は、主にコンシューマ向けに提供されてきた第3のプラットフォームが、エンタープライズITとしても利用されるようになり、同時にIoTやAI、VRといったイノベーションアクセラレータと呼ばれる技術が次々と登場し、これらが第3のプラットフォームと組み合わさることで、企業により多くのイノベーションの機会をもたらしています。

IDCの調査によると、中堅規模及びそれ以下の企業においても約3分の2がDXに取り組んでおり、この動きはIT領域だけでなく、製品開発やマーケティングなど広範な業務に広がっています。

では、いまや当たり前のように語られるDXについて、どれだけの人がその本質を理解しているでしょうか? ビジネスプロセスの変革や新たなビジネス価値の創出、第3のプラットフォームの活用などDXを支える要素はさまざまですが、寄藤氏は「DXの本質は突き詰めればたった一つ。膨大なデータをいかに有効活用するかが全て」と明言します。

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IT組織の分断がもたらす弊害と新たなチャンス

同じくIDCの調査によると、組織の中でDXをリードする中核部門の多くは社長直轄のデジタル専任組織や組織横断的なプロジェクトチームなどの非IT部門であり、IT部門がリードしているケースは全体の13.1%にとどまっています。では、DXを推進するためのシステム構築や運用・保守は誰が担うのでしょうか? それはIT部門の役割だと言いたいところですが、調査結果からは非IT部門が社外のパートナーと連携して行っている実態が浮かび上がります。つまり、非IT部門が独自にIT予算を持ってDXを推進しているのです。ここからは、社内に2つのIT組織が存在する現状が見えてきます。

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このことは、DXの取り組みで先行する企業に新たな弊害をもたらしています。それは社内に2つのIT組織が存在することにより、高い価値を備えたデータがあちこちに散在し、有効活用できない状況が生み出されていることです。

「とはいえ、多くのデータを抱える非IT部門も、自分たちが持っているマーケティングデータや生産データなどを、基幹システムと連携させたいと考えるようになっています。これはまさにチャンスです。今こそ部門の垣根を越えて、DXのための統合プラットフォームを構築する機運が訪れているのです」(寄藤氏)

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(画像をクリックすると拡大、ブラウザーの戻るボタンで元のページに。寄藤氏の講演資料のPDF版をご希望の方はこちらから ※ダウンロード期限 2019年10月23日)

5年後、10年後のビジネスを見据えたIT部門のリーダーシップ

DXレポートを読んで疑問に感じることがあります。それは「なぜ企業は2025年の崖に突き進んでしまうのか」ということです。回避できない理由には、現場の抵抗やレガシーシステムの問題などが挙げられますが、寄藤氏は「最も大きい理由は、モダナイゼーションプロジェクトの起案の難しさではないでしょうか。基幹システムを刷新するにしても、ほとんどの場合は現状業務を大きく変更するわけではないので、経営者から見た価値を明確にすることができず、プロジェクトの承認を得ることが難しいのです」と話します。

DXレポートでは、DX推進システムガイドラインの策定や見える化の指針、診断スキームの構築など、さまざまな提言がなされています。しかし、ここでも寄藤氏は「その前にやるべきことがある」と指摘します。それは、経営者や現場の人たちに「崖から落ちたら、その後はどうなってしまうのか」ということについて、しっかりと理解をしてもらうことです。実際、「2025年の崖」を他人事だと思っている経営者は少なくありません。こうした理解を促す啓蒙活動も、IT部門が担うべき大きな役割なのです。

では、具体的に何をすればいいのでしょうか。それは5年後、10年後のビジネスがどうなっているのか、どういった企業と競い合うことになるのか、ビジネスが最悪のシナリオを辿った場合、どれほどの損失を被ることになるのかについて、IT部門が率先して非IT部門の人たちと議論をすることです。まず自らの未来を見据えることで、はじめてDXの具体的な形が見えてきます。

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DXの推進においてIT部門がリーダーシップを発揮するためには、IT部門は自らの革新にも積極的に取り組まなければなりません。新たな技術の習得、ビジネス環境の理解のほか、人材の育成も重要です。そして、顧客や市場を起点としたビジネスの全体像をイメージした上で、どんなデータをどのように活用するのか、システムや社内体制をどうするべきかを考え、全体最適の社内システムを構築するのです。最後に寄藤氏は、「DXの実現に向けた全体最適のシステムをリードできるのは、IT部門以外にないと私は確信しています」と話し、講演を締めくくりました。

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