SAP NOW 2019展示 ‐顧客要求対応と利益最大化を両立する統合サプライチェーン‐ 第1回 設計・販売・製造を通した仕様と部品表の連携
作成者:斉藤 文徳 投稿日:2019年7月29日
SAPジャパンの年次イベントSAP NOW Tokyoを7/11に開催しました。このブログでは数回にわたって、SAP NOWの展示会場コンテンツからデジタルサプライチェーン・ソリューション領域のデモを紹介します。今年はハノーバーメッセなどでも大きく提示している「Design to Operate(設計から運用まで)」という考え方のもと、従来は分断しがちだった設計や製造、保守までを仕様や部品表、設置機器構成、計画・分析情報などの共有を基に繋ぎ、顧客対応力を強化するソリューションデモを中心に展示しました。
具体的には産業機械を製造・販売する企業を例に、事業・販売計画~設計開発~需給計画~販売~生産~設置サービスを相互に連携し、顧客の様々な製品構成や保守サービスへの要求に対応するとともに利益の最大化を支援する統合ソリューションの説明とデモを行いました。
個々の顧客の仕様要求に合わせた構成品やオプション品を含む製品の設計、受注、生産・製造、設置・保守サービスをどのように効率的に連携して顧客要求に対応するかが鍵となっています。一方で顧客の個別要求に細かく対応するということはコストの増加をもたらす側面もあります。事業全体から個別案件レベルまで経営・財務や各業務部門間でPDCAサイクルを効率的に回し、どの領域、製品、案件等でどれだけ利益を確保するのかを迅速に判断して対応策を実行していく必要があります。顧客要求対応と利益確保のためには、販売・購買・生産・保守等の計画・実績情報、製品の仕様や部品表、注文時の選定情報、顧客設備での機器台帳情報などが全体で共有されたうえで業務間が連携できなくてはなりません。(下図)
まず最初に、顧客の個別要求に如何に効率的に対応するかという観点から、設計開発、見積・受注、生産領域の仕様・構成情報の連携を例に見てみましょう。
設計開発段階における要件や機能モデル、仕様表、設計部品表を製造段階と共有し、製造部品表、工程表、指図と連動させます。SAP S/4HANA(以下S/4HANA)は同じシステム内で仕様表、設計部品表、製造部品表を管理するため、個別の仕組みよりも設計と製造間の密な情報連携を実現できます。
製品構成の選定可能条件は、見積・受注での仕様選定にも利用されます。すべての見積・受注時に設計部門を絡めて顧客要求に対応する方式から、ひな形を活用した仕様選定を基本とし、必要な時にだけ改めて個別設計を行う方式へと変えることによって、見積の精度とスピードを向上し競争力を高めます。見積後の受注構成も生産・製造へと連携するため、最新かつ正確な情報を反映した製造指示を行い、手配の効率化とミスの撲滅を進めることができます。
以下のデモ動画では、設計部門の技術管理担当者がS/4HANAの製品構成管理の機能を使用して、仕様に対して適切な部品が選定されるように部品表と仕様表の紐付けを定義する様子をご覧いただけます。仕様の組み合わせによって選べない構成条件を定義したり、シミュレーションを通して仕様と部品のひも付きに間違いがないかなどを確認したりすることも可能です。最終的に製造部品表と同期し、設計変更や仕様変更等への対応効率と正確性の向上に貢献します。
次に代理店営業がSAP C/4HANA(以下C/4HANA)のコマース機能(SAP Commerce Cloud)から仕様を選定し見積を作成するデモが以下になります。先ほどのS/4HANAの仕様・製品構成定義に基づいて、コマース機能においても選定可能な仕様やその組み合わせ条件の定義を管理することができます。最新の情報に基づいて製品構成や整合性の確認を自動化することに加えて、仕様に応じた価格条件を管理しておくことで、回答の正確性とスピードを向上し案件獲得に貢献します。
C/4HANAのコマース画面から代理店営業が作成した見積は本社営業本部に送られて金額修正や承認が行われます。代理店営業が見積の承認結果を確認し発注を行うと、コマースからS/4HANAへと連携し受注が登録されます。S/4HANAに登録された受注仕様はさらに製造指図へと引き継がれ、部品構成や工程が定義されます。仕様選定に基づく確実な手配を行い、個別要求に対応した生産を効率的に行うことができます。
SAP NOW Tokyo 2019の展示からデジタル・サプライチェーンデモを振り返る第1回として、設計、営業、生産の各領域をまたがって製品仕様や構成、部品表情報を共有・連携し、顧客の個別要求に効率的に対応するデモをご紹介しました。次回のブログでは事業・販売計画から重要な構成品の供給・在庫計画をご説明する予定です。