SAP Ariba Live Tokyo 2019レポート/ スポンサーセッション


SAP Ariba Live Tokyo 2019レポート/スポンサーセッション
調達・購買の変革に向けた「SAP Ariba」導入・活用の秘訣

「SAP Ariba」の導入支援で豊富な実績を持つ一社に、コンサルティングファームのデロイトトーマツ コンサルティング合同会社があります。

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2019年7月23日に催されたSAP Aribaの年次イベント「SAP Ariba Live Tokyo 2019」では、同社のデジタルエンタープライズ担当執行役員/パートナー  渥美 文孝氏が講演を行い、SAP Aribaの導入によって「実質的な効果」を手にするための手法を説明してくれました。

講演のタイトルは「SAP Aribaを活用した真の調達 Transformation とは?」。SAP Aribaの導入・活用を、調達・購買の変革に結び付け、コスト削減やガバナンス強化を実現する秘訣を説いたセッションです。

 

SAP Ariba導入・活用を成功へと導く6つのTips

渥美氏によれば、SAP Aribaの導入・活用を実質的な成果へと結び付けるうえでは、SAP Aribaという間接材の調達・購買システムの「特性」を理解することが初めの一歩になるといいます。その特性とは下記の5点です。

1. システムの対象となる(社内の)ユーザーが不特定多数になる。
2. ユーザーの大多数が、調達・購買の専門家ではない。
3. システム上の処理件数が多く例外やミスも発生するので『100点満点』のシステム化が難しい。
4. SAP Aribaは多数の企業が使うクラウドプラットフォームであり、その全体ルールへの順守が必要とされる。
5. 社外にも多数のステークホルダーが存在する。

渥美氏の講演では、これら5つの特性を踏まえながら、SAP Aribaの導入・活用の秘訣が次の「6つのTips」として紹介されました。それらのTipsについて、渥美氏の解説を基に少し詳しく見ていきます。

Tips①運用をクイックにスタートする

渥美氏が示した最初のTipsは、SAP Aribaの運用を可能な限り、早いタイミングで始動させること─つまりは、運用のクイックスタートです。

先の渥美氏の指摘にもあるとおり、SAP Aribaのような間接材調達・購買のシステムには、「対象のユーザーが不特定多数になる」という特性があります。これは、間接材の調達・購買は、企業のあらゆる部門で発生する業務であり、社員のほぼすべてがかかわりを持つ可能性があるためです。しかも、大多数のユーザーが、担当業務の専門家ではあっても、調達・購買の専門家ではなく、サプライヤーとの交渉をどう進めれば調達・購買コストが最適化できるかについて精通しているわけではありません。

「このような特性を持ったシステムの場合、個々のユーザーのニーズを吸い上げたうえで要件を固めて、システムを作り上げ、本番運用をスタートさせるというのは現実的なアプローチとは言えません。現実的なのは、システムの運用を可能なかぎり早期にスタートさせ、その活用を通じて、ユーザーの意見を集めて、改善・改良を施していくことです」と、渥美氏は説明します。

Tips②導入動機を「見える化」する

もちろん、運用を早期に始めると言っても、その前段にSAP Ariba導入を会社の上層部に承認・承諾させるというステップを踏まなければなりません。その際に最も重要なことが2つ目のTips「導入動機の見える化」であると渥美氏はいいます。

同氏によれば、「コストの最適化」や「ガバナンスの強化」という言葉だけでは、上層部によるSAP Ariba導入の動機づけにはならないといいます。

「必要なのは、間接材に対する全支出の可視化が、どうしてコスト削減とガバナンス強化につながりうるかをデータで示すことです」と、同氏は強調し、見える化すべきデータの例として、以下のような項目を挙げています。

・経理システムへの調達・購買データの登録にどれほどの時間が費やされているか
・同じ商材の調達・購買価格に、部門/拠点でどの程度の違いがあるか
・同じサプライヤーから商材を個別に調達・購買している部門/拠点はどの程度あるか
・未承認によるサプライヤーへの発注がどの程度行われているか
・領収書付きの発注申請が誰のチェックも受けずに承認されているケースはどの程度あるか

「これらの点を調べ上げ、データで可視化します。そうすることで、会社の上層部も、調達・購買を巡る自社の問題点を明確に認識し、SAP Ariba導入の必要性を理解するようになります」(渥美氏)。

Tips③事前の段取りを入念に行う

渥美氏が示した3つ目のTipsは「事前の段取りを入念に行う」です。これは、SAP Aribaによる調達・購買改革を構想する段階で下記の項目すべてを決めておくことを意味しています。

・導入目的:導入目的の優先順位を決める。
・スコープ(改革対象地域):改革の対象を日本国内(ローカル)、リージョン、グローバルのどこに設定するかを、改革実現の可能性を加味しながら決定する。
・体制:どの組織が各施策を遂行し、成果についての責任を取るかを決める。
・拠点アプローチ:システム導入の順序と切り分け方(部門単位で導入するのか、商材のカテゴリごとに導入を進めるか)を決定する。
・スケジュール:想定どおりの成果が出せる無理のないスケジュールを策定する。

渥美氏によれば、SAP Aribaのような業務システムの導入プロジェクトの場合、システムのカットオーバーが“目的化”し、業務プロセスのあり方までは検討されるものの、システム導入の本来目的の達成に向けて「組織(体制)」「方針/ルール」「KPI」「コード(体系)」をどうするかといった重要なポイントの検討がなおざりにされるケースが多いといいます。

「このような状態で、SAP Aribaのような業務システムの運用をスタートさせても、期待どおりの効果はまず手にできません。業務システム導入の成否は“段取りで8割が決まる”というのは真実です。本来目的を意識した“網羅的な視点”で改革の構想を練り上げることが重要です」(渥美氏)。

Tips④標準機能を活用せざるをえない状況を作る

渥美氏が先に述べたとおり、SAP Ariba(のネットワーク)は、調達・購買のクラウドプラットフォームであり、不特定多数の企業による共用を前提にしたシステムです。そのため、プラットフォームの標準プロセス、あるいはルールに従うことが必要とされ、また、そうすることがSAP Aribaの威力を引き出すうえでも、システム運用を早期に始めるうえでも有効と言えます。

とはいえ、企業の部門によっては、それぞれの業務の進め方にこだわりを持ち、プラットフォームの標準機能を使うことに抵抗感を示す場合があります。それを抑止する方策が、渥美氏が提示した4つ目のTips「標準(機能)を活用せざるをえない状況を作る」というテクニックです。「この方法はさまざまに考えられますが、ある企業では、システムに対するアドオンモジュールの開発費(=カスタマイズ費用)をすべて部門負担にするというルールを作り、標準機能を使わざるをえない状況を作り上げています」(渥美氏)。

Tips⑤“変化点”に合わせたチェンジマネジメントを行う

上記の強制力を働かせる一方で、業務上の変化に対するユーザーの「マインド(心の動き)」に適切に対応することも重要であると、渥美氏は続けます。それが、渥美氏が掲げた5つ目のTips「“変化点”に合わせたチェンジマネジメント」です。

このTipsについて、同氏は次のように説明します。
「新しいシステムが導入され、仕事の進め方を変えなければならなくなると、担当者のマインドは必ず、『否定(ネガティブ)』『肯定(ポジティブ)』『中立(ニュートラル)』のどれかに振れます。その変化をとらえて、適切な対応策が講じられるようにしておくことは大切ですし、それが変革をスムーズに進める秘訣の一つと言えます(図1)」

図1:人のマインドの変化に応じたチェンジマネジメントの実践

資料:デロイトトーマツコンサルティング(※渥美氏の講演資料p33より)

資料:デロイトトーマツコンサルティング(※渥美氏の講演資料p33より)

Tips⑥サプライヤーと“Win-Win”の関係を築く

渥美氏が示す6つ目のTipsは、「サプライヤーとWin-Winの関係を築く」です。これは、SAP Aribaの特性を最大限に生かすための方策と言えます。

「SAP Aribaによる調達・購買の改革は、Ariba NetworkというB2B取引のプラットフォームにサプライヤーとの取引を集中化させる取り組みでもあり、その推進にはサプライヤーの理解と協力が不可欠です。その意味で、サプライヤーは調達・購買改革ともに推進する強力なパートナーと言えますし、サプライヤーとのWin-Winの関係構築を前提にしながら、Ariba Networkに参加するよう時間をかけて説得することが必要です」と渥美氏は説き、次のように続けます。

「Ariba Networkは、数百万社のサプライヤーが参加し、年間3兆ドルもの取引が行われているという世界最大のB2B取引プラットフォームです。ゆえに、その活用はサプライヤーにとっても『販売機会の増加』『新規チャネルの開拓』『アピール機会の拡大』といったベネフィットがあります(図2)。サプライヤーを説得する際には、そうしたベネフィットを明確に伝え、SAP Aribaへの移行が互いの利益に通じることを十分に理解してもらうことが大切です」(渥美氏)。

図2: SAP Ariba Networkで築くバイヤーとサプライヤーのWin-Winの関係

資料:デロイトトーマツコンサルティング(※渥美氏の講演資料p35より)

資料:デロイトトーマツコンサルティング(※渥美氏の講演資料p35より)

 

拡がるSAP Fieldglassへの期待

以上、6つのTipsを説明し終えたところで、渥美氏は、間接材調達・購買の改革に向けては、もう一つ注目すべきプロダクトがあるとして、「SAP Fieldglass」を挙げました。

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SAP Fieldglassは社外の人材が提要するサービスの調達・購買(=サービス購買)を一元管理するプラットフォームです。このプラットフォームへの期待感を、渥美氏は以下のように表現します。

「日本企業の多くは物品よりもサービス購買の支出比率が高く、間接材に関する真の支出管理の実現には、サービス購買の改革に取り組むことがとても重要です。その点で、サービス購買の一元管理を実現するSAP Fieldglassには、大きな期待をかけていますし、その活用によって正社員も含めた会社全体のワークフォースを最適化することが可能になると見ています」(渥美氏)。

渥美氏によれば、米国デロイトではすでにSAP Fieldglassを自社内で活用しており、相応の効果を上げつつあるといいます。

「米国デロイトでは、案件の急増により人材不足が慢性化し、その解消に向けて外部人材を積極的に活用しているのですが、それによってサービス購買のコストが跳ね上がるなど、ビジネスパフォーマンスの低下を招いてきました。そこで、SAP Fieldglassを導入し、人材のスキルや料金・条件などをデータベース化し、可視化しました。それを通じて、サービス購買の適正化に取り組み、  一定の成果を上げ始めているようです」

このように、SAP Fieldglassへの期待を述べたところで、渥美氏は講演内容のまとめに入り、次のように話を締めくくります。

「SAP Aribaについては、導入してはみたものの、その取り組みをコスト低減やガバナンス強化という実質的な成果につなげられていない企業もあります。そのような問題を解決するためのすべとして、あるいはそのような事態に陥らないための一助として、今回お話したTipsを役立てていただければ幸甚です」

<了>