10月1日”国際コーヒーの日”ー最低価格だけを設定しても強制労働問題は解決しないー


*当該記事はPadmini Ranganathan (SAP Ariba社 持続可能性・サプライヤーリスクソリューション担当 グローバル バイスプレジデント)による寄稿記事の抄訳です。

毎朝のコーヒーを習慣としている私にとって、淹れたての熱い一杯はこの上ない喜びです。今日10月1日は“国際コーヒーの日”だとバリスタから聞き、エスプレッソでお祝いした際、これまで訪れた数多くのコーヒー農園の栽培者とコーヒー豆摘み取り作業者たちを思い起こし、あらためて感謝の念を抱きました。

コーヒーの世界的な需要は、過去最高に近づいています。(昨年実績 では60kg袋で1億5800万個以上)。小売店ビジネスは世界中で活況を呈しています。しかしこの好景気に対し、生産者の多くは繁栄から取り残されています。 コーヒー豆の価格はこの10年間、最低値に近く(現在1ポンド(453.592グラム)あたり1ドル以下で推移)一部の生産者にとって、もはや利益をもたらさない程度までマージンを侵食しています。

この傾向を逆転させるために、コーヒー豆生産者は、最近ココアに設定されたものとは異なる、コーヒー豆の世界的な価格下限の確立を模索し始めました。

ただしこの試みが成功する可能性は低いか、せいぜい短命に終わるでしょう。まず、夥しい生産者が数多くの国でコーヒー豆を生産しているため、コンプライアンス(ルール順守)が把握しづらい危険性があります。さらに、たとえ価格下限が正常に施行されたとしても、それは根源的問題を覆い隠すだけで、世界中のコーヒー豆に携わる何百万人もの生産者が過酷な貧困からの脱却にはつながらないといえます。貧困の背後には価格だけでなく、強制労働や欠陥だらけのコーポレートガバナンス、不透明なサプライチェーン、政府の腐敗や規制当局の怠慢に至るまでの諸問題が含まれているからです。

スポット市場価格や個別データを超え、俯瞰視点から生産者の窮状を総合的に見ることによってのみ、問題解決に対処できるのでしょう。さてどうやって?

テクノロジーは、透明性、説明責任、公正な労働トレーサビリティ実現の手段となります。クラウドベースのデジタルネットワークは、農園から小売店まで、そしてその中間のあらゆる地点でコーヒー産業全体の説明責任を強化できる可能性があります。これらのネットワークのおかげで、生産から購買まであらゆるオペレーションが相互接続され、全体像が可視化されるようになりました。

リアルタイムデータ分析によって強化されたこの新たな透明性は、サイクルタイム、在庫回転率、使用率といったビジネス上の基準指標だけでなく、ブランド上の持続可能性ポリシーとその目標達成にも光を当てます。

いまや自身の取引先とそのサプライチェーンについてより詳細情報が見えるようになりました。
– 強制労働を排除するために必要なガバナンス構造を備えているか
– 人道的な労働条件を確保するための実績を蓄積しているか
– 歴史的に過小評価されている人々を雇用を通して支援しているか
– 原材料の調達および使用済み資源のリサイクル時に天然資源を保護しているか
– 倫理的で持続可能なビジネスを慣行しているか

これらのデータを可視化させることと、コーヒー生産者の財政状況や、そこで働く労働者の生活水準を向上させることは、どう結びつくでしょうか?

バイヤーを取り巻く多様な利害関係者(消費者や株主、従業員や取引先)はますますサプライチェーン全体を通して説明責任を求めています。これに伴い、バイヤーは一層自社のブランド価値と一致する(そしてそれを実証できる)生産者からのみコーヒーを調達するようになるでしょう。そうなると、低価格だから、という理由だけではバイヤーは調達しなくなります。

クラウドベースのデジタルネットワークが可能にする透明性は、すべての市場参加者がより社会に責任を持ち、公平で相互に利益と発展をもたらすエコシステムへの希望を示唆しています。

<了>