素材の可能性を追求して「医薬品開封検知」に — UACJが取り組むオープンイノベーション


協働イノベーションのためのエコシステムパートナーとして

今年のSAPPHIRE NOWのハイライトのひとつに掲げた通り、SAPはこれまでのITソフトウェアベンダーから積極的にエコシステムパートナーへの脱皮を図っています。SAPジャパンでは日本企業のイノベーションをさらに加速させていくために、具体的な協働イノベーションのためのデジタルエコシステムの各種プログラムを立ち上げ、既に多くの方々にご参加いただいています。

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その中でも株式会社UACJ様(以後UACJ様)は各種の弊社プログラムに早くから興味を持ってくださったお客様の中の一社です。

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UACJ様は2013年10月1日に住友軽金属株式会社と古河スカイ株式会社が経営統合して誕生した企業で、「UACJグループは、お客様の満足と信頼を得る製品とサービスの提供に努め、堅実・健全な事業発展を通じて広く社会に貢献します」と経営理念を掲げておられます(ホームページはこちら)。

UACJ様には弊社各種プログラムにご参加いただくだけでなく、多方面でお付き合いをさせていただいています。2018年末には直接ご相談をいただきました。そのことがきっかけとなって、我々SAPジャパンはすばらしい取り組みにご一緒させていただけることになりました。

2019年初めにお会いしたR&Dセンター第五開発部箔製品開発室長 渡邉貴道様からのご相談内容は具体的でした。

箔製品開発室では、アルミニウムという素材の可能性を追求する中で社会に貢献できるテーマに注力され、既存ビジネスである医薬品包装材料分野において、印刷によって電気回路を形成した開封検知箔を開発されました。開封検知箔を用いたプレススルーパック包装の医薬品を服用するときに箔を破ることで、理論的には患者が処方された薬を正しく飲んでいるかどうかのモニター(服薬モニタリング)が可能になります。しかし実際に社会全般に定着させるには非常に高いハードルがあります。当時、既にUACJ様は医薬品包装材料のお客様である複数の医薬品メーカーに開封検知箔技術を紹介済みでしたが、興味を持ってはもらえるものの残念ながら採用には至っていませんでした。なぜなら薬を処方するのはあくまでも医師であり、処方の決め手になるのは何よりまず患者に安全に効くかどうかであって、開封検知箔付きの包装かどうかではないからです。つまり従来的な医薬品サプライチェーンに則るならば、服薬モニタリングを社会全般に定着させるには全ての医薬品に開封検知箔が装着されていることが大前提になってしまうのです。患者(医者)は薬を選ぶけれど、薬は患者(医者)を選ぶことができません。しかし何とかこの画期的な開発である開封検知箔を世に出し、「残薬問題」という社会課題を解決する方法はないか、というのが渡邉様から私たちへのお題でした。

 

「後貼りは可能でしょうか?」

かねてよりSAPは個別化医療分野におけるお客様・患者様向けのさまざまな取り組みをご支援しています。既に2型糖尿病予防のためのロシュダイアグノスティクス様の取り組みを既にご存知の方もいらっしゃるでしょう。

また、昨今日本国内でも取り上げられることが多くなった群発頭痛障害については、オランダでの実証実験にこぎつけたのは弊社の社員でした。

このふたつの取り組みの共通点は、デジタル技術を活用したより患者に近い場所でのイノベーションです。そのことを渡邉様たちにご紹介したうえで私たちSAPからお聞きしたのは、「既存のプレススルーパック包装に、例えばシールのように開封検知箔を”後貼り”できるなら、適切なチャネルによって、医薬品の種類を問わず、飲み忘れでもあるいは飲みすぎでも、薬の開封の有無を管理したい患者さんや医療従事者の方々に使ってもらえると思います。とはいえ技術的に後貼りは可能でしょうか?」

そんな医薬品包装材料技術には全くの素人からの荒唐無稽な質問を真摯に聞いてくださって、渡邉様たちは「できます!」と即答されました。そのときから次のアクションは「この開封検知箔の活用にご興味を持っていただける医療従事者を探すこと」と意気投合し、まずはUACJ様社内で産業医とタッグを組んで従業員を対象とした実証実験をというアイディアもあった中、敢えて渡邉様たちは積極的に医療界へのコンタクトに踏み切られました。その熱意とフットワークがドクターズ株式会社様(以後ドクターズ様)との新たな出会いに繋がりました。

 

強みを持つ同士の協働 — ドクターズ様の参画

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多くの医療課題解決に向けて多数の現役専門医チームを構成し、医療機関や大学、医師団体などの垣根を越えて繋がることにより解決することを目的として設立された企業、ドクターズ様。高度な医療課題にも取組みが可能な現役エキスパート医師(400名以上の専門医ネットワーク)を中心に既に医療に新たなイノベーションを起こしておられ、その代表である柳川貴雄先生は脳外科医です。今回の取り組みでは柳川先生ご自身が直接関与されることになりました(ホームページはこちら)。

これまでSAPが実績を築いてきたクラウド技術をUACJ様に活用していただくにしても、そもそもSAPは医療のプロではありません。日本ならではの法規制や慣習も医療従事者によって適切に踏まえられる必要があります。ドクターズ様の参画によって、より開封検知箔の強みを生かしたうえで、医療関係者の業務や患者さんの治療に貢献できるよう、具体的な疾病の治療を想定した実証実験シナリオのデザインや検討が進み、実施に向かうことができるようになりました。

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2019年11月 実証実験開始

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通常のプレススルーパック包装の左下部分に回路印刷アルミ箔を装着したもの

2019年春以降、性能と使用感を考慮して試作を重ねた開封検知箔を使って、11月から医療関係者による小規模の実証実験が始まっています。11月15日には3社共同で実証実験開始のプレスリリースを行いました。2020年前半から各業界に向けて周知活動を行い本格的な実証実験を行う予定です。並行して実用化に向けた検討を行い、目標は2022年度の実用化です。弊社としては、今後本格的な実証実験を行うにあたって冒頭のデジタルエコシステムが功奏するよう尽力し、また、このブログサイトでも折々に進捗状況をお伝えしていきたいと考えています。

 

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