ビジネスモデルの変革にチャレンジするサンドビック・コロマント社


ミュージシャンがライブ後にギターを破壊するパフォーマンスは今やどなたにもお馴染みの光景だと思います。たまたま今年(2019年)の春ごろ一つのビデオが私のSNSのタイムラインに流れてきて、何気なく観たところ衝撃を受けました。まずはその衝撃のビデオを是非ご覧ください。

(画像をクリックすると動画に飛びます。)SANDVIK GUITAR

いつものようにミュージシャンがギターを破壊するパフォーマンスをしていますが、ギターはまったく壊れません。何をしても壊れません。このギターはチタン合金粉末を材料として使用し、3Dプリンターでボディーが頑丈に製作されているのです。さらに高精度の切削工具で仕上げ加工されているため、ピカピカと輝きを放つ姿はまさに芸術品と言えます。

この素晴らしいギターを作り上げたのは、切削工具およびサービスを提供するサンドビック社です。当社は最先端技術を使って、高精度かつ驚異的な耐久性をもつ製品を作ることができる、ということを実証アピールするために、この壊れないギターの製作を行ったとのことです。サンドビック社が先端材料、精密加工、アディティブマニュファクチャリング(3Dプリント)などの素晴らしい先端技術を備えていることは、このビデオを通じて理解できます。

 

製作秘話はサンドビック・コロマント社のサイトに詳細が掲載されてます。

https://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/aboutus/pages/how-did-we-make-it.aspx

 

このような先端技術を持つサンドビック・コロマント社は、単に工具を提供するだけでなく、工具をお客様の加工プロセスで使用するための最適な方法を開発する手助けをしています。つまり工具のモノ売りだけでなくサービスビジネスにも踏み込んできているのです。

このサンドビック・コロマント社が、2019年にSAPのグローバルイベントであるSAPPHIRE NOWにて「Coromant’s vision for digital machining」と題して講演をされ、同社のビジネスモデル変革に向けた取り組みを紹介されました。

今回のブログでは、講演内容をベースに、サンドビック社のビジネスモデル変革に伴い、従来に比べて何を変えるのかについて取り上げてみたいと思います。そのことがビジネスモデル変革を実践される方々の参考になればと願っています。

 

サンドビックについて

スウェーデンに本社を構えるサンドビック・グループは約1兆2000億円の売上、全世界に従業員数4万3000名を有するグローバル企業です。主に金属切削工具、先進的な金属材料、鉱山・建設機械を取り扱うエンジニアリング企業です。サンドビック・グループの中で中核事業を率いるサンドビック・コロマント社は、1942年に創業し、現在8200名の社員が150か国で切削加工技術をベースに工具の製造販売およびサービス提供をしています。サンドビック・コロマント社の優れた技術力およびサービスにより、常に顧客が購入した工具の価値を最大限引き出し、顧客の生産性向上や生産高度化に寄与し続けています。その結果、自動車、航空機、そして歯ブラシなどにもサンドビック・コロマント社の工具が使われ、大企業から家族経営する零細企業まで様々な顧客層をカバーしているのです。

 

サンドビック・コロマント社のビジネス戦略

transforming from products to solution and services

彼らのビジネス戦略によれば、これまでの切削工具など製品(モノ)を売るビジネスから、ソリューションやサービス(コト)を売るビジネスに変革することが戦略の中心にあり、以下の4つがポイントだと説明しています。

  1. 工具ビジネスのパートナーエコシステムに対しリーダーシップを発揮
  2. 工具とソフトウェアおよびサービスを組み合わせた完全なオファーに基づくソリューションの提供
  3. 豊富な知識と新しいテクノロジーを組み合わせて、世界クラスの製造ソリューションを提供
  4. デジタル加工の世界で成功するため、さまざまなパートナーのデジタルエコシステムに協力

今までは、金属切削工具の豊富な品揃えを武器に製品販売中心のビジネスだったところから、製品にセンサーを搭載し、ソフトウェア制御やeLearningを準備して顧客にセルフサービスでチューニングできるような環境を提供するサービスも提供するようになり、飛躍的にビジネス自体が変わってきています。

 

新たなビジネスモデルには新たなビジネスプロセスが必要

ビジネスモデルが変わり、支払いモデルも変わる、そして新しいデジタル製品の提供を開始すると、完全に新しいビジネス機能をカバーするビジネスプロセスが必要になります。

 

サンドビック・コロマント社における大きな変更点を挙げると以下のようにまとめられます。

From

To

製品 ソリューション
数をベースとしたプライシング 使用量に応じたプライシング
注文 契約
サプライヤー パートナー
ロット・バッチのトレーサビリティ アイテムごとのトレーサビリティ
納品 活用、利用

これらの変更点は、既存の社内ITアプリケーションランドスケープに大きな影響を与えることになります。

2018年よりデジタル加工分野で新たなビジネスモデルに対応するための社内プログラムが立ち上がりました。プログラム名はDigital Offer Supply Chain – Program

プログラムの目的は、デジタルソリューションの供給を確保するための新たなプロセスとシステムをサポートすることです。

特に重要なビジネスファンクションとして以下を挙げています。

  • クロスセル
  • アップセル
  • エンタイトルメントマネジメント(権利の管理)
  • 新機能のプロビジョニング
  • トレーサビリティ
  • セルフサービス

対象とするビジネスプロセスは製品開発、受注・納品、デジタルツールアクティベーション、利用検証、顧客セルフサービスといった顧客使用のフェーズまでをカバーしています。

 

製品設計:機能・スペックの定義、製品開発、ライセンスモデルの開発、製品定義

受注・納品:受注プロセス、エンタイトルメント付加、課金・請求、シリアルナンバー

デジタルツールアクティベーション:ライセンスキー発行、エンタイトルメント認証、

利用検証:機能検証、消費・利用レポート

セルフサービス:利用開始、利用終了

 

サンドビック・コロマント社の新しいプロセスをサポートするITアプリケーションランドスケープの中で、コアソリューションに位置付けられるのがSAP Entitlement Management です。このソリューションをサンドビック・コロマント社が知ったのは2018年5月。当時SAPの新しいソリューションだったことから、何度もSAPとワークショップを実施し、最終的にすべての質問に対する回答を得て、その年の夏休み前に採用を決めました。

SAP Entitlement Managementについてはこちらのビデオが参考になります。

(画像をクリックすると動画に飛びます。)

 

SAP Entitlement

新たなビジネスモデルへの適用

2019年10月現在、ソフトウェアリリースのシンプル化、効率化に、このエンタイトルメントの仕組みが貢献しています。サンドビック・コロマント社は2020年に新たなサービスベースのプライシングモデルのリリースを検討しており、利用料課金モデルも出てくる見込みとのことです。顧客に寄り添い、顧客の生産性向上や価値向上を常に考え、新たなビジネスモデルで新たな価値を提供するサンドビック・コロマント社の挑戦は、これからも続くでしょう。

 

最後に

サンドビック・コロマント社の取り組みをダイジェストでお伝えしましたがいかがでしたでしょうか?私は組立製造業を長年見てきておりますが、デジタル化が急速に進む昨今、ビジネスモデルをがらりと変えるケースが増えてきていることを実感しています。その一社が今回取り上げたサンドビック・コロマント社。創業から75年の老舗メーカーがビジネスモデル変革に全力を注いでいることを知ったとき、歴史の長い日本企業にも参考になるのではないかと思いブログとしてまとめました。新たなビジネスモデルはスタートアップの得意とするところかもしれませんが、老舗企業の事例を目の当たりにすると、これまで長くお付き合いのあるお客様でも可能だと勇気が湧いてきます。社歴の長さは変革の足かせになることなく、新たなビジネスモデル実現には新たなビジネス機能、プロセスを導入すればよいことをこの事例を通じてもご理解いただけたと思います。しかも、SAPは多くのお客様のご要望に応じた結果をソリューションとして提供しています。変革に向けた新たなビジネスモデル、ビジネスプロセスにご興味がおありでしたらお気軽にお問い合わせください。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、サンドビック・コロマント社のレビューを受けたものではありません。