エネルのデジタルトランスフォーメーション クラウド化への挑戦


SAPは年に2回公益事業に特化したイベントを開催しています。毎年春にはヨーロッパ、秋にはアメリカでお客様の事例紹介を中心に約30のセッションが行われ世界各国から公益事業に関わるお客様、パートナー様が参加されます。
今回は4月にミラノで開催されたSAP International Utilities Conferenceから、今回のイベントの開催地でもあるイタリアの大手エネルギー事業会社エネルのデジタルトランスフォーメーションの事例をご紹介します。

エネルはイタリアの国営電力会社でしたが、民営化され現在では、イタリアのみならず、欧州他国、北米、中南米、ロシア、などへもグローバル展開する世界最大級のエネルギー会社となりました。
イタリア国内で3000万、グローバルでは合計6000万の小売の顧客を持っています。東京電力の顧客数が約2800万、日本全体での電力会社の顧客数合計が8500万ですから、巨大な企業規模であるということがわかります。

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エネルは2004年から自由化メニュー向け料金計算システムに公益事業向け料金計算ソリューションの SAP IS-U を使い始めました。徐々に利用範囲を拡大し、小売の料金計算のみならず託送料金計算にも SAP IS-U を展開しています。
彼らは2016年にデジタルトランスフォーメーション計画を策定しました。それは、54億ユーロのIT投資により、2019年から2021年の間に25億ユーロのリターンを予測するというアグレッシブなものでした。特に多くのデータを扱う小売料金計算と託送計算は Global Billing Systemとして、エネルグループ全体として標準化された最新テクノロジーを持つ同一製品、同一アーキテクチャ、同一テンプレートを使うこととし、それを共通プラットフォームとして位置付けることとしました。
またこれらをオンプレミスからクラウドへ移行することを決定しました。今後益々増えていくことが予想される顧客数に対応するためにはクラウドで運用するほうがコスト効果があること、イタリアの規制として一時間に100万件以上の請求書印刷の処理能力が必要であることなどから SAP HANA Enterprise Cloud の上で SAP IS-U を構築しました。
現在はイタリア国内の3200万件の料金計算をクラウド上で実現しており、世界最大のクラウド料金計算システムとなっています。処理時間も1時間で150万件を実現しています。

日本のみならず世界の公益企業もクラウドをフル活用するということにはまだまだ消極的です。特に料金計算のような顧客情報やメータデータを管理するシステムやスケールの大きいシステムについては尚更です。しかしエネルは一番多くのデータ量を持っている小売料金計算と託送計算でクラウド化を選択しそれを実現しているのです。
エネルのゴールは Everything “as a Service” 全てをクラウド化しビジネスを加速そして拡大させることだと言っています。自由化が進み近い将来には国境も超えた競争市場が公益業界がやってきます。
エネルのような攻めのIT戦略を持つ企業にどのように勝っていくのか、検討から実践へシフトする時が来たのではないでしょうか。

本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、エネルのレビューを受けたものではありません。