デジタルトランスフォーメーション – キーワードで辿るIntelligent Enterpriseへの道のり


 

デジタルトランスフォーメーション。デジタル変革。DX今やITを活用した取り組みは全てこれらの言葉に包含されてひとり歩きしていますが、具体的にそれが何を意味するのかを明確に説明している会社は少ないように思います。

SAP2018年からIntelligent Enterpriseという明確な定義を打ち出し、伝統的なERPの分野に新たな先端技術を組み合わせて、仕事の在り方を変えようとしています。今回のシリーズでは、Intelligent Enterpriseを実現するための段階的ステップを最新の取り組み事例でご紹介します。

目次

 

XデータとOデータが融合したExperience Economy

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Qualtrics社の買収を正式に発表したのが今年1月。5月のSAPPHIRE NOW 2019でXデータとOデータの融合について大々的にお披露目してから約6ヶ月経ち、業界の枠組みを超えて変革のヒントになる具体的な活用例をご紹介できるようになりました。いち早く皆様にお届けしたく、巻頭特集です。

テクノロジー分野の世界最高学府のひとつであるマサチューセッツ工科大学でのXデータとOデータを融合させた施設管理と利用者サービス。しかし決して大学だけにしか適用できない事例ではありません。広大な敷地や設備を保有する、例えば装置産業のような業態ですぐに使えそうなヒントに満ちています。むしろ、企業ではない「大学」という組織だからこそ、業界色に拘らずXデータとOデータの融合方法のイメージを膨らますことができそうです。

マサチューセッツ工科大学が提供する利用者の声に基づく新たな学生サービス(桃木 継之助)

大変革期を迎えた自動車業界。しかし既に世界中に膨大な数の顧客や従業員を抱え、現場の声を聴くには従来の方法では困難なこと自体が業界特性と言えるでしょう。業界を代表するフォルクスワーゲングループでは、世界中からの生の声をグローバル統一のデジタルプラットフォームに集め、「まずは」聞いて分析することから始めています。

フォルクスワーゲンとポルシェ:顧客中心主義とエクスペリエンスマネジメントの実践(山﨑 秀一)

最終消費者との間であらゆるタッチポイントを持が故に、デジタルによってネガティブな声が拡散してしまうリスクの影響が最も大きい業界のひとつである小売業では、もちろんXデータの活用に熱心に取り組んでいます。ここでは複数の企業での活用例で多面的にご紹介しています。

エクスペリエンスエコノミーにおける小売業の最高の体験の提供(熊谷 安希子)

世界有数の金融サービスグループのひとつであるアリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティでは、真の顧客中心モデルの実現に向けていち早く顧客の声(Xデータ)の収集を決断し、既に営業システム(Oデータ)との連携も実現しています。

真のパートナー関係を築くため顧客再定義に取り組む、アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ(前園 曙宏)

 

SaaS/クラウドで実現する変化への対応

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手始めにSaaS/クラウド化。そこには業界特性の考慮が必要です。加えて各業界のスペシャリストが担当業界に寄せた提言には、他の業界でも耳を傾けるべきインサイトがあります。

鉄鉱石産出地に近い海外鋼材メーカー。彼らが目指すのはいずれのメーカーと同じビジネスの拡大です。倣うものがないが故に標準プロセスを拠りどころにして、ゼロベースで将来に向けたビジネスプロセスを構築しています。そんな企業が世界中に増えていったこの先、果たして日本企業が拠りどころにするのは何でしょうか。

金属業界向け2019年グローバルイベント開催報告(鹿内 健太郎)

ビジネスの拡大に向けて攻めのIT戦略を採ることは公益業界も例外ではなく、その手段としてクラウドのフル活用に取り組む企業がいよいよ出てきました。自由化により地域を越え国境を越えた市場競争が起きることが確実になった今、どの公益企業にも世界市場で勝てる戦略が求められます。デジタルは距離を厭いません。

エネルのデジタルトランスフォーメーション クラウド化への挑戦(田積 まどか)

2014年のデジタル電子政府ランキングで最下層評価だったイリノイ州が巻き返しのために選んだのがSAP S/4HANAでした。彼らが目指した「21世紀型組織」の意味は、不確定な将来においてでも柔軟に迅速に適応できることが不可欠ということです。もちろんクラウド化が大前提。何よりも今さらカスタムメイドではないという明確な判断がありました。

デジタルコアの確立によるスマートシティの実現ーデジタル化ランキング最下層からの脱却ストーリー(横山 浩実)

インドの新興通信会社がフレキシブルな課金体系で飛躍的に成長しています。億単位にのぼる顧客がさまざまなサービスプランの中から自身を惹きつけるプランを選ぶ変更が逐次発生し、課金請求処理も複雑。このリアルタイム処理を支えるのが、通信業界向けに新たに開発された課金処理ソリューションとSAP S/4HANAの組み合わせです。

サブスクリプションエコノミーを支える課金処理:インドの急成長通信会社ジオの取り組み(久松 正和)

建設業は同じ案件がふたつとないプロジェクト型ビジネスモデルです。エーコン社は「全体の労働生産性を改善し、高効率かつ高品質なプロジェクト管理の実現」することでカナダNo.1建設業者になることを目指しました。かつては8つあった社内標準を統一するために用いたアプローチは、ERPパッケージ導入の鉄則であるトップダウンアプローチに加え、彼ら独自の工夫が凝らされ、特筆すべき成果を上げることに成功しました。さて、彼らなりの工夫とは。

プロジェクト管理のインテリジェント化を推進したエーコン社(カナダ)(土屋 貴広)

 

「データ駆動型」を興すには

データ駆動型ビジネスを行うには、実はデジタル技術だけでなく、チェンジマネージメントが必要です。言い換えれば人の思い — なんとしても変革を実現するという熱意と工夫 — が不可欠です。機械学習エンジンを正しく機能させるためのキレイなデータが自動的にできる訳ではありません。

2015年2月、NHLとSAPが共同イノベーション契約を締結。SAP Cloud Platform上のSAP HANAの選手のスタッツデータと、選手が時速50kmでパックを追いかけるスピーディーな試合のリアルタイムデータが、一瞬たりとも途切れのない、試合中のコーチの意思決定を支援しています。

NHL(ナショナルホッケーリーグ)での新たなデータ活用のあり方 SAP-NHL Coaching Insights App for iPad(佐宗 龍)

MLBヒューストンアストロズもライブデータを活用したチーム運営を行なっています。きっかけはマッキンゼーから招聘したGMがデータ活用経営に向けたチェンジマネージメントを行なったこと。その取り組みにはGMによる独自の工夫が凝らされていました。エーコン社と同様、トップダウンアプローチだけではない工夫。そこには日本企業のヒントになる示唆があります。

MLBアストロズ球団に見るデータドリブン経営に向けた日本型変革モデル(吉岡 仁)

我々がデータ駆動型ビジネスを語るときにスポーツ業界を引用するのはある意味伝統芸ですが、理由はどの業界のお客様にとってもわかりやすく自社ビジネスに準えやすいことに加えて、実際にリアルなデータ駆動型ビジネスを公開してくださるお客様が他にはそうそうないからです。今回、SAP本社とSAPジャパンが実際に行った営業領域チェンジマネジメントのドキュメンタリーを当時の担当者が語りました。実際の現場は泥臭く、しかし定着するまで諦めない姿勢が今日の成果をもたらしました。

使ってこそのSAPソリューション – 急激なマーケットの変化に対応するためのSAP社自身の営業デジタルトランスフォーメーション(重政 香葉子)

 

デジタル技術が可能にする新たなビジネスモデル創造

新たなビジネスモデルを生む際には、新たなデジタルプラットフォームやソリューションが必要になり、多くのケースでお客様とSAPの共同イノベーションを実施しています。

スウェーデンの工具メーカーは先端技術を生かした製品を売るビジネスからソリューションやサービスを売るビジネスへシフトすることを経営戦略に掲げ、新たなビジネスモデルに伴う新たなビジネスプロセスの構築を、ハイテク業界向けの新しいSAPソリューションを導入することで実現しました。

ビジネスモデルの変革にチャレンジするサンドビック・コロマント社(柳浦 健一郎)

独り勝ち狙いはかえって逆効果 — 顧客にとっての供給元は自社だけではなく、供給元それぞれが同様のことをやった結果、顧客のオペレータに困惑と負荷が生じました。手痛い教訓から複数のメーカー企業・複数の顧客企業が集って対策を講じ、解決のためのソリューション開発を託されたのがSAPでした。今、その新たなソリューションのロールアウトが始まっています。

エンドレスハウザー社にみる、対競合差別化+顧客中心主義(古澤 昌宏)

 

広く社会に目を向けて

地球の資源が有限であることがわかった以上、企業も個人もこれまでのようにただ前を向いて競いあうのではなく、いかに地球も人類も終焉を迎えずに行動していくか、姿勢だけでなく確かな実体が求められています。

Sorted Recycling in Containers --- Image by © Les and Dave Jacobs/cultura/Corbis

使用済プラスチックによる深刻な環境汚染。プラスチックやプラスチックを活用した材料・部品などをさまざまな業界に供給している石油化学業界は、日夜リサイクルに関する技術革新に励んでいます。我々SAPにも何かできることはないだろうか。SAPはSAP Ariba Networkに再生プラスチックおよびプラスチック代替品サプライヤーのための新しいグローバルマーケットプレイスを構築しました。企業 – 廃品回収業者 – 再販業者および代替品サプライヤーが、より持続可能な形で繋がることを支援します。

プラスチックチャレンジ − 循環型経済(Circular Economy)の実現を目指して(竹川 直樹)

SAPの本社に近い街ハイデルベルクは風光明媚な観光地であり、また世界有数の学園都市でもあります。環境・エネルギー分野に高い専門性を持つ市長がリーダーシップを発揮し、IoTを活用してゴミ収集問題解決に取り組む背景には、ハイデルベルクの歴史・文化を尊重したうえでの未来への責任感があります。

持続可能な社会の実現に向けて — ハイデルベルクのスマートシティの取り組み(吉元 宣裕)

日本企業の在ドイツ子会社が、ドローンとSAP HANAを使ってヨーロッパ全土で猛威を振るう侵略的外来種の駆除に向けたPoCを実施しました。テクノロジーの専門集団による成果を受けて今後この取り組みがどう成長・展開していくか、非常に楽しみです。

itelligence社の取り組みより — 社会課題の解決に向けたテクノロジーの活用(久松 正和)

 

まとめとして

Intelligent Enterpriseに至る業界別の具体的取り組み事例で、皆様の立ち位置と今後なすべきことがお分かりいただけたでしょうか。もちろん業界によって成熟度や難易度の違いはあるでしょう。しかし今やもうこの道のりを歩まない理由はないはずです。