真のパートナー関係を築くため顧客再定義に取り組む、アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ
作成者:前園 曙宏 投稿日:2019年10月24日
アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティの取り組み概要
アリアンツは、1890年にドイツで設立され世界70か国以上、8,600万人をこえるお客さまに生命保険、損害保険、資産運用の各分野で保険・金融サービスを提供しているドイツ国内では業界首位、世界でも有数の金融サービスグループです。今回はアリアンツ・グループの中で企業保険専門会社であるアリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルティ(Allianz Global Corporate&Specialty、以下AGCS)が取り組んでいる顧客再定義の取り組みをご紹介します。すでにマーケットリーダーであるAGCSは、真の顧客中心モデルを組織全体の活動に組み込むことでサービスレベルをさらに引き上げる戦略へとシフトしました。顧客がこれまで体験したことのないレベルのサービスと組み合わせ製品、サービスを提供するためには、顧客の声を幅広く聞き入れるためにあらゆるタッチポイントを単一に管理し、顧客のインサイトと不確実な将来行動予測までを一元的に扱えるエンタープライズ向けエクスペリエンス管理プラットフォームを探していました。
AGCSは将来ますます増えると想定されている不確実な顧客要望に備え、今後も収益性のある成長領域を確保できるよう戦略の中心に顧客体感価値をセットすることを決定しました。組織横断で主要な35人のビジネスリーダーでチームを結成し、顧客獲得から成長まで、年々加速するスケーラブルなカスタマーエクスペリエンスプログラムを設計しましたが、彼らにはビジョンを実現できるテクノロジーパートナーが必要でした。そこでAGCSが選択したのが世界初のエクスペリエンス管理プラットフォームであるQualtrics(クアルトリクス)でした。チームはこのプラットフォームを活用して常に変動する不確実な顧客動向を分析し、戦略を継続的に拡張する術を手に入れました。AGCSは、22カ国16の言語の顧客から体感価値データを収集するために、グローバルに一貫したプログラムを迅速に展開しました。現在は豊富なインサイト(洞察)情報を保有できるようになっています。場所や機能ごとにこれらの洞察を簡単にフィルタリングして優先順位を付けることができるので、管理者から現場の担当者までが次にどのタイミングでアクションを実行すべきかを正確に知ることができます。彼らの言葉で言えば、彼らは「グローバル視点で物事を捉え、現場毎に行動できるようになったのだ」と。AGCSはこのようにして、顧客と真のパートナーになることの意味を再定義し、顧客から先進的なビジネスパートナーと認識され継続的な忠誠心を獲得することに注力しているのです。
「私たちは顧客中心主義を実現しました。クアルトリクスは顧客ニーズを予測するのに役立ちます。それにより我が社は競合他社の前に立つことできます。」― グローバル・プラクティス・ディレクター|アリソン・ウィンドン
プロジェクト遂行結果
- 22カ国でエクスペリエンス管理のための単一システムを構築
- 顧客からのクレームをバックオフィスから、戦略的な顧客対応機能ポジションへと再配置
- 個々のお客様の反応に耳を傾け、日々困っていることは何かを常に把握し真摯にお客様のニーズに対処
- 顧客ニーズを予測する能力を高めることに成功
- 新たなリスクに対応する、これまでにない商品開発へのいち早い取り組み
- ヨーロッパでナンバーワンの保険プロバイダーのポジションをキープ
Why クアルトリクス
- 22カ国16言語をグローバル単一プラットフォームで対応
- チームのすべてのメンバーがリアルタイムに課題を把握し素早く顧客に対応可能
- 顧客を中心に置くという考えを組織全体に浸透させてくれるツール
- Think Globally, Act Locallyの実現
- 既存の営業システムとの連携(O-dataとX-Dataを単一プラットフォームで分析)
- 将来の商品開発やサービス改善に役立っています
- 提案から22カ国での稼働までおよそ2ヶ月半で展開(最適なプロジェクトパートナー)
※O-data(オー・データ)オペレーション・データ:ビジネスでいま何が起きているかを示します
※X-Data(エックス・データ)エクスペリエンス・データ:アンケートやインタビューなどから把握できる。人の体験や想いに基づき、顧客のニーズを予測することが出来ます
AGCSが目指すB2Bカスタマーエクスペリエンスの新たなモデル〜インスピレーションは現場スタッフから
さらにAGCSでは、顧客と接する現場営業やコールセンターのスタッフなどの日々の活動を正しく認識することができないと、本社本部管理者などからは現場で実際に起きている事象を正しく把握し、即座に対応することは難しいと常に考えていました。事実、現場では不満を抱いている顧客へ対応するスタッフが大変苦労しているシーンがありました。本社からは、顧客中心ミッションステートメントを提供するのはシンプルですが、顧客と直接やり取りをするスタッフの日々の現実を認識していなければ、良くない事態の解決時などにタイムラグが発生し、時間と共に事態は悪化し、企業としての信頼などを取り戻すには想定以上のコストや時間を要してしまうのも事実なのですから。
AGCSの本社チームは、顧客のタッチポイントに可能な限り多く触れる必要性をますます感じています。B2BカスタマーエクスペリエンスはB2Cに僅かに遅れをとっているが、追いついていると考えていますし、ここ数年多くのB2B業界ではデジタル化とセルフサービス・チャネルが急速に増加していますから。企業向け保険業界ではエクスペリエンス採用が遅れていましたが、ここ数年で大きく変化しました。企業向け保険会社に対する顧客の期待も高まり、より良いエクスペリエンスを提供するプロバイダーを選択する可能性が高いことも明確になってきました。それでも彼らは、まだやることが沢山あると言います。今後数年間で、すべての法人顧客の360ビューを作成し、顧客に関する運用データ(オペレーション・データ)と体感価値データ(エクスペリエンス・データ)を組み合わせることはさらに重要になり、もはや必須なものになると考えているようです。そのため、企業保険の法人顧客におけるジャーニーマッピングにも着手し、顧客タッチポイントからニーズを理解する必要性をますます感じています。ただ、法人顧客におけるタッチポイントの数は多く、顧客を過剰に調査する恐れがあることも事実です。そこで、顧客を最もよく知っている現場スタッフからフィードバックと顧客の体験を結びつけ始めています。スタッフへの定期的なパルスチェックを試験的に実施。そのパイロット中に顧客とのやり取りにおいて改善する方法について素晴らしいアイデアを発見しました。今後は、EX(従業員体験)データとCX(顧客体験)データを結合し、仕事に対し満足度の高い幸せなスタッフがより高い顧客体験作りにつながるケース作りに取り組んでいます。 結果的に、顧客が知ることができない内部プロセスを改善することにより、実際の顧客体験がより改善されることを目指されています。もちろん、さまざまな地域や文化に合わせてサービスを微調整する方法の精度向上に向けては、各地域の同僚と多くのコミュニケーションにも時間を費やされています。
クアルトリクスを採用した保険会社で実際に起きていた事象
【事例1】
- 契約更新率が低下
- 契約解約率が増加
- 複数契約を持つ顧客が減少
- 新規顧客獲得数が減少
【事例2】
- オンラインでの成約率が低下
- 複数契約をもつ顧客割合が減少
- 新規顧客獲得数が減少
【事例3】
- 代理店を通じた契約数が減少
- 契約更新率が低下
- 複数契約をもつ顧客割合が減少
上記1〜3の各保険会社とも、上記指標はオペレーション・データから抽出されるダッシュボード等で「問題がある」という結果しか認識できていませんでした。さらに、事象の要因分析には“複雑且つ多くの人的労力を要する作業”が必要となっていたので即時に対応策を取ることが難しい状況でした。そこで、実際に“なぜ”その事象が発生したのかを理解するために、XM(体感価値マネジメント)データの活用に踏み切りました。その結果、時々の顧客フィードバック(NPS等一般的指標からテキストまで幅広い形式で収集)をリアルタイムに得ることができるようになり、顧客の感情およびセンティメントを把握することが容易に可能になりました。今ではO(オペレーション)データとX(体感価値)データを組み合わせることによって、各保険会社にて有益な顧客洞察力随時取得することができるようになり、それぞれの改善ポイントを把握することができ、即座に改善に向けた具体的な行動を起こすことができるようになりました。
最後に “フィデューシャリー・デューティー”にも役に立つ体感価値マネージメントソリューション
平成29年に金融庁から提言された「顧客本位の業務運営に関する原則」により、フィデューシャリー・デューティーの重要度がますます増しています。フィデューシャリー・デューティーへの取組みは、方針公表・取組み状況の公開だけでなく定期的な見直しが求められています。そこで重要となるのがお客様からの生の声(評価)をより広範からタイムリーかつ的確に捉える仕組み作りが重要になることでしょう。
今回紹介したAGCSでは、まさに「お客様の声を聞いて絶えず対話をすることはとても重要です。つまり体感価値が全てだということです。組織全体が何をして行けば良いのかどこへ向かって行けば良いのかなど、顧客体感価値から導き出すことが重要なのです。」と考えています。これらの取り組みは、決して規制のためや単なるNPS(指標)のためではなく、顧客と金融機関の両者にとって”ビジネスの未来を握る鍵”がそこにあると理解しているからこそ、全社組織としての取り組みに挑んでいるのです。
残念ながら、今日時点ではまだ多くの国内金融機関において、営業店/営業職員/代理店/コールセンター/インターネット/スマートフォン/ソーシャルなどの顧客に応じた的確なタッチポイント経由で、かつ適切なタイミングにてお客様の声を全社組織的に一元的に収集、分析、洞察、行動(現場からマネージメントまで同じ体感価値データを活用)を行う仕組みを整えているケースは少ないと思われます。しかし今後、国内金融機関でも、単に規制対応のための一過性かつ定点的観測的な市場評価収集などに留まらず、本来あるべき金融機関の姿として常に多くの顧客の声に耳を傾け、未来の顧客ニーズにも適切に応えて行く”真の金融パートナー”を目指される際に、今回ご紹介したAGCS社におけるSAP顧客体感マネージメントソリューション事例も参考にしていただければと思います。
※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、アリアンツ・グローバル・コーポレート・アンド・スペシャルテ社のレビューを受けたものではありません。
出典:
Qualtrics helps us achieve true customer centricity every day.
Why Allianz Global Corporate & Specialty looks to employees for CX inspiration