優れたB2Bスタートアップを支援するSAP.iO Foundry Tokyoが示す新たなビジネスの可能性~第1回コホートプログラムDemoDayレポート~


2019年10月30日、スタートアップ向けの支援を行うプログラム「SAP.iO Foundry Tokyo」における「第1回コホートプログラム」のDemoDay(成果発表会)を大手町のSAP Leonard Experience Centerで開催しました。約3ヶ月間の集中プログラムに参加し、SAPと共同提案などの活動を行った4社による成果発表をレポートします。

目次

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SAP.iO Foundry Tokyoがもたらす3つのインパクト

SAP.iO Foundryは、優れたB2Bテクノロジースタートアップを支援するプログラムです。DemoDay冒頭、SAP.iO FoundryのAPJ/Chinaのバイスプレジデントを務めるLalitha Bhaskaraは、プログラムの狙いはスタートアップを支援できるエコシステムの構築にあると説明し、期待する3つのインパクトを挙げました。
「第一は、参加スタートアップがSAPのお客様とPoC(Proof of Concept)を実施し、お客様のビジネスに何らかのインパクトをもたらすことです。第二に、世界中のSAPスタッフがサポートするメンタリングを通じて、スタートアップ自体の成果を実現することです。そして第三に、それらによりSAPのビジネスインパクトにつなげることです。今回、東京のプロジェクトに参加された4社すべてのサービスが近日中に完成予定であり、SAP App Centerでのサービス提供を目指しています」

次に、SAP APJのプレジデントのScott Russellが、イノベーションのエコシステムがもたらす重要性を次のように説明しました。
「SAP単体で、すべての顧客のニーズを叶えるテクノロジーやソリューションを提供することは容易ではありません。しかし、お客様の期待値は高く、競合に勝ち抜くためよりアジャイルなソリューションが求められています。そこでスタートアップとSAPが組むことで新たなソリューションを生み出し、お客様のビジネスやオペレーションにイノベーションをもたらすことができます」
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12週間のプログラムの全容

今回は53社のスタートアップ企業から応募がありました。厳正な審査によって選考された4社が2019年7月16日から12週間のプログラムに参加し、メンターによる共同営業の推進、SAPテクノロジーやデータの連携、事業戦略の構築などの支援を受けました。

支援は2つのメンタリングから始まります。「Go-To-Market & セールスメンタリング」では、B2Bビジネスへの理解促進、販売ノウハウなどがワークショップ形式で伝えられます。例えば、どうすれば商品価値に見合った価格設定ができるのかなど、SAPならではのノウハウが満載です。また、「テクニカルメンタリング」ではSAP製品群とスタートアップ製品をAPIで連携させるテクニカルな話から、サポートデスクやメンテナンスへのニーズが強い大企業への対応の仕方まで幅広い内容が伝えられます。

スタートアップとメンターのミーティングは100回近くにおよび、週1~2回のワークショップは計21回開催されました。メンタリングで土台を作った上でSAPジャパンとスタートアップ各社が一緒に顧客訪問してサービスを提案。顧客訪問件数は36社、案件発生は16件に上り、2件のPoC実施が決定しました。さらに4社のうち3社でSAP製品とのインテグレーションを目指す取り組みが継続しています。
続いて、各社代表による最終成果の発表が行われました。

ZENKIGEN:AIを活用したオンライン面接ツール

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株式会社ZENKIGENは、東京大学と共同開発した面接解析 AI を用いて「最高の候補者体験」を実現する採用サポートサービスを提供するスタートアップで、企業の採用力を強化するWEB面接/動画面接プラットフォーム「HARUTAKA」を運営しています。候補者の面接体験によって企業の印象は大きく変わるため、同社では面接の効率化から、面接の質を変えていくことに取り組んでいます。

今回のプログラムを通じて、候補者と面接官の面接体験を改善する「ZIGAN」を開発しました。AIを活用してコミュニケーションの93%を占める非言語領域を数値化し、解析結果をフィードバックすることで面接官をサポートするサービスです。面接官がうまくリードして候補者の可能性を引き出せるよう、フィードバックを元に面接官の成長を促す仕組みです。
「ZIGANの活用により、誰もが最高の候補者体験を提供できるようになります。これから、企業へ積極的に提案していきます」と、同社代表取締役の野澤氏は今後のビジョンを示しました。

FUZED:マスパーソナライズへの移行をテクノロジーで支援

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ロンドンに本拠地を置くFUZEDは、SNSのトラフィック管理に特化したサービスを提供しています。同社の共同創業者でCEOの小野力氏は「コンテンツ配信におけるOne to Oneマーケティングのニーズは大きいが、セグメント分けやターゲティングができていない企業が多い」と現状を分析します。通常、SNS発信が単一の外部誘導に限られていたものが、FUZEDのテクノロジーにより、ユーザーの属性や嗜好に合わせてダイナミックに適切なリンク先へ誘導し、コンテンツの見せ方を最適化できます。

今回のプログラムを通じて小野氏は、日本市場におけるエンタープライズセールスを学習するとともに、自社のプライシングを確立できたと語ります。SAPと一緒に6社を訪問し、1社とのPoC実施も決定。PoCではメーカーの公式LINEアカウントに登録しているユーザーを対象に、FUZEDのコンテンツ行動分析とQualtricsのアンケート調査の結果を連携させ、顧客セグメントを深く理解していく仕掛けを作ります。

estie:不動産テックで東京のオフィス需要を可視化

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事業用不動産の情報プラットフォームを展開する株式会社estieは、世界一オフィスフロアが密集した東京に注目し、AIが理想のオフィス探しをサポートするサービス「estie」と機関投資家の投資/運用業務を高度化するAIアナリティクスサービス「estie pro」を提供しています。

同社Business Development VPの田中氏は、「今回のプログラムを通じて5社への訪問が実現しました」と語ります。得られた成果については、estieの持っている物件情報を可視化する技術や機械学習による分析技術、データを収集して構造化する技術などを用いて新しい可能性を模索しており、PoCに向けて話が進んでいるといいます。また、資産管理ソフトウェアのSAP Cloud for Real EstateとestieのAPI連携によるデータの可視化も実現しています。

イノービア:製造業の作業員スキルをSaaSで管理

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株式会社イノービアは、製造業向けに工場で作業する作業員のスキルを効果的に管理するSaaSサービス「SKILL NOTE」を提供しています。作業員のスキル管理は多くの製造業にとって必須であり、特に品質管理の面でニーズが高いソリューションといえます。

SKILL NOTEとSAPソリューションとの連携をベースに、イノービアとSAPは6社の企業を訪問しました。そのうち1社と実施したPoCではSAP SuccessFactorsとの連携の有効性が評価され、現在は採用の可否の最終プロセスに入っています。また、もう1社からは、SKILL NOTEとSAP製造モジュールを連携させる仕組みで評価を受け、トライアルの評価段階にあります。

同社 代表取締役の山川氏は今後、「SAPとの連携ソリューションを日本市場でモデル化し、グローバル市場へ展開させたい」とビジョンを語っています。

参加企業によるパネルディスカッション

パネルディスカッションは、アクセラレータープログラムのイベント支援事業を展開するeiicon companyの代表を務める中村氏がモデレーターを務めました。
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スタートアップの課題の1つに「商品の有効性について仮説検証を単独で行わなくてはならないこと」があるといいます。イノービアの山川氏はその点について、「SAPのメンターとディスカッションし、グローバル企業を訪問させていただいたおかげで『自分たちの製品はグローバルでも勝負できそうだ』と自信を深めることができた」と、プログラムを通じて意識が変わったと語ります。FUZEDの小野氏は、「当社は若いメンバーが多く、日本のエンタープライズセールスのプロセスを知りませんでした。プログラムでそれらのノウハウを学び、自分たちを成長させることができました」と、日本でもUKでも参考になる学びがあったことを挙げました。

次に中村氏は「最もプログラムの価値を感じたこと」について聞きました。ZENKIGENの野澤氏は、「世界的なエンタープライズ企業のSAPが持つノウハウが惜しみなく提供され、毎回のセッションが充実していた。特に、商品の価格設定や営業プロセスについてのノウハウは学びが多かった」と振り返りました。また、estieの田中氏は、「訪問したいずれの企業もSAPジャパンと以前から関係が構築されていたので、自社単独ではなかなか会えないハイレベルの方にお会いできました」と語っています。

SAP.iO FoundryはSAPソリューションとの連携も重要な目的です。SAP製品と自社製品を連携させる取り組みについてイノービアの山川氏は「実際の商談の中に当社商品を組み込んでもらったことで、忌憚ない評価をお客様から得ることができました」と、プログラムがいかに実践的であったかを紹介しました。

総評と次回のSAP.iO Foundry Tokyo

最後にSAPジャパン社長の福田が、SAP.iO Foundry Tokyoへの期待を語りました。「スタートアップがいい製品を持っていても、大企業とのコネクション作りは困難です。SAPのお客様の多くは大企業なので、その資産をスタートアップの目的実現に向けて最大限活用いただきたい。皆さんの成功がSAPの成功にもつながります」

次回のコホートプログラムは、より広範囲なビジネスプロセスにおけるイノベーションの実現を目指し、テーマは「Industry.4.0」を予定しています。2019年11月から募集を始め、2020年3月よりプログラムを開始予定です。

◆詳細は下記ページをご参照ください。
SAPジャパン、スタートアップ向けプログラム「SAP.iO Foundry Tokyo」 2020年度上期コホートプログラムで支援するスタートアップの募集を開始

写真提供: ©️eiicon