エクスペリエンスの表現手法について – イノベーションの姿を可視化する方法の話


デザインシンキング、デザイン思考という言葉は世間にもかなり浸透してきたようで、何らかの形で接したことがあるという方も多いかと思います。
私も先日書店でデザインシンキングをテーマにしたコーナーができているのを見かけましたし、デザインシンキングのワークショップに参加したことがあったり、既に日々の仕事の一部として取り込んでいるというような方もいらっしゃるでしょう。

SAPも多くのお客様と様々なテーマでワークショップを開催しています。
そこでは参加者の中から色々なアイデアが飛び出してきますが、ワークショップ後半ではそれらのアイデアが対象者(ペルソナ)にとってどのような影響を与えることになるのか、その新しい体験を何らかの手法を使って表現してもらう場面があります。
“プロトタイピング” と呼んだりもしますが、このアイデアを素早く形にすること、そしてフィードバックを得てアイデアを練り上げていく反復性は、デザインシンキングのマインドセットの中でも重要なポイントです。私の所属するイノベーションオフィスも、デザインシンキングワークショップの主催からプロトタイピングまで、新しいアイデアを創出し可視化していく一連の活動を通じてお客様をご支援しています。
今回はこのアイデアを形にする手法と形作られていく道筋について、SAPが提供しているツールの情報なども交えていくつかご紹介していきたいと思います。


まず最初は ストーリーボード です。
ペルソナが抱えている課題や創出された解決策の内容、そしてそれらによってペルソナがどのような新しい (改善された) 体験を得ることになるのか、一連の流れをスケッチやテキストを使ってストーリー仕立てで表現するものです。
展開を伴うストーリーとして表現されるので、アイデアが登場してくる場面設定や各場面の中で訴求される価値の具体的な姿を理解しやすいのが特長です。
SAPではこのストーリーボードの作成をサポートするツールとして、”SAP Scenes” を提供しています。

Scenesはストーリーボードを構成する場所や登場人物、道具などを表現するためのイラスト集で、これらを組み合わせて1つの場面を表現することができるようになっています。
例えばスーパーマーケットの売場やオフィス空間といった背景として使用するイラストの上に、登場人物や道具類、吹き出し等でテキストなども付け加えることで1つの場面設定を表現します。
Scenesは下記リンク先からファイルをダウンロードして利用できます。
SAP Scenes

また、イラストやテキストではなく身体を使って表現する方法もあります。
いわゆる寸劇です。
ストーリーボードと同様にペルソナの体験を一連の流れで表現できますが、視覚と聴覚の両方に訴えるものになるので見ている人の印象にも強く残ります。

他にもマガジンカバーといって、創出されたアイデアが架空の雑誌の表紙を飾る想定でイラストやキャッチコピーを1枚の表紙の中にまとめるという形で表現するものもあります。
限られたスペースの中で重要な情報に絞り込んで表現しなければならないので、主要な価値がどこにあるのか一目で伝わるようにするための工夫が必要となります。

 

ここまでは主にペルソナの一連の体験全体を対象に表現するものでしたが、製品やサービスの個々の姿についてはまた別の形で表現します。

例えば模型
身近にある材料やおもちゃのブロックなどを組み合わせて触れる形で表現することで、使い勝手などの確認を行っていきます。

また、実現手段がITシステムによるものである場合、アプリケーションの画面構成や画面遷移を示すワイヤーフレームを作成することで、どのような場面でこのシステムを使うことになるのか、各場面でどのような機能が必要になるのかを画面構成を参照しながら確認することができます。

wireframe

また、このような紙に描いたワイヤーフレームから一歩進んでアプリケーションプロトタイプを作成することで、より具体的なシステム利用イメージを共有しやすくなります。
世の中にはアプリケーションのプロトタイピングツールが多数提供されていますのでそれらを活用すると便利です。
SAPからも “SAP Build” というツールが提供されています。
https://www.build.me/

SAP Buildでは、先ほどのように紙に描いたワイヤーフレームの画像を取り込んで画面遷移を指定するところからアプリケーションプロトタイプを作り始めることができます。
また、ユーザーからのフィードバックを収集するための機能も含まれており、一連の改良プロセスを回すための環境が提供されます。
さらにアプリケーションのUI部品を組み合わせてより完成度の高いプロトタイプを作成するエディタ機能なども備わっており、紙のワイヤーフレーム記述を出発点とした一連のプロトタイプ作成をスムーズに進めていくことができるようになっています。
SAP Buildの機能についてはこちらの記事もご参照ください。

 

以上、ペルソナの新しい体験ストーリーからアプリケーションの画面レイアウトまで、アイデアを形にするプロトタイピングの手法についていくつかご紹介してきました。
実際の活用場面が見えた方がイメージしやすいかと思いますので、これらが登場する事例の動画をいくつかご紹介しておきます。

 

最後に、これらを包括したペルソナの新しい体験全体を表現する形の一つとして、SAP Experience Center Tokyoに設置されている Immersive Experience Room のご紹介をします。
SAP Exprerience Center Tokyoの概要についてはこちら

SAP Experience Center Tokyoにはデザインシンキングのワークショップを行う設備と合わせて、そこで創出された新しい体験を表現するための施設 Immersive Experience Room が備えられています。
このImmersive Experience Roomは、ルーム内の360度全周を囲むスクリーンと、そこに投影されるエクスペリエンス表現を支える様々な操作機能を集約したプレゼンテーション施設です。
360度スクリーン上に様々な映像を投影し、プレゼンターと参加者が同じ空間を共有しながらペルソナの新しいエクスペリエンスを追体験する形で変革後の新しい姿を全員で体感していきます。


以上、アイデアや体験を形にして可視化する様々な表現方法についてご紹介してきました。
こうして並べてみることで、それぞれ焦点の当たるポイントに違いがあることが見えてきたかと思います。

重要なのは何か1つの手法に絞ろうとするのではなく組み合わせを工夫すること、そしてユーザーからのフィードバックを継続的に取り入れていくことです。
ある表現手法が適していないケースもあり得ますし、別の表現方法を加えてみることでユーザーにとってもっと発見の多いものに変化するかもしれません。

ぜひ今後の活動計画の中にデザインシンキングとプロトタイピングを取り入れることも検討してみてください。