イノベーションカルチャーを広げるための社内アンバサダープログラム- Design It Yourself(DIY) Program
作成者:竹内 登桃子 投稿日:2020年2月3日
デザインシンキングを『学ぶ・知る』フェーズから『実践する』フェーズへ。
SAPジャパンでは2013年ごろからデザインシンキングを社内で展開し、顧客企業への活用を支援してきました。現在に至っては、社内でデザインシンキングが共通言語として認識され、ワークショップ参加経験者も増えていましたが、推進や実行は一部のスペシャリストに限られていました。
そこで、ワークショップのファシリテーションや、その後の推進も含めて『活用できる』状態にするべく社長をはじめとしたエグゼクティブからの支援も得て、2019年より社内のデザインシンキング活用の活発化を目的としたDIY(Design It Yourself)プログラムが始まりました。
このプログラムはデザインシンキングを社内で活用したいという要望と、社内のデザインシンキングコーチをマッチングさせ、さまざまな課題を効果的に解決するお手伝いをするものです。
中でも、REN(Revolution Enablers’ Network Program)はSAPジャパン社内でイノベーション推進者となり、様々なイノベーションの火付け役を担います。RENのメンバーは4-5人で構成され、3ヶ月の任期の間、DIYプログラムのサポート、や社内デザインシンキングコーチ育成のサポート、
新しい視点を提供するMeet Upの企画運営などを行っています。私は実際に、このRENの3期目のメンバーとして総勢5名のメンバーで2019年10月から12月までの3か月の間活動を推進しました。
RENのメンバーは本来の業務を遂行しながら、自身のマネージャーの承諾の元、業務後や業務の一部の時間を割いて活動していくため、社長の福田を中心にエグゼクティブメンバーが企業のイノベーションカルチャー促進を図り、上司がこの活動を理解してくれる風土が整っていたからこそ、
実現できる活動でした。中には『自己啓発休暇』を活用して取得して、こういった活動に従事しているメンバーもいました。実際には後述のような活動を推進していきました。
社内でデザインシンキング活用機会を広げるEnablementやCSR活動支援
RENの主たる活動がこの社内でのデザインシンキングワークショップの実施や運営のサポートです。具体的には、組織のビジョン策定、営業活動改善、会社のオフィスファシリティー向上プロジェクト等といった幅広いテーマで実施しています。また、CSR活動の一環として地域都市や都内の学校とコラボレーションしデザインシンキングワークショップ実施するなど、社内外でのイノベーション関連活動にも貢献してきました。
これまでSAP社内では、『デザインシンキングは知っているが、自主的に使う機会はあまりない。どうやって活用すればいいか分からない』といった声が多くありました。特定のスペシャリストにデザインシンキングの活用や依頼が集中しており、社内のニーズを拾い、実践しきれていなかった背景から、RENの窓口を作ることで、活用のニーズと実践したいメンバーをマッチングさせ、より広くデザインシンキングが活用できるように仕組化しています。
社内でのデザインシンキングに対する知識と行動のギャップを埋めるためにも、エグゼクティブだけでなく現場のメンバーが、自身の業務に実際に取り入れる機会を作り、有用性を体感してもらうことで啓蒙を図っています。
実際に営業活動の改善のワークショップをした際に、『フレームワークを使って頭が整理され、自分のするべきことが明確になった』との感想をいただきました。従業員自身が身近に感じられるテーマで効果を感じることで、デザインシンキングが単純に知られている段階から、知識と行動のギャップを埋め、会社組織として文化に根付かせる段階へ徐々に移行していくのではないかと思います。
気軽なナレッジシェアですそ野を広げる”おやつタイム勉強会”
毎週金曜日30分だけ社内のカフェスペースでお菓子を用意して、簡単な勉強会を開いていました。デザインシンキングに触れる社員のすそ野を広げるのが目的です。
参加者側も事前登録不要、オープンスペースに気軽に立ち寄ってもらえる場にしたことで、1Dayワークショップに参加するのは物理的にも心理的にもハードルが高いと感じていたような新しく入社したばかりの方、外国籍の方等のご参加も多くありました。
クイックプロトタイプや、マインドセットゲーム、などゲーム性を持たせながら体感できるトレーニングはどれも楽しく、初めてあう社員同士でも盛り上がり、『業務に疲れた時の頭のリフレッシュにちょうどいいなと思って』と定期的に来てくださる方も。
従来勉強会をやろうとすると主催する側が十分な準備をして数時間や一日時間をとって臨むことも多いですが、自分の知っていることを30分だけ気軽に共有する場だったため、主催者側としての負担も少なく継続しやすい取り組みでした。『何をシェアしよう?』と意識するようになると、自分の情報収集のアンテナ感度も高くなるので、継続的にアウトプットの場を持つことの意義を感じています。
ノベルティ作成 ―カタチにすることのパワー
RENの活動予算を使って、ステッカーやTシャツを作らせてもらいました。REN各代それぞれの個性を発揮して、独自にデザインし、発注しています。用途は様々ですが、社長の福田がPCに貼ったところ(写真参照)、お客様から『それ何のステッカーですか?』と聞かれ、社内でやっているイノベーション促進のための本プログラムの話題になったとか。
学生時代の部活のような気分を味わいながら、わいわい制作する過程は楽しく、
社内でも『なんだか楽しそうなことやってるね、何してるの?』とお声がけいただきました。意外な宣伝効果があることに驚くと同時に、小さなものでも”カタチ”にすることのパワーを実感します。
『じゃあコレちょっとやってみよう』が実現できる仲間と、小さくはじめて大きく育てる
上記で記載していた以外にも、外部の様々な分野の方をお呼びした社内Meet Upの開催やDIYメンバークローズドな同窓会やナレッジシェアの場を開催していました。今でも提案や疑問があった際にはSlackなどで連絡を取り合い、常に前向きに反応し支援してくれる同士がいる安心感は大きく、プログラムの任期や所属部署を超えたネットワークが出来ています。
RENの経験を通じて感じたことは、自主的に行動を起こす心理的ハードルが下がったという点です。実践を積み重ねながら小さい成功体験を経ることが自信につながり、以前よりも実行にうつすフットワークが軽くなったような感覚があります。本来の業務と並行しながらRENの活動を実施するのは大変な時もありましたが、社内でデザインシンキングを活用し、実際に社内のメンバーから良いフィードバックをもらえた経験や業務外でつながれる仲間が出来たことで、何かを始める際の自信やモチベーションにつながっています。
SAPジャパンのイノベーションカルチャー促進はもちろんまだ道半ばではありますが、
特別新しいことをやろうと気構えて足踏みするよりも、小さく出来ることを継続していくうちに
大きな波が起きていくものかもしれない、と予感しています。