Fit to Standardの徹底と独自のデータ移行で SAP S/4HANA Cloud をわずか6カ月間で 国内本社に導入したNTTアドバンステクノロジ


NTTグループの技術系中核企業として、NTT研究所のネットワーク技術、セキュリティ技術、クラウド技術、日本語処理技術、環境技術、ナノ部品技術などの多彩な先端技術のみならず、国内国外の先端技術を広く取り入れ、それらを融合して顧客の課題を解決し、顧客にとっての価値を提供するNTTアドバンステクノロジ株式会社(以下、NTT-AT)。同社は2019年4月、約20年にわたって運用してきたSAP ERP(ECC 6.0)を、SAP S/4HANA Cloudに全面移行しました。本ブログでは、国内では初となるSAP S/4HANA Cloudの複数モジュールを本社業務向けに導入した本プロジェクトについて、わずか6カ月での短期導入に成功したポイントなどをお伝えしたいと思います。今後、SAP S/4HANAへの移行を目指す多くの企業にとって、同社の取り組みは貴重な先行モデルとなるはずです。

動画:NTTアドバンステクノロジ株式会社 – DXを支える新たな成長基盤をわずか6か月で全面移行

DX推進の足かせとなる 約800本のアドオンが課題に

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NTTアドバンステクノロジ株式会社 ソリューション事業本部 DX事業企画室 室長 都筑 純 氏

「未来を拓くチカラと技術」をコーポレートミッションに、AIやクラウド、IoTなどの最先端技術からハードウェア/ソフトウェア、情報通信システムまで、さまざまな領域にわたる製品やサービスを提供するNTT-AT。同社が約20年間にわたって運用してきたSAP ERP(ECC 6.0)の全面的なクラウド移行を決断した背景について、その最大の目的は全社におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に向けた基盤づくりだったと明かすのは、ソリューション事業本部 DX事業企画室の室長を務める都筑純氏です。
「当社では直近の中期事業計画においても、お客様のDXに貢献していくためには、自らのDXの実践が不可欠であるという理念が掲げられています。そのためには、旧態依然とした業務プロセスやシステムの刷新が不可欠であることは言うまでもなく、『2025年の崖問題』への対応も含め、できるだけ早期にDXの基盤づくりに着手すべきという方針が経営からも示されていました」

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NTTアドバンステクノロジ株式会社 財務部 担当課長 齋藤 牧子 氏

しかし、同社が長年にわたって運用してきた基幹システムにはさまざまな課題があり、中でも真っ先に挙げられるのが800本近くにも上るアドオンの存在でした。この点について、財務部 担当課長の齋藤牧子氏は次のように話します。

「SAPを導入した当初からユーザーの使い勝手を重視してカスタマイズを重ねてきた結果なのですが、法制度などが目まぐるしく変わる中で、これらを維持するための人手も限界に達していました」こうしたことから、新たなDX基盤を考える上で着目したのが、クラウドとFit to Standardでした。「オンプレミスにはないスピード感を備えたクラウドをいかにして活用し、また標準機能を最大限に活かすFit to Standardのマインドをどれだけ組織に浸透させることができるかを、重要なテーマと位置付けました」(齋藤氏)

Fit to Standard の視点から SAP S/4HANA Cloud を採用

基幹システム移行において最大の難関となったのは、わずか6カ月という限られた移行期間でした。これは「クラウドをベースに最先端のサービスを活用したシステム改革を通じて、DX推進の体制づくりを最速で進める」という経営判断による、最優先かつ必達の要件です。都筑氏は、このことが最終的にSAP S/4HANA Cloudを選択する大きな決め手となったと指摘します。

「複数の候補を比較検討しましたが、開発の自由度の高いオンプレミス型やシングルテナント型では、アドオンに依存している現状を打破することはできません。このプロジェクトは将来のDX推進に向けたチャレンジであり、短期導入を念頭に、Fit to Standardの手法で既存業務を見直していく方向で議論を重ねていった結果、マルチテナント型のSAP S/4HANA Cloudが最適という判断に至りました」(都筑氏)

こうした基本方針の決定を受けて、NTT-ATでは社内の業務部門や関連する事業本部からメンバーを選出、2018年10月からプロジェクトをスタートしました。齋藤氏は「社内にはもともと業務単位でシステムの主管組織がありましたが、今回はすべての基幹システムが移行対象となるため、各主管が一堂に会したチームで課題解決に臨んでいく必要がありました」と説明します。

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株式会社シグマクシス ディレクター 慶山 順一 氏

また、プロジェクト全体を支援する導入パートナーには、コンサルティング会社の株式会社シグマクシスを選定。ここでは同社が強みとする「Fit to Standardの手法を活用した業務プロセス改革とチェンジマネジメントに関する豊富な知見」「顧客密着型の柔軟なプロジェクト・マネジメント体制」といった点を高く評価したといいます。

シグマクシスからプロジェクトに参画した同社のディレクターである慶山順一氏は、「アドオンが使えないSAP S/4HANA Cloudへの移行が決定して最初に実施したのは、ユーザーの現行業務をどのようにクラウドサービスが備える標準プロセスにフィットさせていくかのアセスメントでした。また、短い工期の中で次々と迫ってくるテストや移行作業にも、絶えず対応していかなくてはなりません。当社のプロジェクト管理のノウハウをフル稼動して、工程の進捗に負けないスピードで必要な判断を下せるように、お客様の意思決定をご支援していきました」と話します。

RPAも活用した3社のチームワークで わずか6カ月の短期導入を実現

都筑氏は今回のプロジェクトを成功に導いた技術的な要因は、大きく「データ移行・システム切替」と「システム間連携」の2つにあったと話します。

「一般的なシステムの移行でも、この2つの工程は想定外の事態が生じやすい部分です。それだけに6カ月という過去に例のない短期間での稼動を実現できたのは、この2つをほぼ100点満点でクリアできたからに他なりません」と喜びを語ります。

まず、既存の基幹システムに蓄積されたデータ移行・システム切替を支えたのは、「SAPの標準ツールとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の組み合わせ」という画期的なアイデアでした。SAP S/4HANA Cloudへの移行では、通常であればSAPの標準ツール「移行コックピット」を利用することで、スムーズなデータ移行が行えます。しかし、今回は800本近くのアドオンの影響によって、そのまま移行できないデータ項目が多数あることが明らかになりました。

「手作業で再入力する方法もあったのですが、これでは6カ月の移行期間にとても間に合いません。そこで当社のRPAツール『WinActor』をSAPの標準ツールと組み合わせた結果、人手なら2カ月はかかる作業がわずか4日で完了し、しかも完全なデータ移行を実現することができました。プロジェクトメンバーも驚いたこの成果は、今後さまざまなシステム移行プロジェクトに応用が可能なショーケースになると考えています」(都筑氏)

もう1つの「システム間連携」においても、PaaSとして提供されるSAP Cloud PlatformとRPAツール『WinActor』の組み合わせが大きな役割を果たしました。NTT-ATは連結決算などでNTTグループ本体とのデータ連携が多く発生します。このような重要なシステム間連携のインターフェース開発はSAP Cloud Platformで、その他のシステム間連携は『WinActor』でといった使い分けにより、短期間でスムーズかつ高度な連携を実現しました。

また、都筑氏はNTT-AT、シグマクシス、そしてSAPの3社が一体となったチームワークがなければ、今回のプロジェクトの成功は考えられなかった点も高く評価しています。厳しいスケジュールでの導入を振り返って、都筑氏は「SAPによって練り上げられた導入フレームワークは、さすがだと感心しました。また、当初はSAP S/4HANA Cloudが日本企業に必須の機能を十分にサポートできていなかったことから、いくつかの課題はSAPジャパンとSAPグローバルの技術陣と折衝しながら解決していきました」と話します。

また、シグマクシスの慶山氏は「本番稼働直前はSAPグローバルも24時間体制で、問題が見つかると適宜パッチをリリースするなどの支援をしてくれました。まさに3社がワンチームとなって成し遂げたのが今回のプロジェクトだと思います」と振り返ります。

こうした奮闘の甲斐もあり、2019年4月、予定通り新たな基幹システムが無事に稼動を迎えることができました。

四半期ごとの新機能と活用の拡がりに期待

SAP S/4HANA Cloudへの移行から間もなく1年を迎える現在、都筑氏は「個々の業務における成果についてはこれからの段階ですが、従来のアドオン環境から脱却し、Fit to Standardのマインドを醸成していくことで、DXの入口に立つことはできたと考えています」と手応えを語ります。

一方でユーザーの視点から、齋藤氏はSAP S/4HANA Cloudにワークスタイル変革のインフラとしての価値を見いだしているといいます。「これまではデータを1つ確認するだけでもオフィスに出勤する必要がありましたが、自宅からでもアクセスできるクラウドにこうした制約はありません。実際、先日の台風で電車が止まった際に、自宅から作業ができたのは画期的な変化でした」

今後のSAP S/4HANA Cloudの活用に向けて、NTT-ATでは四半期ごとに提供されるバージョンアップにも大きな期待を寄せています。都筑氏は「ここで追加される新機能を適宜取り込んでいくことで、今後いろいろな可能性が生まれていくのを楽しみにしています。とはいえ、私たちにとっては初めて迎える2020年4月の年度決算を問題なく乗り切るのが、当面のもっとも大きな課題です」と意気込みを語ります。

今回のプロジェクトを改めて振り返り、「率直なところ、今回は多くの人の支援にも恵まれて、とても幸運な面がありました。今後もこのチームワークで、社内DX推進に留まらず、「自らのDXをお客様へ」という大きなテーマに向けてチャレンジを続けていきたいと思っています」と語る都筑氏。NTT-ATのチャレンジに、これからも大いに注目です。

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