アナログ・人海戦術からの脱却!組立製造業がデジタルを武器に次のステージへ進むためには?


組立製造業においてもお客様の要求が日増しに個別化し続け、その多様な要求にタイムリーに応えていくことが求められる時代に突入しています。その一方、人手不足でお客様ニーズに答えることが難しい局面になってきたのではないでしょうか?アナログオペレーション、マンパワーに頼るオペレーションから脱却し、デジタルパワーをうまく活用することで、効率化のみならず新たなサービスやビジネスモデルが期待できます。そこで今回は、2020年2月5日に東京・大手町のSAP Experience Center Tokyoで行われた、「SAP Industry セミナー」の内容をご紹介します。

この日はSAPドイツ本社から自動車産業&産業機械担当のGeorg Kubeと、SAPアメリカ シリコンバレーでハイテク産業を担当するKay Werner、そして日本のものづくりを支えるプロツールカンパニーであるトラスコ中山株式会社のCIO数見様が登壇。国内外のものづくり関連の先端事例を紹介すると共に、日本のものづくり企業が次のステージに向かうためのポイントをさまざまな角度から考察。パネルディスカッションやQ&Aが行われ、会場は満員の盛況となりました。


セミナーの冒頭、SAPジャパン インダストリーバリューエンジニアリング事業統括本部の柳浦より「顧客要求の多様化、複雑化する中で先進国は人手不足が深刻化しつつある。欧州ではインダストリー4.0から循環型経済(サーキュラーエコノミー)の形成、すなわち一方通行型の大量生産・大量消費経済からサスティナブルな経済への移行が始まっている。」という、製造業を取り巻くグローバルの潮流が紹介されました。

柳浦 健一郎の写真

SAPジャパン株式会社 インダストリーバリューエンジニアリング事業統括本部
柳浦 健一郎

その一方、日本においては経済産業省「2019年版ものづくり白書」から

  • 実に95%もの企業で人材不足の課題が顕在化している
  • 特に確保が課題となる人材の55%が技能人材である

というデータが示されました。「ものづくり白書にもあるように、日本製造業の競争力強化につながる方策は、世界シェアの強み、良質なデータ活用とスキル人材が活躍できる場づくり、組織変革。そして熟練技能のデジタル化にある。」(柳浦)

柳浦はその具体的な道筋として、SAPの「インテリジェント エンタープライズ(以下、IE)」を紹介。「SAP IEはファクトリーオートメーションからビジネスプロセスオートメーション、そしてデジタルトランスフォーメーションのその先を見据えたものであり、繰り返し作業を自動化し、人はより付加価値の高い戦略立案などに充てることができる」と、そのメリットを語りました。

デジタルの進化の図

オープニング:アナログ・人海戦術から脱却しデジタルを武器に組立製造業は次のステージへ

最後に、ものづくりの世界最大のイベントであり、インダストリー4.0のショーケース「ハノーバーメッセ」について紹介。ドイツのメルケル首相とスウェーデンのロベーン首相が訪れた昨年のデモの様子、今年の見どころが明かされました。


Georg Kubeの写真

SAP SE Industry Business Unit 自動車産業&産業機械産業
Georg Kube

続いて「組立製造業が取り組む戦略的イニシアチブ」というタイトルで登壇したのは、SAPドイツ本社で製造業を統括する、Industry Business UnitのGeorg Kubeです。

Georgは「ドイツの製造業も少子高齢化、労働力不足という日本と同じ状況。いち早くインダストリー4.0の名のもとに変革が進むドイツでは、ビジネスプロセスとビジネスモデル変革を、デジタルを武器に再創造のチャレンジとして進める企業が増えています」と切り出し、「グローバルの視点で環境問題は大きな課題」と述べた上で、顧客起点の変化として「製品ではなくエクペリエンスが重視される」と語り、これから企業が対処すべき以下の4つのポイントを挙げました。

企業が対応すべき内容

セッション#1:The Intelligent Enterprise “エクスペリエンスエコノミー”下で繁栄する企業群とは

さらにGeorgは「これを実行するためには、骨太のビジョンが必要」として「卓越したエクスペリエンス(顧客体験)を作り出す。個客に合わせたテイラーメードソリューションを通じ、一気にスケールしたものをお届けする。そしてハードウェアよりもサービスで勝負する」ことこそが重要、と語ります。

そしてその上で「成功する企業が注力する、戦略的重点項目」として以下の5つを挙げ、SAP IEを活用して顧客体験と付加価値創出に成功した独ポンプメーカー Grundfosと、台湾の東元電機、イタリアのトレニタリアの事例を紹介。そしてこの日来場者に配布された、SAPの産業機械&部品製造業向け インテリジェント エンタープライズ ポスターの活用法、さらにSAP顧客が結成したアライアンス「Open Industry 4.0 Alliance」を紹介しました。

成功している企業が注力している戦略的重点項目

セッション#1:The Intelligent Enterprise “エクスペリエンスエコノミー”下で繁栄する企業群とは


続く登壇者は、米国シリコンバレーでハイテク産業を担当する、SAP Labs, Inc. Industry Business UnitのKay Wernerです。

Kay Wernerの写真

SAP Labs, Inc. Industry Business Unit ハイテク産業
Kay Werner

Kayは「ハイテク業界の最新トレンドと必要となる新たなケーパビリティ」のタイトルで「GAFAに代表されるハイテク企業が世界の市場価値TOP5のうち4社を占め、その市場価値総額は4.6兆ドル。これを上回るGDPを持つ国は米・中・日の3国しかない」とその存在感を解説。それらハイテク産業に成長をもたらしたトレンド、として以下の6項目を紹介しました。

セッション#2:High Tech Industry Trends and the Rise of Outcome Based Economy

セッション#2:High Tech Industry Trends and the Rise of Outcome Based Economy

この中でモノ売りからコト売り(ソリューション ビジネスモデル)へのシフトに注目し、その次に来るのは成果に応じて支払い、接続された新たなエコシステムとプラットフォーム対応のマーケットプレイスからなる「成果ベースモデル」を紹介。

このビジネスモデルの変革には、

  • 構成、価格、見積(CPQ)
  • オーダー・オーケストレーション
  • 定期サービス
  • エンタイトルメント管理
  • 支払いと請求
  • 収益認識

など、多岐に渡る困難なビジネスプロセスの変革が必要になる、と述べた上で、その一例として「HPEのエンタープライズトランスフォーメーション」を紹介。「この進化は決してGAFAだけのものではなく多くの製造業で取り組むべきで、成功にはトランスフォーメーションが必要です。SAPはそれを全力で支援します。」と締めくくりました。


最後の登壇は、日本のものづくりを支えるプロツールカンパニーであり、日本SAPユーザー会の会長でもあるトラスコ中山株式会社 取締役 情報システム本部本部長の数見氏です。

数見 篤 様の写真

トラスコ中山株式会社 取締役 情報システム本部本部長 兼 JSUG 会長
数見 篤 様

数見氏は、2020年1月に稼働した新基幹システム(SAP S/4 HANA)はビジネス要因に主眼を置いて構築され、そのコンセプトは「自動化できる仕事は、システムですべて自動化!」だったと語ります。そして、具体的な取り組みとして大きく以下の4つの柱を挙げました。
 
 
 

自動化の4つの柱の図

セッション#3:ITが経営とビジネスをリードする

そしてこの中の以下の2つを取り上げ、紹介しました。

  1. 販売実績データを起点にした見積自動化
    ・商品数が40万点、問い合わせが1日5万件、社員の稼働の6割(160人/日)が見積対応
    →計算ロジックとAIを組み合わせ自動化。半日以上かかっていた回答が数分で完了!
  2. スマホアプリによる顧客の利便性向上
    ・“置き工具”のコンセプトで使った分だけ請求、自動で補充される「MROストッカー」
    →販売店とのチャット/タイムライン機能、配送状況確認機能搭載!

これらは基本的にSAP HANAをノンカスタマイズで使う「Fit to Standard」思想で構築されましたが、加えて「競争優位」との共創も重要、と語る数見氏は、「データ活用は単なる自動化、効率化だけではなく、顧客への提案など付加価値訴求こそが重要」と述べ、「この先は自社だけではなく、顧客やパートナー企業とどうつながるかサプライチェーン、エコシステム構築に真剣に取り組んでいく」と、その意気込みを語りました。


講演後、数見様とGeorg、Kayの3名によるパネルディスカッションが行われ、熱い討議が繰り広げられました。

パネルディスカッションの写真

パネルディスカッション

1つ目の議題は、「なぜ製造業はアナログ・人海戦術から脱却しなければならないのか?」。
進行を務めるSAPジャパン古澤は「あくまで収益向上、コスト削減が大命題」とした上で、「そのためのプロセスは改善(Optimize)>改革(Extend)>拡大(Transform)」と解説し、「外部からの脅威とは?」「内部の課題は?」について、それぞれの視点で考えを募りました。「日本はものづくりのナレッジと経験がある。オープン化し、デジタルを活用してつなげ、イノベーションしていくことが重要」(Georg)「シリコンバレーでは会社のカルチャーを変えて成長した企業が多い。かつてはトップダウンだったがいまはボトムアップになっている。これから日本もその潮流に乗る必要がある」(Kay)。

2つ目の議題は、「デジタル活用がビジネスにどのような利得をもたらすのか?」。
古澤からの「デジタルでなりたい姿(デジタルアスピレーション)は?」という問いに対し、数見氏は「日本固有の個社最適の視点を意識しつつ、サプライチェーン全体を巻き込んで全体が良くなる姿」と答えます。それを受けてGeorgは「日本にはカイゼンの積み上げによる分厚いアセットがある。しかしそれが現在の制約ともなっている。制約を打ち破る大きなブレークスルーのイノベーションが必要。そうすればよりロイヤルカスタマーが獲得できる」、Kayは「顧客体験とつながることがゴール。売って終わりではなく、データでつながることで商品やサービス改良も可能になる。」と述べました。

このディスカッションの成果はその場で「デジタル変革へのブリッジ」としてホワイトボードにまとめ参加者に共有させていただきました。