多様化する環境における組織力向上の施策: Human Experience Management(HXM)


278026_278026_l_srgb_s_glデジタル技術の急速な発展により、あらゆる企業がグローバルレベルでのビジネス拡大や全く異なる業界へのビジネス拡大を行うチャンスを手にすることができるようになりました。
新たなビジネス展開において成功を収めるためには、自社の強みを深く理解し他社との差別化ができるビジネスプランを立て自社リソースを最大活用できる人材と、新たなマーケットに対する深い知見でビジネスをリードする人材、そして新しい技術を活用して実現方法を実装する人材が必要となり、企業内の人材構成はこれまでにないスピードで多様化が進んでいきます。
多様な文化、教育、職種、業界のバックグラウンドを持つ人材は、働くことに対する価値観も様々です。ある人はより責任の大きい職務に早く就くことを重要と考える一方で、ある人は仕事を通して社会貢献することに重きを置きます。また、人生100年時代を迎える中でライフステージによって働き方に関するニーズも、フルタイム、パートタイム、プロジェクト単位での契約、リモートワークなど様々で今後もさらに選択肢は増加していきます。

このように変化し続ける環境下で、人事部門は、会社のビジネスにかかわる全ての働く人のポテンシャルを引き出し、組織としてパフォーマンスを出しつづけられるために、課題を抽出し、施策を立案し、推進していくことが求められています。しかも、これらを一度の取り組み・プロジェクトとして実行するのではなく、継続的に対応できるようにしていかなければなりません。

そのためには、以下の3つを実現できる仕組みづくりが必要になります。
1.社内・グループ内で働く全ての人の多様なニーズを把握する
2.異なるニーズを持つ人々のExperience(経験価値)を向上し、パフォーマンスを高める
3.外部の知恵を再利用可能な形で取り込み迅速に変化に対応する

1.社内・グループ内で働く全ての人の多様なニーズを把握する

これまで多くの日本企業では、新卒一括採用による同質性の高い従業員構成と暗黙の了解を前提にハイコンテクストなオペレーションが行われてきました。そのため、大多数の従業員が持つ課題やニーズにも、一定の類似性があり、性別、年代など特定の軸でクラスター化することで傾向の把握もシンプルに行うことができましたし、上長は部下と毎日オフィスで顔を合わせるため、ニーズをヒアリングしたり、態度や行動からリスクを察知することが可能でした。しかし、それを人材の多様化とグローバル化が進む環境下で実行するのはそれほど簡単ではありません。
まず第一に、どういった属性を持つ従業員グループがどんな課題・ニーズを持っているかの仮説を立てるためには、自社グループ内で働く全ての人材の基本的な属性情報を把握する必要があります。例えば、年齢層、職位、契約形態、担当職務、勤務地、勤続年数、滞留年数などを組織横断で把握できていなければ、どの従業員グループに、どんな頻度でサーベイを行うのが効果的か、どんな質問項目を入れるべきかの仮説を立てることができません。
次に、働く全ての人に手間をかけることなくご自身の就業体験に関してフィードバックできる機会を、頻繁に提供する必要があります。特にリモート環境で働くメンバーが日々経験している社内プロセスに関する課題やニーズを、年に一度のサーベイだけで拾いきることはできません。例えば、新入社員研修、年間目標設定などの各プロセス完了のたびに、1分程度で完了できるような簡単なサーベイなどを行うなど、Just-in-timeでのフィードバックを得られるような仕組みが必要です。
最後に、こうして得られたフィードバックの情報を迅速に集計・分析し、それをタイムリーにアクションに落とし込むということが最も重要なポイントです。しかし、多様化する従業員構成の下では、全社視点での分析だけでは注意すべき傾向を見逃す恐れがあり、適切な施策を講じられない可能性があります。例えば、全体の満足度が高く見えても、米国拠点の特定職種の管理職では極端に満足度が低いなどということを見逃してしまいかねません。一方で、継続的に実施するサーベイにおいて、複数の属性を軸にグループ化される従業員に対して、人事部門で集約的に分析・施策立案するのは非常に困難です。そのため情報の民主化が必要となります。つまり、人事部門が集約的に行うのではなく、容易かつ効果的に分析からアクション立案までできるツールとコンサルティングを現場に提供し、現場の裁量によって即座にアクションを起こしてもらうというアプローチに切り替えることが重要です。もちろん、その際には適切な権限範囲のコントロール、回答者を特定できないような配慮が大前提となります。

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2.異なるニーズを持つ人々のExperience(経験価値)を向上し、パフォーマンスを高める

Experience(経験価値)の向上に最も重要なのは、前章の最後に触れた、「タイムリーにアクションに落とし込むこと」です。あくまでも、従業員に改善の成果を実感してもらい、よりパフォーマンスを出しやすい環境を提供するという点がゴールだからです。

現場と責任をシェアしながら分析・アクションの実施を推進すると同時に、人事部門には、様々なニーズに対応する柔軟性の向上が求められます。企業戦略に応じて柔軟にオペレーションを行うには、人事がそれ以上に柔軟に対応できることが必要不可欠だからです。そのためには、複数の人事制度が同居することになり、人事部門はこれまで以上に戦略的な検討や制度企画対応を行うことになります。例えば、国内の新卒雇用のようにポテンシャル採用で新人教育で一から育てていく人材と大学時代に経験を積んだ専門性の高いDigital人材とで異なる報酬制度を設計する、テレワークやワークシェアリングのための勤務評価の仕組みを提供するといったことを継続的に実現していくことで、様々なニーズを持つ従業員のモチベーションを高めパフォーマンスを最大化していくことが求められます。

それを実現するためには、定常的に発生する業務を徹底的に効率化していく必要があります。そのためには、慣例にとらわれず不要な業務を洗い出し削減し、必要な業務にフォーカスしてデジタル化を推進することが重要です。一方で、個別のプロセスを断続的にシステム化してもシステム間をつなぐための手作業、I/F、待ち時間が発生することから、人事部門の効率化の面でも、従業員の経験価値向上という面でも高い効果は望めません。
従業員のライフサイクルとそこで従業員が経験するプロセスをエンドツーエンドでサポートできるソリューションを提供することが重要です。一例をあげると、入社後に必要となる給与課、総務課、IT課など複数の部門への申請を行うシーンで、従業員はチャットボットのサポートを受けながら一か所で済ませることができ、管理部門は、従業員マスタ情報と紐づけられてE-Gov申請、購買申請、IT機器申請のデータが自動的に連携されるような仕組みが望まれます。これは、管理部門の負荷を全体最適の視点で削減するだけではなく、従業員が管理プロセスでストレスを感じることなくスムーズに完了できるようにすることで、本来の業務により集中できるようにするという点でも重要です。

3.外部の知恵を再利用可能な形で取り込み迅速に変化に対応する

働く全ての人が働きやすい環境を提供するためのソリューションを構築するにあたって、考慮点が3つあります。
一つ目は、デジタルネイティブと呼ばれる世代だけではなく、ほとんどの世代がAmazonなどのサービスを利用していることで、システムの操作性・利便性に関する期待値が高くなっているという点です。例えば、かつてのように社内システムを利用するために事前にマニュアルで勉強するということは少なくなっていると思います。この傾向はこれからも加速するため、チャットボットを介した自然言語でのシステム操作や機械学習を利用してパーソナライズされたメニュー表示など、継続して「さらなるユーザビリティ向上が担保できる」という点が重要な考慮点となります。
二つ目は、変化の速度が緩やかだった時には、大きな初期投資と時間をかけて開発したものを長期間利用するというアプローチが有効でしたが、これからのシステムは変化を前提として考える必要があるという点です。そのため、「欲しいものを作る」というアプローチから「あるものを利用する」へ転換すると同時に、「柔軟性の高さ」「複数制度への対応」といった点も重要な考慮点となります。
三つ目は、今はまだない新しいサービス・機能との連携を考慮するという点です。現在HR-Techと呼ばれる領域だけでも、4,000ものソリューションが世に出ていますし、それ以外にも人事のコアシステムと密接に連携するようなソリューションも多数存在します。その中には今後、会社の戦略上必要不可欠となるものも出てくることは想像に難くありません。そういったニーズに対して、同様の機能を自社のシステムに実装するのでは遅すぎるため、すでに複数社で実績のある外部のソリューションを容易に繋げたり外したりできる「高い外部連携性」も重要な考慮点となります。

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SAP SuccessFactorsでは人事部門のビジネスパートナーとしての活躍をサポートする一連のビジネスプロセスを”Human eXperience Management”(HXM)と再定義し、前述の考慮点を踏まえた新たなベストプラクティスと製品機能のさらなる拡充を行ってまいります。
IDC社によるレポートでは、Human Experience Managementの根幹である「従業員を主軸にしたトランスフォーメーション」を進めるにあたっての有益なリサーチ、アプローチ、期待効果について情報がまとまっておりますので、是非ご参照ください。