人材調達のデジタルトランスフォーメーション(DX)で 基幹のビジネスをリソース不足の危機から救う

作成者:SAP インテリジェントスペンド事業本部 マーケティング 投稿日:2020年5月22日

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「SAP Fieldglass」の採用でコベルコシステムが目指した変革

ここ数年で劇的に増えるERPの導入案件──。それに伴い人手不足の危機に直面したITソリューションプロバイダー、コベルコシステムは、SAPの外部人材・サービス役務調達・管理プラットフォーム「SAP Fieldglass」の導入に踏み切りました。それによって創出されつつある変化とメリットについて、SAP Fieldglass導入を主導したコベルコシステム ERPソリューション本部の大工園 正彦氏の話を交えながらご紹介します。

大工園 正彦氏 コベルコシステム(株) 産業ソリューション事業部ERPソリューション本部 デジタルビジネス部

大工園 正彦氏
コベルコシステム(株)
産業ソリューション事業部ERPソリューション本部
デジタルビジネス部

激増するERP案件、厳しさを増す人材の確保

コベルコシステムは、日本IBMが神戸製鋼所との合弁で1987年に設立したITソリューションプロバイダーです。基幹業務システム・ITインフラの設計・開発・保守をはじめ、コンサルティングサービス、アウトソーシングサービス、さらにはパッケージソフトウェアの開発・販売などを手がけ、年間で468億円(2019年度)を売り上げています。従業員数は1695人(2020年4月1日現在、関連会社495人含む)で、東京と神戸にそれぞれ本社を構えています。

同社では、1995年という早い時期からSAP ERPの取り扱いを開始し、2019年末までに累計260件の導入実績を積み上げてきました。また、SAPが優れたパートナーに贈る年間アワード「SAP Award of EXCELLENCE」の受賞回数も10回を優に超えています。

そのSAPビジネスの環境がここ数年で大きく変化し、それが「SAP Fieldglass」の導入へとつながったと、コベルコシステムの大工園 正彦氏(産業ソリューション事業部 ERPソリューション本部 デジタルビジネス部)はいいます。

大工園氏の言う「変化」とは、SAP ERP案件が2015年ごろから猛烈な勢いで増え始め、案件をこなすために必要な外部人材を確保する難度が一気に高まったことです。

「例えば、SAP案件に関するビジネスパートナーへの当社の発注実績だけをとらえても、2016年から2019年のわずか3年間でおよそ2倍に膨らんでいます。これは、SAPのERPを新規に導入する企業が急増したことによるもので、それ自体は弊社にとって喜ばしい動きです。ところが一方で、ERPの新規導入という、相応のスキルと知見・知識が要求される案件をこなせる外部人材の確保がみるみるうちに難しくなっていき、人的リソース不足がまさに危機的な状況へと変化しました。」(大工園氏)。

大工園氏によれば、SAP ERPに対する需要が急拡大したことで、ERP人材の市場は、完全な“売り手市場”となり、優秀なERP人材(コンサルタント)の単価は上昇を続け、ベンダー間でのコンサルタントの奪い合いも起きているといいます。その中で、優秀な中国系のソリューションプロバイダーが新たな競争相手として存在感を増し、日本のソリューションプロバイダーが人材の確保で苦しめられているうちに、リソース獲得力のあるベンダーに市場を奪われるおそれも強くなっているといいます。

「中国系のソリューションプロバイダーとは、パートナーとしてともに案件をこなすことが多く、とても頼もしい存在なのですが、そこはビジネスですから、ときにはライバルとして競合しなければならないこともあり、最近ではそのケースも増えています。しかも、SAPのERPを導入しようとする企業の機運は高まるばかりで、案件はこれからも増え続けることが予想されます。その商機をしっかりとつかむためにも、SAP Fieldglassを導入して外部人材の調達・管理のあり方を改革し、人的リソース不足の問題を抜本的に解決しようと考えたわけです」(大工園氏)。

バラバラだった管理を1つの仕組みで

SAP Fieldglassは、派遣労働者、フリーランサー、業務委託(請負/ 準委任)といった外部人材の獲得や調達プロセスを一元的に管理し、外部人材活用の全社的な最適化を支援するクラウドプラットフォームです。その導入でコベルコシステムが大きく目指したのは、これまで事業部ごと、チームごと、あるいは、サプライヤーとの契約形態ごとにバラバラだった外部人材の管理を単一のプラットフォーム上で一元化することです‘。そのイメージを図解すると図1のようになります。

図1:外部人材の管理を単一プラットフォームで一元管理する管理

(左)従来 (右)SAP Fieldglass導入後

(左)従来                (右)SAP Fieldglass導入後

「このように、まったく統制のとれていなかった外部人材管理の仕組みを1つにすることで、情報の二重入力/誤入力/不整合を排除/低減し、効率的な調達と管理が可能になると考えました。加えて昨今では、派遣・準委任の契約において、法令順守がこれまで以上に厳しく求められています。そうしたコンプライアンスを徹底するうえでも、管理の一元化が重要だと考えました」(大工園氏)。

4つの目的と適用業務

コベルコシステムではまた、外部人材管理を一元化する目的として以下の4つを掲げました。

①外部人材調達の効率化とスピードアップ:慢性化しつつあった人材不足の問題を解決すべく、SAP Fieldglassを用いて外部人材調達の効率化とスピードアップ、プロジェクト間での情報共有による人的リソースの効果的な活用を促す。

②外部人材調達プロセスの標準化:現状のプロセスを全社的に標準化することで、プロセスの見える化とスリム化を目指す。

③外販を見据えた検証:SAP Fieldglassの外販を行うための検証を行い、ノウハウを蓄積する。

④将来的なフリーランサーの活用:SAPのコンサルタントは個人事業主(フリーランサー)であることが多い一方で、現状では、協力会社が仲介するかたちでコベルコシステムとフリーランサーとの契約が行われている。将来的には、その形態を見直し、SAP Fieldglassを通じて直接フリーランサーと契約を結ぶことでコストダウンを図るとともに、スキル評価やタスクごとの発注を目指す。

こうした目的の下、大工園氏が所属するERPソリューション本部が中心となってSAP Fieldglassの導入プロジェクトチームが組織され、導入の手始めとして同本部の外部人材調達業務にSAP Fieldglassを適用する作業に着手しました。このとき、SAP Fieldglassを適用する業務範囲を図2のように定めたといいます。

図2:SAP Fieldglassの業務適用範囲

コベルコシステムの場合、外部人材サービスなどの“間接材”は、すべて親会社の購買システム(現在、SAPの調達・購買プラットフォーム「Ariba」に全面移行中)を通して購買を行う決まりになっています。ゆえに、同社におけるSAP Fieldglassの適用業務には、購買にかかわるプロセスは含まれていません。「ですので、当社におけるSAP Fieldglassの活用は、外部人材情報の共有化と可視化に的を絞り込んだものと言えます。ただし、今回SAP Fieldglassの適用対象にした業務は、これまでシステム化・標準化されていなかった部分で、それがすべてシステム化・標準化され、プロセスが見えるようになった意義は大きいと感じています。また、外部人材の評価と案件の情報、必要要員の情報が組織横断で共有されるようになれば、外部人材の一層の有効活用が図れると期待できます」(大工園氏)。

導入プロジェクトは3カ月で完了、サプライヤー60社が登録

プロジェクトチームによるSAP Fieldglassの導入作業は2019年6月にスタートを切り、10月にシステムの運用を開始しました。つまり、およそ3カ月間という短期間のうちにシステムの構築を済ませたということです。

「実のところ、私たちはSAP Fieldglassの機能をほとんど知らず、手探りの状態で導入の作業を進めました。それでも短期導入が実現できたのは、自分たちの業務をSAP Fieldglassにフィットさせ、すべのプロセスをSAP Fieldglass上で完結させることに力を注いだためだと考えています」(大工園氏)。

こうしたスタートを切ったコベルコシステムのSAP Fieldglassには、2020年3月現在でサプライヤー約60社/ワーカー約360名が登録しています。

「SAP Fieldglassは、サプライヤーの協力なしでは成り立たない仕組みです。ですので、登録サプライヤーを増やすことには力を注ぎました」(大工園氏)。

もっとも、サプライヤーの登録にしても、社内でのSAP Fieldglassの活用にしても、すべて順調に進んだわけではないと、大工園氏は明かします。

「SAP Fieldglass導入に対しては、社内にも、サプライヤーの間にも変化を嫌う抵抗勢力があり、説得には相応の苦労を強いられました。このうち、社内の抵抗勢力に対しては、『SAP Fieldglassへの移行は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の一環である』という旗印を立てたうえで、“見える化”などのメリットを説明することで説得していきました。一方のサプライヤーに対しては、SAP Fieldglassに関する説明会を定期的に催し、SAP Fieldglassの使い方とともに、それを使うことのサプライヤーにとってのメリットを丹念に説明し、理解と協力を求め続けました。結果として、登録社数を何とか60社まで増やせたというわけです。サプライヤーへの協力要請はいまもなお続行中で、これからも啓発活動に力を注いでいくつもりです」

数々の効果を見込む

コベルコシステムにおけるSAP Fieldglassの活用は、まだ始まったばかりの段階にあるとはいえ、目に見える効果はそれほど現れていないと大工園氏は言います。それでも、見込まれる効果はさまざまにあるようです。

「例えば、外部人材調達のスピードアップによって、競合に人材を取られてしまうリスクが下げられますし、組織全体で新たに獲得した案件と、必要な要員の情報の共有が進めば、一度採用した優れた人材を次の案件に継続して活用する作業も効率化されるでしょう。このほか、業務プロセスの標準化/コンプライアンス強化など、SAP Fieldglassによって数々の効果が手にできると期待しています」と大工園氏は説明し、次のように話を締めくくります。

「SAP Fieldglassに対するいまの当社の状況は、外部人材調達のプロセスと情報をすべてデジタル化し、一元的に管理できる基盤を整えたにすぎません。つまり、本格的なプラットフォームの活用はこれからで、その活用が進むことで情報が蓄積されていき、さまざまなメリットの創出へとつながる使い方ができるようになると見ています。また、私たちとしてはSAP Fieldglassの活用を通じて、ノウハウをさらに積み上げ、お客さまによる外部人材調達・管理の変革に役立てていきたいと考えています」

<了>

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