インテリジェントエンタープライズへと歩み始めたデロイトアフリカ


デロイトアフリカ

一年程前に、プロフェッショナルサービス事業者としてのデロイトについて、このブログサイトで報告をさせていただきました。
デロイトに見る情報サービス産業自身のデジタルトランスフォーメーション

世界でも名だたるコンサルティングファームであるデロイト自身が、事業の方向性を変え、ITによって真のグローバルITコンサルティング事業に乗り出す様を説明し、日本の情報サービス産業の考えるべき道を考察しました。

今回は、アフリカにおける子会社であるデロイトアフリカが行った、より実効的なデジタルトランスフォーメーションについて、報告させていただきます。

デロイトアフリカは、南アフリカ共和国に本拠地を置き、アフリカ17カ国をベースにサービス展開しているデロイト・メンバー・ファームです。28カ所のオフィスと7,000名の職員で、会計監査と税務サービス、コンサルティングなどを提供しています。Map Deloitte Africa

新興国の多いアフリカ大陸ですが、これからのエマージングマーケットを顧客として、デロイトアフリカは急成長を遂げています。企業として定めたビジョンは“Make an Impact that Matters”。成長する企業と市場を支え、顧客とともに飛躍する強い意志が示されています。その顧客をリードする役目としてのコンサルティング事業。その事業の効率性を高め、事業の隅々までを見える化し、マーケットや顧客の変化に即応し、継続的なイノベーションを実現できる会社になるために、デロイトアフリカは、自らのデジタルトランスフォーメーションプロジェクトMOJAを実施しました。

人的資本を活用するビジネス

エンタプライズITマーケットは今まさに成長しており、顧客の要望も多岐にわたるものになってきています。激しく動く世界のマーケットに対して、世界に広がる子会社・パートナーを管理するリアルタイム経営、インターネットを活用したビジネス開発、あらゆるITリスクから企業を守るセキュリティ対策など、マーケットから多くの事を要望されています。

人を使う事業であるプロフェッショナルサービス事業は、サービスを提供する従業員数に比例して事業が成長します。今こそ多種多様な人材に対して投資をするべき時。新しい雇用を進め、手っ取り早く教育をするだけで、企業は成長するのかもしれません。

しかし、ご存じの様に現在の人材の枯渇は、先進国のみならず、中国・インド、あるいは、ベトナム・ミャンマーなどの発展途上国にまで広がっており、世界中で思うように人材を雇用する事ができる会社は、ひとつもありません。だからこそ一人あたりの生産性の向上を間断なく推進することが求められるようになってきました。
世界中のプロフェッショナルサービス事業において、この数年は大きな転換点です。生産性の向上に成功した企業は、2025年以降の世界で再び成長の機会を得ることができるでしょう。その向上が叶わなかった企業は、現在の従業員の退職とともに衰退します。従業員も定年まで待ってくれればいいのですが。

MOJAプロジェクト

デロイト本社が不断の決意を持って全社の改革プロジェクトであるSWIFTプロジェクトを始めたのが2016年その1年後に、デロイトアフリカの独自施策としてMOJAプロジェクトが開始されました。

Moja Project

複数の国にまたがって事業を営むデロイトアフリカは、社内様々な分断と成熟度の低いオペレーションに苦しんでいました。

  • 標準化されていない手動のビジネスプロセス
  • システム全体で複数のバージョンの真理があるため、データ品質が低い
  • 手動による統合とレポートのプロセス
  • ビジネスをデジタルで変革する限られた能力
  • 戦略的なレポートの洞察を提供するために必要な大幅な手動介入
  • 手作業が遅いためのユーザーエクスペリエンスの低下

これらを業務のデジタル化による標準化・自動化を進めることで、高度な業務効率化と迅速な戦略的意志決定を目指しました。

 

CFOが全体を指揮し、ビジネスの間断のない改善のため、ほぼすべてのITシステムをクラウドソリューションとしました。SAP S/4HANAクラウドに合わせて業務を標準化することからはじめ、下記の様にプロセスを変革しました。

  • SAP S/4HANA Cloud によって、財務・プロジェクト管理、人事業務、調達から支払までのプロセス、契約からキャッシュまでのプロセスを標準化、また高度なリソース管理を実現
  • SAP Cloud Platformによって、旧来のCRMシステムとクライアントマスターデータを統合
  • SAP Concurにより経費処理をデジタル化、自動化、統合化
  • SAP SuccessFactorsにより、統合労働管理とオンボーディングの自動化
  • SAP BW/4HANA Cloud による、全社データの統合化と利用促進
  • SAP Fioriによるユーザーエクスペリエンスの向上
  • 全社事業の包括的なレポートを幹部に定期配信

このプロジェクトは、SAP Innovation Awardsで表彰されていますので、詳細をご覧ください。

インテリジェントエンタープライズ

これらの実現のために、デロイトアフリカは、いたずらに従来の業務を否定して、クラウドソリューションにあわせる事はしませんでした。業務の継続性を担保するため、SAP Cloud Platformを活用し現在の業務プロセスの一部を担保しました。また、SAPとCo-Innovation Agreementを結び、業務のあるべき方向を見定め、新たに標準化されたビジネスプロセスをこのSAP Cloud Platformの上に構築してゆきました。これによってデロイトアフリカがほぼすべての業務をデジタル化する事ができましたが、彼らの目標は標準化にとどまりません。

これら標準化された個々の業務をバリューチェーン上に展開し、人つながりになる業務のプロセスを自動化し始めました。

SAPは、インダストリーごとのバリューチェーンを描き、その中にある個々の業務をS/4HANAとその他のSAP クラウドソリューションによって実現してきています。そしてその個々のバリューチェーンの前後や中にあるビジネスプロセスに対して、AIや機械学習のテクノロジーを使って自動化を推進しています。

下図にSAPのプロフェッショナルサービス事業のバリューチェーンとインテリジェント・エンタプライズに向けたシナリオを示します。

SAPは、これらのシナリオに基づいて、SAP S/4HANA Cloudの開発ロードマップを作り、四半期ごとに新しい機能を提供していますが、デロイトアフリカはこのハイペースな機能追加を糧に、不断のイノベーションを実現しようと考えています。また、SAPとのCo-Innovation施策によって自社に最適な機能のロードマップを作り、常に6から12ヶ月先の開発計画を策定し、さらなるインテリジェントエンタープライズに向けた改革を切れ目なく実現しようと考えています。

これが、彼らがクラウドERPを選択した本当の理由なのです。

インテリジェントエンタープライズへの道

CFOのジェーン・マクドナルドは、SAP Industry Forum 2020でのインタビューにおいて、デジタルトランスフォーメーションを企画・検討するすべての企業に下記の5点をアドバイスしています。

  1. ビジネス起点でのプロジェクト
    ITプロジェクトは導入が終わったところで、目的が達成されます。これによる成果はどこにもありません。プロジェクトはビジネスで達成すべき目標を意識すべきです。
  2. 信頼できるシステムインテグレーターの存在
    デロイトアフリカは、自社のコンサルティングリソースでプロジェクトを実現する事により、深い経験を得ましたが、すべての会社がそういったリソースを持っているわけではありません。大きなプロジェクトを実施するに当たって、信頼できるパートナーは言うまでもなく必要です。
  3. データクレンジングへの投資
    デジタルトランスフォーメーションの起点はデータです。データのクレンジングに投資を惜しまず、「一つの真実」としてのデータ利用ができるようになるまで実施すべきです。
  4. ソリューションへのビジネスプロセスの適応
    ビジネスプロセスをソリューションに合わせることで、今後のクラウドソリューションの進化を自社のイノベーションへと振り返ることができます。
  5. 変革に対するマインドの切り替え
    従来の考え方を大きく変えることで、はじめて意味のあるデジタルトランスフォーメーションが実現できます。翻ってビジネス起点で実現すべき目標を見失わずにプロジェクトを完遂するためにも、マインドセットの切り替えは重要なポイントです。

※インタビュービデオをご覧になるには、下記の画像をクリックしてください。(17分24秒)

デロイトアフリカインタビュー

日本の生産性

日本人国民一人あたりの生産性が、米国の70%程度、OECD加盟国中21位と言われたのは2016年でした。生産性上昇率もトップのアイルランドに比べて10分の1程度のペースです。しかし、これはOECDの枠内の話です。アフリカの成長はさらにめざましいと言われます。アフリカをリードする企業がさらにドラスティックな改革をしている今、2020年コロナ禍を抜けた後の日本は、果たしてアフリカを遠い国とみていていいのでしょうか?