SAP Innovation Awards 2020 受賞取り組みから未来を読む


2020年3月17日、各界の有識者やコミュニティーリーダー、SAP主要部門の責任者から構成される審査員によって選ばれた今年のSAP Innovation Awards の受賞取り組みが発表されました。年初1月3日のエントリー締め切り後、2ラウンドの審査を経て選ばれたのは20の取り組みでした。

SAP Innovation Awards 2020 Winner

SAP Innovation Awardsは、世界中から応募された取り組みの中から、SAPのインテリジェントスィート、インテリジェントテクノロジー、デジタルプラットフォームを使用して、傑出、驚異的な成果を達成し、(従業員を含む)顧客の移り変わるニーズに適応し、優れた顧客体験を提供しながら、ビジネスとプロセスを再構築あるいは創出した取り組みに贈られます。

今年で7年目となるこのプログラム、今年はかつてよりも実装(Live)された取り組みであることが受賞要件となり、PoCも受賞対象だった昨年までよりも、確かな戦略に基づいて結果を出した取り組みが並びました。さらにいえば、審査の期間は国によって新型コロナウィルスの感染爆発が始まっていましたが、何らの影響を受けることを微塵も感じさせないような、取り立ててNew Normalに合わせた訳ではない、これからのいかなる未来にも求められる、そのときどきの社会や人々への確かな貢献を目指しかつ実現した取り組みだと感じました。

受賞した個々の取り組みについては、今春「Beyond 2025 — 進化するデジタルトランスフォーメーション」を共同執筆した業界スペシャリストの仲間と、新たに加わったThought Leadersが詳しく紹介します。

284304_shutterstock_1104780941

Best Run Leader

281383_GlobeArrows_R_blue

このカテゴリーの受賞者は2社。社会に大きな影響を与えるためにテクノロジーを活用していることが受賞要件です。例えばインタストリー4.0の実践や、もしくは自動化による人間の営みの向上を実現し、Best run Intelligent Enterpriseを実現しています。

これまでもこのブログシリーズでご紹介してきた「照明に新たな意味を見出す」signifyが昨年に続いて、受賞しました。

もう1社は、データを活用することで患者の命を救うことを目指したドイツの医療用品メーカー、ハートマン。医療用品分野のみに特化した取り組みとしてではなく、自社製品の最終受益者にまで視野を広げた取り組みは他業界での応用に示唆を与えてくれます。

これからの顧客先在庫管理を考える — 医療用品を例に(松井 昌代)

Experience Innovator

281429_Collaborate3_R_blue

このカテゴリーの受賞者は1社。エクスペリエンスデータ(Xデータ)とオペレーションデータ(Oデータ)を組み合わせてエクスペリエンスギャップを埋めることにより、未来に求められるインテリジェント企業として多くの企業に示唆を与えていることが受賞要件です。

デンマークを基盤とするポンプメーカーグルンドフォスは、世界の水と気候の課題を解決するために、自社製品の顧客からの声をデジタル技術を用いて集めることで距離を縮め、製品とサービスに生かしました。会社の使命を全うする取り組みは、あらゆる企業の存在意義を改めて考えさせてくれます。

「自社の目的」の実現にむけて、顧客をアンバサダーに : グルンドフォス社のEM(体験管理)(古澤昌宏)

Technology Disruptor

281452_Idea2_R_blue

このカテゴリーの受賞者は6社。イノベーションを推進するためのインテリジェントテクノロジー、もしくはデジタルプラットフォームの少なくともひとつ、あるいはSAP製品を使用して次世代アプリケーションを開発していることが需要要件です。Technology Disruptorの名が物語るように、伝統的な業界・企業の革新的取り組みや、これまで主に基幹業務システムの導入パートナーだったIT企業が、顧客のソフトウェア導入支援を通じて培った知見をもとに特定の領域や業界におけるデジタルプラットフォーマーに進化したものなど、新たな価値創造を実現した取り組みが多く見られます。

SAPといえばドイツサッカチームとの共同開発を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。スペインのIT企業クラリーバは、代表チーム、クラブチーム、選手のそれぞれへのサポートをSAPとはまた違ったデジタル技術の活用方法で実現しています。現在はカタールとイタリアのサッカーチーム向けですが、今後の発展が楽しみです。

SAPパートナー企業が“ディスラプト(破壊)”したものとは何か?(佐宗 龍)

ドイツの発電設備管理会社カイザーウェッター社は、再生可能エネルギー発電をサステナブル(持続可能)なビジネスにするために、デジタル技術を駆使して集めたデータを分析。そのサービスプロバイダーとして、発電事業者のビジネスパートナーとして活躍しています。

再生可能エネルギー発電ビジネスを可能にするデータインテリジェンス(田積 まどか)

石油や天然ガスの探鉱・開発から生産を担う米国マーフィー・オイルコーポレーションは、ともすれば危険を伴いミスが許されない業務に従事する現場のエンジニアに、デジタル技術を活用することで寄り添い、「働き方」の品質を維持し極力俗人化を減らすことによるリスク回避との両立を実現しました。

「働き方」を再創造する − Murphy社の取り組みから学べること(竹川 直樹)

 

Business Transformation Champion

281457_Collaborate4_R_blue

このカテゴリーの受賞者は5社。SAP S/4HANA、SAP Digital Supplychainなどの複数のSAPソリューションを通じて、エンドツーエンドのビジネストランスフォーメーションを実現し、さらにクラウドソリューションを統合し、デジタルプラットフォームとインテリジェントテクノロジーを活用した、各業界をリードするインテリジェント企業が選ばれています。

世界中の人々が新型コロナウィルスの流行を経験していることで、医療従事者の献身にだけ頼るのでは長続きしないことを感じているはず。しかしそれは医療機関に限ったことではありません。医療従事者の働き甲斐にまで踏み込んだHHCのオペレーション改革から学べることは多いはずです。

米国医療機関に学ぶオペレーション改革のありかた(福岡 浩二)

米国ユニコーン企業マジック・リープがその急成長を支えるビジネス基盤としてSAP製品をスィートで採用し短期間で導入、既に稼働しています。彼らのビジネスがデジタルによって増幅され、市場を変えていくことは想像に難くありません。むしろ彼らのスピード感を基準に既存の企業も変わっていくべきでしょう。

変化の激しいユニコーン企業に学ぶ人海戦術との決別(柳浦 健一郎)

全世界に25万人の従業員を抱え自動車ビジネスを展開するインドのコングロマリットであるマヒンドラグループが、従業員ひとりひとりの成長と組織の成長とのシナジーを生むべくSAPのヒューマンリソース関連のアプリケーションをスィートで導入し成果を挙げています。

従業員がより人間らしく働けることを事業成長戦略に加える(山﨑 秀一)

市場規模や事業規模と顧客へのコミットメントとの間に相関はありません。他社の追随を許さない製品やサービスを持った中堅企業が、ビジネスにデジタル技術を活用することを大手企業よりあとにする理由はないということです。そのことをピラー社が気づかせてくれます。

世界中の顧客のためのIoTを使った予知保全(桃木 継之助)

Cloud Genius

283528_Cloud_R_blue

このカテゴリーの受賞者は3社。SAPのクラウドソリューションを効果的に複数組み合わせて活用することで、インテリジェント企業として名乗りを挙げた企業です。

南米の商標飲料で世界最大のフランチャイズボトラー、コカ・コーラFEMSAは、各領域で加速させているデジタル化を調達領域においてもデジタル化を推進し、実施することのみを目的とせず、戦略的調達を加速することに注力しています。特に並立している各国のSAP ERPの統合を待つことなく、SAP Aribaと複数のSAP ERPを連携させたことで、南米地域での国を跨った戦略的調達を実現したことは、多くの業界、企業の参考になるはずです。

戦略的調達にさらなる革新を!(太田 智)

ヴァロラ社の取り組みは、単に小売業界のみに留まらない、”進化する技術を企業側がいかに利用していくのか”という普遍的なテーマに対してのヒントに満ちています。業界における自社の立ち位置を冷静に見つめ、お客である消費者にどのようなメリットを提供することで生き残っていけるのか。そのための戦略を明確に見定められたからこそ、手段である技術を選び取り、迷うことなく実行できたのです。

ヴァロラ社(スイス)の”無人コンビニ”への挑戦(土屋 貴広)

 

Adoption Superhero

281459_DigitalTransf3_R_blue

このカテゴリーの受賞は3社。SAPクラウドソリューションの導入に高い知見を持つSAPデジタルビジネスサービスまたはパートナーの支援によって、未来に繋がる取り組みを成功させた企業に贈られました。

デロイト社自身は世界的コンサルティング会社のひとつとしてSAPパートナー企業の一社です。彼ら自身の地力を最大限に生かして、急成長するアフリカ市場で彼らのビジネスを支える基盤を構築し、これまで以上に質の高い顧客サービスの提供を可能にしました。

インテリジェントエンタープライズへと歩み始めたデロイトアフリカ(久松 正和)

データ・ドリブンな企業がインテリジェント・データ・ドリブンな企業に。女性のみならず男性にも馴染みのある化粧品ブランドを数多く持つロレアル社が、分散した基幹システムとサプライチェーンの計画システムからデータを収集し、新たなプロセスマイニング機能を活用した分析基盤をわずか6週間で構築することができたのは、物理的に複数に分散したシステム上でも、伝統的に一定レベル以上のマスタデータ定義を統一させ、グローバル標準のプロセスで業務処理を行なっていたからこそ。これは実績データを生きた経営データとして活用するための必須条件であり、業界を問わずいかなる企業においても重要な経営課題です。

インテリジェント・データ・ドリブンな企業になる ~ ロレアル社の6週間チャレンジ(大滝 明彦)

 

Honorable Mention

285961_Circles_R_blue

受賞ではなく次点の扱いで、業界をリードする先進的な取り組みを行った企業に授与された称号です。

米国金融最大手のゴールドマンサックスの取り組みが次点になったことで、企業と従業員との間のパワーバランスが変わったことを、業界を問わず企業側が認識していることをむしろ痛切に感じます。変化への対応に迅速にデジタル技術を活用。金融業界をリードするゴールドマンサックスの矜恃が伝わります。

不確実な時代にこそ企業がなすべきこと(前園 曙宏)

これからの私たちの使命

今回の受賞取り組みを俯瞰すると、例年に増してSAPの企業ビジョンを体現するような、社会への貢献や人の営みの向上に焦点を当てた取り組みが多いと感じます。さらに企業と従業員との関係の再設計にフォーカスした取り組みにも、多くのことを気づかされます。

Help the world run better, and improve people’s lives.

SAPがこの企業ビジョンを明確に掲げだしたのは2015年頃です。その後One Billion Livesという「10億人の生活をよくするアイディア募集」がアジアパシフィック地域で始まり、さらに全世界に広がりました。手前味噌ですが、私たちSAP社員は日々この企業ビジョンに触れて、自分たちがなすべきことを常に意識しています。

私たちはこれまで知らず知らずのうちにいたずらな競争の中にいた気がします。競争を通じて発達発展してきたことは事実です。しかし科学技術の発達によって、これまでよりも世界を身近に、ときには小さく感じられるようになり、経済活動によって私たち自身が地球自体の寿命を縮め、競争や比較の根にある不満やストレスから突発的な悲劇が起き、繰り返されることにも気づきました。しかし、敷かれたレールの先に明るい未来がなさそうだと感じても、どうやったら可能性のある未来に向かうレールに乗り替えられるのかがわからないままでした。そこに起きたのが新型コロナウィルス感染拡大による世界各国での都市封鎖、日本においては外出の自粛、そして経済活動の停滞だったのではないでしょうか。

当初、新型コロナウィルス感染 による経済打撃からの復興と環境・エネルギー問題の解決はそのままイコールではありませんでした。しかし今年4月の国連グテーレス事務総長によるGreen Recoveryの呼びかけに対して、すぐさま多くの企業や各国首脳が賛同を表した頃から、未来への道筋が少しずつ見えてきた気がします。せっかく復興を目指すなら、環境・エネルギー問題や人の生活に関わる問題の解決にもなる方向に。今、ウィルス感染拡大に対してひとりひとりの心がけで防止するという、これまでやったことのないことをどうにかやっている事実から、私たちの中に、もしかしたらやればできるのではという自信が生まれ、前向きになれているのかもしれません。多くのかけがえのない命が失われた未曾有の経験。その命に報いるためにも、私たちは真に意味のある復興を目指すべきだと思います。

SAPはテクノロジー企業です。テクノロジーは社会や人の生活を豊かにするために用いるもの。今年のSAP Innovation Awards受賞の取り組みからは、そんなお客様とSAPの意思をこれまで以上に強く感じました。

追記:

2020年6月15日(日本時間6月16日)、今年のSAPPHIRE NOW ReimaginedでSAP CEO Christian Kleinの基調講演にて3つのキーワードが明らかになりました。Resilience(回復力)、Profitability(収益性)、Sustainability(持続性)。 若き新CEOからのフレッシュなメッセージとして受け取られた方も多いようですが、SAP Innovation Awards 2020の受賞取り組みをご覧いただいてお分かりのように、SAPは確固たる企業ビジョンのもと、変わらずにお客様、パートナー様と力強く歩んでいます。それがこれからもお客様のご安心材料になることを願っています。

2021年のSAP Innovation Awardsのエントリー開始は今年の夏です。可能性のある未来に向けた新たな取り組みを日本のお客様とご一緒し、エントリーによって世界に発信するお手伝いをさせていただければ幸いです。お気軽にお声がけください。

Participate in the SAP Innovation Awards 2021