従業員がより人間らしく働けることを事業成長戦略に加える


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今回はマヒンドラ・グループのヒューマンリソースマネージメントのデジタル化の事例を取り上げます。マヒンドラ・グループは、世界100か国以上、22産業に事業展開するコングロマリットで、2018年度は連結売上高207億USドル(約2兆2500億円)を計上し、グループ社員25万人を抱える大企業です。主力の自動車事業を展開するマヒンドラ・マヒンドラ社は、インド最大の自動車生産会社であり、イタリアのピニンファリーナ社、フランスのプジョーモーターサイクル社、韓国の双龍自動車社などを子会社に持ちます。自動車以外には、航空宇宙、防衛、クリーンエネルギー、建設機械、農機具、物流、小売、金融保険、不動産などの事業があり、世界中の各拠点では、性別、人種、国籍、宗教、年齢、学歴、職歴などの異なるさまざまな人材が働いています。

https://www.mahindra.com/mahindra-services-and-businesses

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課題

経営資源の中で最も大事なヒューマンリソース。10年先の将来像に向けて、これまで以上に多様化する人材を最大限に活かし、それぞれの事業で目標予算を達成し続けるためには、いま何をやらねばならないのか、経営の重要課題でした。それぞれの事業では、業態特性に応じた日々の改善活動や業務のボトルネック解消に取り組んでいます。例えば、ペーパーレス・人的介入最小化を掲げた水平連携のデジタルサプライチェーン改革、設計開発から製造実行までの垂直統合スマートファクトリー、機械学習とリアルタイムダッシュボードを取り入れた財務・経理業務の効率化・標準化などのプロジェクトが実践されており、すでに本番稼働し効果をあげている事業もあります。これらの「モノ」や「カネ」を軸足としたプロジェクトに共通の施策は、人手の作業をデジタルに置き換えて、企業間・部門間・社員間の情報伝達の速度、精度、粒度、頻度の高度化を目指す取り組みです。マニュアル作業から解放された従業員は、より人間らしく人間にしかできない業務に携わり、さらなる事業パフォーマンスの向上に貢献するという効果が期待されます。その実現には、従業員が、人間らしい仕事に従事し続けられるための継続的な教育が必要です。

全世界25万人の多くを占める一般従業員の就業時間のほとんどは、日々の繰返し業務に費やされています。工場のタクト生産ラインで自動車部品の組付けをしている現場の人は、休憩時間を除けばほとんどの時間はラインで作業をしています。最終検査工程では、担当者は、完成車両の不良や不具合がないかどうか、目検だけでなく診断機やテストベンチで品質の確認をしています。専門業務以外では、就業時間管理、休暇取得、福利厚生、出張、経費精算、年末調整、業績評価、給与・賞与改訂などの主に人事関連の業務に時間が費やされています。

すべての従業員が成長を続けてゆくためには、適切な教育プログラムの提供、受講に必要な時間の確保、加えて本人の受講モチベーションが重要です。経営資源で一番重要な「人」。経営目標を達成するための戦略を人事面から支えて実現させるヒューマンリソースの高度化に向けたプロジェクトが実行されました。

施策

マヒンドラ・グループは人事とタレントマネージメントの両輪を含むヒューマンリソースの高度化のためのデジタルプラットフォームによる運用を開始しました。

  • 世界100か国以上の従業員がストレスなく受講できる多言語に対応
  • 24時間×7日の高信頼性と高可用性
  • ラップトップやデスクトップからのWebアクセス環境menu
  • 通勤途上や出張時の移動時間など、いつでもどこでも利用可能なモバイルアプリ
  • 使いやすくシンプルで直感的な簡単な操作ができるユーザーインターフェース
  • シングルサインオン
  • キーボード入力だけでなく音声入力もサポート
  • 出張申請の自動承認機能の組み込みworkmen
  • 自然言語による問合せ内容の自動解析とオペレーターを介さない自動応答
  • ペーパーレスとすべての情報ソースの一元管理
  • 受講者の経験や知識に合わせたカスタムメイドのトレーニングカリキュラムプログラム
  • トレーニングビデオと関連する教材の一元管理と利用のしやすさ

chatbot

使い易いモバイルアプリケーションのバックエンドのクラウド環境には、人事・給与・タレントマネージメントなどのヒューマンリソース関連のアプリケーションや自然言語解析・対話型人工知能などの先端技術が採用されています。

SAP HCM

効果

ユーザーフレンドリーな仕様であることで特別の操作指導の機会を必要とせず、対象の従業員にスムーズに使ってもらうことができました。2019年2月約14,000人の従業員を対象とした本稼働では、各部門の業務担当者とその上司、人事担当者の業務効率と生産性が大幅に改善されました。

  • 自動承認により8%のコスト削減
  • 処理時間の40%削減
  • 毎月正規社員10人相当の作業量の削減
  • 人事担当者の時間の25%増加

従業員データの一元管理により、ひとりひとりが目標としている自分の将来像と現状を照ら合わし、何が足りなくて、ギャップを埋めるには何をどのような順番で修得し、どの試験に合格すればよいかということが明確になりました。目標に対して道のりが示されることで、自ら進んで学ぶモチベーションが向上しました。また、間接業務の自動化や効率化により、トレーニングに必要な時間を作り出し易い職場環境が整備できました。結果として、今後ますます多様化する人材の能力を最大化するための高度なヒューマンリソースマネージメントを実践するためのスタートを切ることができました。

今後の新規事業や組織変更において、グローバル視点でアサインすべき適切な人材や組織的に足りていない能力の発見と対策を講じることが容易になりました。

経営資源の人にフォーカスしたこのプロジェクトは、目先の改善効果のみならず、中長期戦略の目標を達成するための経営基盤の強化につながり、また従業員が人間として人間らしい働き方ができるビジネス環境づくりであり、持続的成長に直結するデジタルトランスフォーメーションと言えます。

製品やサービスを生み出すのは人、それらを伝えるのも人、経営戦略を作ることやその実行をするのも人です。特にグローバル経営やダイバーシティ経営が求められる一部の日本の企業では、経営課題のひとつとして従業員がより人間らしく働ける環境整備に着手し始めています。海外進出している日本企業の新興国の従業員が同じ未来に向かっているという意識を持つことは、ひいては世界や社会に寄与するものであると考えます。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、マヒンドラ・グループのレビューを受けたものではありません。

出典:SAP Innovation Award 2020 Mahindra