キッコーマンのグローバル人材育成にみる老舗メーカーのDNA(後編)

作成者:鎌田智之投稿日:2013年6月7日

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こんにちは、SAPジャパンの鎌田です。5月24日に東京・霞ヶ関のイイノホール&カンファレンスセンターで開催された「SAP グローバル人材フォーラム2013 第4回 グローバルリーダー育成の取り組み~人事部のあり方と可能性」のセッション内容をレポートする本連載。今回は第1回目の「キッコーマンのグローバル人材育成にみる老舗メーカーのDNA(前編)」でご紹介した理念や計画をもとに、同社が実践している具体的施策についてご紹介します。

前編はこちら:キッコーマンのグローバル人材育成にみる老舗メーカーのDNA(前編)

外国人採用を積極的に推進し、キッコーマンのDNAを共有

274933_h_srgb_s_gl現在、キッコーマングループのグローバル人材育成を構成する具体的施策は、主に「採用」「育成」「適材配置」の3つ取り組みによって構成されています。まず採用では、「外国人採用の強化」と、「海外大学における日本人留学生採用の強化」の2つのポイントがあると松崎氏は説明します。

「外国人は、毎年3名程度を継続的に採用しています。日本への留学生採用と海外の大学からの採用と大きく2つがありますが、日本への留学生からは、2012年度、2013年度はそれぞれ事務系を2名採用しました。2014年度も1名内定しています。海外の大学からは、毎年1~2名を採用しています」

一方、外国人採用・育成の課題として、新卒としての入社時は日本人と同じ育成プランで問題はないものの、キャリアを重ねていくにつれて、その後は日本人とは異なる昇給、昇進モデルを考慮していく必要があると、松崎氏は指摘します。

「日本人は『就職』というより『就社』に近い考え方ですが、外国人の多くはそうした意識は希薄です。それだけに入社時は日本人と分け隔てなく教育して、日本企業であるキッコーマンのDNAを共有してもらうように心がけています。しかし、キャリアを重ねていくにつれて、優秀な人材ほど転職や独立を意識するようになるので、どのように当社にとどまる意識づけをしていくかが今後の課題です」

若手人材の自発性を前提としたキャリア育成制度

育成については、キッコーマングループの施策の中でとりわけ重要なのが、若手を対象とした育成プログラムです。この中で実施されている入社1~4年目、および5~8年目の社員が対象となる「CDP(キャリア デベロップメント プログラム)第Ⅰ期」では、配属先でのOJTに加え、TOEIC 600点達成を義務化、さらには、語学支援や異文化適応研修など、若手の時代から能力を伸ばすためのプログラムが用意されています。

特に松崎氏が強くアピールするのが、2012年12月にスタートしたばかりの「グローバルジョブチャレンジ(GJC)制度」です。若手層によるグローバル人材候補、および将来のマネージメント層となる人材プールの拡大を狙いとするこの制度では、CDP第Ⅰ期の社員から年数名が選抜されます。

この制度の大きな特長は、人事異動でありながらあくまで本人の自発性=参加意思を重視し、その一方で従来の教育・研修にはなかった職責を持たせている点にあると松崎氏は語ります。

「対象者は会社からの指名ではなく公募ですので、あくまで本人の自発的な意思が大前提となります。この受け皿として、海外拠点にGJCポジションと呼ばれるポストを用意しますが、ここでは研修ではなく、あくまで実務担当者としての職責を与えて赴任させます」

ある意味あいまいな「研修」ではなく「仕事」という意識を持ってもらうことで、本人の心構えも格段に違ってきます。責任を担っていればこそ外国でのビジネスのシビアな側面も身をもって体験できるということです。これまで初めて海外に赴任する人材はほとんどがキャリア10年前後で、しかも現地では管理者の役割を期待されていることが少なくありませんでした。しかし、経験のない海外赴任で管理者を務めることには問題も多かっただけに、若いうちから異国の文化に触れ、また職責を持って“修羅場体験”をすることで、将来どこの外国に赴任しても通用するグローバル人材を育てていくことには大きな意味があります。

将来のグローバル経営を支える幹部候補生の育成にも着手

Seagulls flying over rocky beach若手のグローバル人材育成プログラムを充実させる一方で、キッコーマングループでは、すでに将来の経営幹部候補であるキャリア8年目以降の社員に向けた「グローバル経営人材の育成」にも着手しています。

現在実施されているプログラムの1つである「未来創造塾」には、中堅社員の早期選抜研修を行う「未来創造塾Ⅰ」と、経営幹部養成研修の「未来創造塾Ⅱ」の2つのコースがあります。また、この他にも具体的な検討項目として、「社外派遣・留学制度」があると松崎氏は語ります。

「経営を担う人材のレベルになると、単に語学ができるとか仕事ができるだけでは務まりません。各国の現地スタッフや顧客に受け入れられるだけの人格や、現地の社会や文化を理解し、融け込めるだけの度量といった深い人間力が要求されてくるからです」

「社外派遣・留学制度」では、そうした能力を現地に赴いて養ってもらうのが狙いですが、非常にコストもかかるので、具体的にどのように進めていくかを考えるのが今後の大きな課題だといいます。

これら将来に向けた施策にふれて松崎氏は、「私たちのグローバル人材育成の取り組みはまだ緒に就いたばかりですが、キッコーマングループの未来に向けて着実に歩みを進めています。ぜひ皆様からも貴重なご意見やご支援をいただきたいと願っています」と語り、セッションを締めくくりました。

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