インテリジェント・データ・ドリブンな企業になる ~ ロレアル社の6週間チャレンジ

作成者:大滝 明彦 投稿日:2020年7月17日

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世界的な化粧品ブランドを数多く持つロレアル社は、分散した基幹システムとサプライチェーンの計画システムからデータを収集し分析する基盤を、IBMの支援のもと、わずか6週間で構築することができました。
SAP Innovation Awards 2020で表彰された事例から、ロレアル社の成功の秘密をご紹介します。

世界150か国に展開するロレアル社

(本社France, Website: https://www.loreal.com/ ) 

ロレアル社は多様性を尊重する世界中の女性と男性への化粧品の革新を通じて最高のものを提供することを使命として、1世紀以上にわたり、「美」というひとつのビジネスのみに集中してきた化粧品業界のトップ企業です。
  • 美は言語です。
  • 美しさは普遍的です。
  • 美は科学です。
  • 美はコミットメントです。
  • ロレアルは、すべての人に美しさを提供します。
ロレアル社にとって「美」とは言語であり、すべての女性にも男性にも無限の多様性をもつ美しさを提供する普遍的なものであり、科学であり、幸福を向上させるものです。
150か国の市場において、それぞれの特性やニーズを把握し、数十を超えるブランドポートフォリオからベストなブランドミックスを決定し市場に参入する手法は、自社ブランド間での競争を最小化し、ロレアル社のブランド全体の収益を最大化してきたものとして高く評価されてきました。

それらの意思決定の基礎となる情報は数十にもなる基幹システムなどに分散していました。それでも、グローバル全体でデータ収集した時に分析できるようにするため、以前より必要なマスタデータは厳密に管理されていました。しかしながら、近年の激しい市場の変化により、収集して分析できるまで時間を要してしまう環境、また収集したデータが一定のレベルで集約されていて詳細な分析ができにくい状況などがリスクとなってきて、データ分析基盤の刷新のプロジェクトを立ち上げました。

 チャレンジ

20を超えるSAP ERP基幹システムと3つのSAP APOサプライチェーン計画システムのそれぞれでオペレーショナルなデータが「ロック(それぞれのシステムに閉じ込めれた状態)」され、グローバルで利用できるオペレーショナルなビジネス・ビューが簡単に作れないため戦略的なビジネスの意思決定がやりにくい状態となっているという課題が発生していました。

トランザクションデータを素早く分析し理解することは、インテリジェント・データ・ドリブンな企業になるために不可欠なことです。

 ソリューション

すべてアジャイル手法で統合されたITとビジネスの多くの領域の専門知識を持つメンバーを集めたプロジェクトチームを発足しました。

  • 最先端のハイブリッドモデリングとリアルタイムレプリケーション(データ複製)を備えた分析プラットフォーム
  • 既製のクラウドコンポーネントの利用、迅速な開発と展開・運用のためのDevOps(開発と運用の一体化)
  • ユースケースとビジネス価値を重視したアプローチ

3つの成果

4つのユースケースを開発し、最速で展開できました。ユースケースと調和され、再利用可能なオペレーショナルデータが絶えず蓄積されていきます。新しいプロセスマイニング機能により、可視化され実用的なアクションを促すことができます。

成果1 15倍

20を超えるSAP ERPと3つのSAP APOシステムに接続し、データを抽出しデータプラットフォームにコピーするスピードが従来の15倍速くなりました。

成果2 5分30秒

開発した変更を本番可能前の検証環境へ移送することに要する時間は5分30秒です。

成果3 2週間未満

最初のSAPデータのプロセスマイニング・パイロットを展開するのに要した期間は2週間未満でした。

ユーザの声

「我々は初めてサービスレベルを測定することが、すべての地域でリアルタイムにできるようになった。データを集めることに労力を注ぐのでなく、プロセス改善に焦点を当てるができるようになった。」
エルベ L.H.    グループカスタマーケアディレクター

「驚くべきことはこれらのことをたった6週間未満で達成できたことだ!」
アマンディン F.   グループ会計基準とプロジェクト
「アジャイル手法のおかげでプロジェクトのスポンサーたちはプロジェクトの成果と挑戦について明確な視点を持つことができています」
 エレーヌ D.    グループファイナンスプロジェクト&チェンジディレクター

6週間という短期間で大きな成果を産み出せた2つの理由

今回のロレアル社のプロジェクトがアジャイルな手法を活用し、最初から短期間で成果を出すことを狙っていたのは間違いないところです。が、それだけではありません。他にも成功の理由が考えられます。

1.分散したSAP ERP環境下でもグローバルで標準化されたプロセスにより処理されたトランザクションデータ
ユーザの声にあった「サービスレベルを測定する」ためにプロセスマイニングのツールを導入しています。SAPシステムの業務プロセスはいくつものトランザクションが連携して処理されていくものですが、例えば注文を受けて販売し売掛管理から資金回収するまで(Order to Cash)のすべての段階のトランザクションデータには「いつ(時間) 」「だれが(ユーザ)」「何を(処理内容)」したのかということが記録されています。毎日、何万件、何十万件と発生するトランザクションデータを業務プロセスの効率を図るために分析し、「プロセス改善」の領域をデータ分析の結果から特定できました。

2.グローバルで長年管理されきたマスタデータの定義
SAPシステムのトランザクションを形づくる基本的なマスタで言えば、会計の勘定科目マスタ、製品や原材料の品目マスタ、顧客のカスタマ・マスタ、などが一定のレベルでグローバルのチームが理解できる属性情報がないとビジネス・プロセスやビジネス特性として正しく理解できないでしょう。それができていての短期間の成果といえます。
SAP ERPに入力されたトランザクションは単なる過去のデータではありません。このデータという資産をこれから役立つインフォメーションとして活用するためにも、SAPの提供するデータの標準化・プロセスの標準化の基盤をますますご利用いただき、インフォメーション・ドリブン・エンタープライズを目指していきましょう。

  SAP Innovation Awards 2020 ロレアル社
 ※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、ロレアル社のレビューを受けたものではありません。
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