新たなビジネスの可能性をスタートアップと創造するSAP.iO Foundry


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『SAP.iO』が取り組む、“実践型”アクセラレータープログラムとは

ここ数年、日本国内でもスタートアップの躍進が注目を集めており、多くの大企業もアクセラレータープログラムを実施している。SAPもアクセラレータープログラム『SAP.iO Foundry』を提供しているが、他社のプログラムとは本質的な目的が異なるものとなっている。

『SAP.iO』は、SAPがグローバルで展開するスタートアップ支援組織の名称。そこで提供されるプログラムのひとつが、優れたスタートアップを支援するアクセラレータープログラム『SAP.iO Foundry』だ。すでに、サンフランシスコ、ニューヨーク、ベルリン、パリ、テルアビブ、ミュンヘンで展開しており、これまでに250社以上の業界を代表するスタートアップを支援している。SAPジャパンでも『SAP.iO Foundry Tokyo』を2019年からスタート。その後シンガポールも続き、現在は世界8都市で運営されている。

SAP.iO Foundry Tokyoは、年に2回のプログラムを実施。選考を通過したスタートアップが、13週にわたりSAPのビジネスノウハウやシステム活用などを学ぶ。SAP内外のメンターからのアドバイス、SAPのテクノロジーとのAPI等によるプロダクト連携、そしてSAPの顧客層へのアクセスなどが提供される。

『SAP.iO Foundry Tokyo』は、一般的なアクセラレータープログラムとどこが異なるのか。Foundry TokyoのHeadである大山健司氏は、「APIなどを通じたSAP製品との連携が前提なので、すでに自社サービスをローンチして提供している企業を対象にしています」と語る。Tokyo以外のSAP.iO Foundryは、アーリーステージのスタートアップを対象としているが、Tokyoでは特に、「プログラムに参加してもらう段階からパートナーとして捉え、相互のプロダクトを連携させることで一緒にサービスを発展させるというスタンス」だという。実際、プログラム期間中に、SAPメンターの協力を得ながら、複数のSAP顧客へ共同アプローチを行っているため、他のアクセラレータープログラムよりも“実践型”のプログラムと言っていいだろう。

テーマはインダストリー4.0。選ばれた5社がDemo Dayで成果をプレゼン

そんな特徴を持つSAP.iO Foundry Tokyoは、2020年上期が2回目の開催となる。その集大成となるDemo Day(成果発表)が、6月10日に時流を鑑みオンラインで行われた。今回のプログラムのテーマは「インダストリー4.0」。このテーマに合致する事業を手掛けていることが応募の条件となった。

「インダストリー4.0は、製造だけでなく販売や物流、アフターサポートまで、企業の一連のオペレーションを可視化し最適化するという広い意味で使っています。日本はまだスタートアップの数が少ないので、できるだけテーマも幅広く設定した方がいい。お陰で、多種多彩なスタートアップに応募してもらえました」と大山氏。

今回のDemo Dayは同テーマかつ同時期にプログラムを推進していたSAP.iO Foundry Singaporeとの共同開催で、Tokyoからは50社以上の応募の中から選ばれた5社が登壇、Singaporeからも同じく5社が登壇し、それぞれの成果と今後の展開を発表した。自社の技術でどのように製造業を取り巻く現状にイノベーションを起こせるか、また、SAPとはどのような形で連携するのかといった熱のこもったプレゼンだ。なかには、すでにSAP顧客へのアプローチを始めているケースもあった。

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「運ぶを最適化する」スタートアップがプログラムに応募した理由とは

SAP.iO Foundry Tokyoの2020上期プログラムは、この発表を持って一旦、終了となる。実際に参加をして、何を得られたのか。Tokyoへの参加スタートアップ5社のなかの1社であるHacobuのCEO佐々木 太郎氏は「セールスプロセスを含めて、SAPのビジネスモデルを余すことなく学ぶことができたのが最も有意義だった」と語る。

Hacobuは、2015年に設立。物流業界をターゲットに「運ぶを最適化する」をミッションとして、企業間物流の最適化を目指し、IoTとクラウドを統合した物流情報プラットフォーム「MOVO」の提供と様々な物流向けアプリケーションおよびハードウェアの開発や販売を行う。

「弊社のアプリケーションを現場で使っていただくことで、プラットフォーム上に現場の枠を超えた物流のビックデータが蓄積されて、ユーザーに価値を還元できます」と佐々木氏。今回は、SAPのERP製品である「S/4HANA」の受注管理システムと連携、SAPが有する荷主企業のオペレーションデータとモノと⾞両と場所に関わる物流情報が集約されたHacobuのプラットフォームとの連携により、サプライチェーン全体の可視化と物流コストの低減・最適化に取り組んだ。

実は、Hacobuがアクセラレータープログラムに応募したのは今回が初めてだという。すでに、大手トラックメーカーと物流データで連携をしたり、大手ディベロッパーやハウスメーカーなども物流システムの共同構築をしたりしており、もはやアクセラレートされるようなフェーズではないのだ。

ではなぜ、SAPのプログラムに興味を持ったのか。佐々木氏は、「SAPのアクセラレータープログラムは、すでにサービスがあって、いろんな場面で採用されている会社とSAPが協業していくというプログラム。アーリーステージよりはミドル・レイターステージの会社の方が適しています。そこに質の差を感じました」と応募の理由を語る。加えて、「なにより、SAPと連携できる機会があたえられるのは魅力的だった」という。

そして、「SAPのERP(基幹系情報システム)を採用している企業は多い。圧倒的なシェアといってもいいでしょう。このSAPのERP製品を自社の製品に活用することができれば、当然、私たちのサービスも大きく躍進します」と続けた。

しかし、実際にプログラムに参加すると、サービスや製品の連携だけではない、大きなメリットを感じたという。それが前述した「セールスプロセスを含めて、SAPのビジネスモデルを余すことなく学ぶことができたこと」である。

「大変なことも多かったのですが、その分、得たものも大きかった。複数のメンターが、Hacobuの製品の強みを活かすにはSAPの製品やサービスとどう組み合わせればいいかを細かく教えてくれました。また、ビジネスの根幹部分であるSAPの組織作りやセールスマネジメントの様子をみせて頂き、その都度、質問しながら学ばせてもらう機会も。まさに、SAPのノウハウ全てを吸収するといった状況でした」と佐々木氏。

エンタープライズセールスの世界では、高い実績を誇るSAP。その教えを享受することで、Hacobuのセールスマネジメントやパイプライン管理も大きく変わったそうだ。そして、今後の展開について言及した。

「今後は、日用雑貨や食品、化学といったメーカー、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)にもアプローチしていきたい。これまでもお付き合いがあった業種ですが、SAPとの協業という実績があれば、物流だけでなく商談も絡んだより大きな提案ができると思います」

一方、「Hacobuと組むことで、SAPにも新しい価値を提供できたかもしれない」とも語る。SAPもグローバルではEPR製品に組み込む物流モジュールを展開しているが、日本ではこれからの段階。佐々木氏は、「日本仕様の物流モジュールがないのは、物流の専門知識が少ないから。私たちと組むことで、その部分に対して新たな気づきのきっかけになれば嬉しいです」と自信を覗かせる。

大山氏もこの発言を受け、「我々が持っていない技術やノウハウを持つパートナーが増えれば、エコシステムが広がる。SAPの自社プロダクトにこだわらずに引き出しを広げることは、これからのビジネスにおいて重要です。我々のお客様のためにもなりますし、今後のビジネスにもつながります。そういったパートナーと出会えるのが、この取り組みの最大のメリット」と応えた。

2020年下半期プログラムのテーマは「コンシューマー インダストリー」

2020年上期のプログラムでは、Hacobu以外のスタートアップもすでにSAP営業と共同でアプローチしているが、新型コロナウイルスの影響があったため、これから本格化するという。

「2019年の初回のプログラムに参加した、イノービアというスタートアップは、SAPとの協業とお客様への提案が順調に進んでいます。⼯場で作業するすべての作業員のスキルを効果的に管理するSaaSサービスを提供しているのですが、これはSAPの人事系のサービスと相性がよく、SAPと共に複数のお客様との商談が進んでおり、SAP.iO Foundry Tokyoから生まれる最初のケースになりそうです」と大山氏。

2019年下期のプログラムではすでに具体的な成果が見え始め、2020年上期のプログラムも順調なSAP.iO Foundry Tokyo。すでに、2020年下期のプログラムの募集も始まっている。テーマは、食品・消費財の業界にイノベーションを起こす「コンシューマー インダストリー」だ。

大山氏は「新型コロナウイルスの影響によるニューノーマルは、消費者の意識を変えるはずです。消費者が口にする食品や手にする商材を提供している食品・消費財の業界は変革を求められるでしょう。そこには、テクノロジーの活用は欠かせません。新しい時代に向けて、本気で一緒に歩んでいけるパートナーを募集します」と抱負を語る。

募集要項の詳細はこちらで確認が可能だ。自社の製品やサービスとSAPの技術を組み合わせることで、食品・消費財といったコンシューマー向け製品を手掛ける企業の後押しとなるかもしれない。そういったスタートアップは、是非、応募を検討してビジネスの幅を広げるチャレンジをして欲しい。

■関連リンク
SAP.iO ホームページ
SAP.iO Foundry Tokyo 2020年下期プログラム募集開始 プレスリリース
SAP.iO Foundry Tokyo 2020年下期プログラム 応募ページ (締切: 7月23日)

筆者:笹林 司
インタビュー記事を中心に、ビジネス、自動車、最先端技術など、様々な分野の媒体に寄稿。