お客様の「デジタル変革」になくてはならない存在に―SAP NOW|JSUG Focus

作成者:SAP Japan イベント 投稿日:2020年8月13日

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新型コロナウィルスによる感染拡大の防止と社会的情勢に鑑み、例年の物理的な開催からオンライン・イベントへとシフトチェンジしたSAP ジャパンの年次キーカンファレンス「SAP NOW」。2020年のテーマは「DXで日本を立て直す。~事例に学び、ともに創ろう~」。基調講演に登壇したSAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史は、「お客様の『デジタル変革』になくてはならない存在に」と題したセッションで、SAPグローバル、SAPジャパンの戦略とその進捗について紹介しました。

SAP NOWの画面イメージ

回復力・収益性・持続性を同時に達成する「Intelligent Enterprise」をすべてのお客様に

米国オーランドで毎年5月に開催されるSAPPHIRE NOWも、今年は全面的にオンライン化されました。「フロリダまでのフライト不要、時差ボケなし、日本語の字幕付きとオンラインなりの良さを感じられた方も多いのでは?」と笑いを誘った鈴木は、SAPPHIRE NOWのキーワードであり、SAPが2020年のキーワードにも掲げる「Intelligent Enterprise」に言及。SAPは2年前から、すべてのお客様を「Intelligent Enterprise」にすること(インテリジェントエンタープライズ化)を製品戦略の中核に据えてきましたが、この路線をさらに明確にしていきたいとして、引き続きそのためのツール・道具を提供していくことを説明しました。

Intelligent Enterpriseの説明図

そこにあるSAPの目的は?なぜこれらを提供するのかというと、 答えはRESILIENCY(回復力)・PROFITABILITY(収益性)・SUSTAINABILITY(持続性)の3つです。ここで鈴木はSAPPIRE NOW 2020でのキーノートから、SAPのCEOであるクリスチャン・クラインの重要なメッセージを紹介しました。

「Intelligent Enterpriseは、あらゆる側面から驚異的なビジネス成果をもたらします。『回復力』を強化して、困難な時代の企業の舵取りを支援します。『収益性』を売上と利益の両面から強化し、成長を可能とし、生産性を高めます。『サステナビリティ』を強化し、カーボンフットプリントやごみを減らし、循環経済への変革を実現します。Intelligent Enterpriseに生まれ変わることで、これらをすべて同時に達成できます。回復力を高め、サステナビリティに収益力を持たせ、サステナブルな収益性を手に入れることができます。」

SAP CEO クリスチャン・クライン

クリスチャン・クラインの言う回復力・収益性・持続性の3つを兼ね備えていることが、現在、そして将来の企業にとって強く求められており、それを実現する手段が「Intelligent Enterpriseになること」だというわけです。つまり、これを実現するために回復力・収益性・持続性の3つをお客様に提供することが目的なのです。

実際、コロナ禍でいち早くサプライチェーンを再構築し、人が担っていたワークをソフトウェアに代替させ、社員が在宅勤務になっても生産性を保つことができたのは、回復力を備えた企業でした。これからの不確実性の高い時代に、回復力を備えた強靭な企業であることは、消費者から、従業員から、株主から、社会から選ばれる企業であり続けるための必須要件になるでしょう。

収益性については言うまでもありませんが、回復力・収益性に加えて、より一層強く求められるようになるのが持続性です。「今が良ければ20年後のことなんて知らない。そういった考えの企業から製品を買う消費者はどんどん減っていき、やがて淘汰されるでしょう」と鈴木は語り、再びクリスチャン・クラインのメッセージを引用しつつサステナビリティの重要性を強調しました。

「その気になれば、変革を加速できることがわかってきました。この機を逃さず、回復力、収益性だけでなく、サステナビリティも高い企業に生まれ変わりましょう。これは、ビジネスに携わるすべての人の責任です。ビジネスで成功することは重要ですが、同時に我々はコミュニティの一員でもあるのです。若い世代に、どのような地球を残せるのかを決めるのも我々です。幸運にも、舵取りは我々に任されています。この変革を先導しIntelligent Enterpriseを実現すれば、サステナビリティを収益力に、収益力をサステナビリティに結び付けることができます。」

さらにもう一つ、忘れてならない戦略が「カスタマーサクセス」です。SAPでは、営業、システム導入、稼働後のサポートを担当するすべての社員を集約し、お客様のデジタル変革の支援体制を整備。本番稼働後もお客様にしっかりと寄り添い、Intelligent Enterpriseソリューションをフル活用いただくために全力で取り組んでいく考えです。そう、すべては「お客様の成功のため」なのです。

Intelligent Enterpriseはお客様の成功のために

コロナ禍の対応で見えてきた「デジタル対話の重要性」

ところで、SAPジャパン自身はコロナパンデミックにどう対応してきたのでしょうか? 鈴木は、「とにかく前例のない事態であり我々も手探りでした」と振り返り、この苦境をエクスペリエンス・マネジメント(XM)プラットフォームの「Qualtrics」を使って乗り切ったことを報告しました。

COVID-19緊急事態下におけるSAPジャパンの対応:従業員サポート

初期フェーズ

前例のない事態に対応するため、とにかく従業員に会社の決めた方針を伝えるという一方的なコミュニケーションが中心。2月半ばにテレワーク推奨、3月には海外出張を禁止した。

フェーズ2

デジタルを使った双方向のコミュニケーションへとシフト。3月中旬に行った従業員調査で寄せられたリクエストをもとに、制度変更などの対応を実施(経費精算における領収書の原本提出不要、子どものケアに有給休暇のほか傷病休暇を利用可など)。

フェーズ3

4月中旬に2回目の従業員調査を実施。Face to Faceを重視し基本対面で行ってきた全社会議とも言えるAll Hands Meetingを初めてバーチャルで実施。頻度も四半期に一度から毎月に変更し、従業員調査の結果もこの場でフィードバック。従来は400名程度だった参加者が800名に。

こうした従業員サポートを通した学びとして、鈴木は「デジタル対話の重要性を改めて認識しました」と語り、「調査結果から、従業員が今懸念していることや、職種ごとの気分の落ち込み状況、その要因などが見えてくるので、必要なアクションにつなげていくことができます。たとえば、従業員が対話の場を求めていることがわかり、そうした場を設けることで改善できました。インサイトがエンゲージメントを深めるのにいかに役立つかを痛感しました」と説明しました。

今、懸念していることはなんですか?のアンケート結果

SAPでは4月より、コロナ禍にある企業への支援策として、リモートワークに特化したパルスサーベイ「Qualtrics Remote Work Pulse」の無償提供を日本でも開始。7月1日現在、世界で6800社、国内約150社のお客様が利用中で、手軽に従業員の声を収集し、必要なアクションを促すための有益な情報を得られると好評です。

SAPジャパンが掲げる5つの重点施策

セッションの後半では、SAPジャパンの5つの重点施策について、具体的な取り組みが説明されました。その概要は次のとおりです。

重点施策1)ナショナルアジェンダ

日本が抱えるさまざまな社会課題を解決し、日本社会に貢献していく企業であることを目指す。

[具体的な取り組みの例]

  • 特別定額給付金の問い合わせWebサービスの無償提供
    「SAP Cloud Platform」を用いて、住民自らが申請受付状況や給付金振込日をWebサイトから確認できるようにする「特別定額給付金問い合わせWebサービス」を開発。
  • 社会的システム・デジタル化研究会の発足
    OBC、PCA、ミロク情報サービス、弥生、SAPの5社は、会計に関連する業務プロセスのデジタル化を推進することを目的に、社会的システム・デジタル化研究会を発足し、「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」を発表。短期的には、2023年10月のインボイス義務化に向け、標準化された電子インボイスの仕組みの確立に取り組む。
  • ランドログERPの発表
    中小・中堅建設企業向けクラウド型のERPがランドログERP。これにより、建設業界における経営の見える化に向けた課題を解決し、日本の中小企業のDXを現場とバックオフィスの両輪で支援。
  • 中小企業庁のJAPANブランド育成支援等事業の支援
    中小企業庁が本年度実施中のJAPANブランド育成支援等事業においてSAP® Ariba® Discoveryを活用し、中小企業の海外展開を支援。

重点施策2)デジタルエコシステム

SAPジャパンが2018年3月に設立したオープンイノベーションコミュニティ「Business Innovation Network」を中核として、さまざまなコミュニティが有機的に重なり、全体として目的あるイノベーションを推進していく。

[具体的な取り組みの例]

  • Inspired.Lab
    東京大手町にある三菱地所と共同で手がけたビジネス・イノベーション・スペース。オープン以来順調に入居者が増加。
  • SAP.iO Foundry Tokyo
    BtoB分野のスタートアップ企業とSAPによる共創を促進するプログラム。最先端の技術を持ち、小回りの利くスタートアップに対して、SAPのアプリケーションや顧客基盤へのアクセスを積極的に提供することで、新たな顧客価値を提供していく。

重点施策3)日本製インダストリー4.0

もともとインダストリー4.0をけん引する企業として、さらにスコープを広げていく。

[具体的な取り組みの例]

  • Industry 4.Now
    工場内に閉じるのではなく、フロントオフィスからバックオフィスまでサプライチェーン全体をデジタル化するソリューションを提供していく。これを世界に展開するためのハブを世界3拠点に設け、その一つをSAP Labs Japanとして日本に置くことになった。
  • デジタルプラント・イニシアティブ
    デジタル技術を使ったプラントでの新しい働き方を考え実現するべく、プラントを所有する企業30社と経済産業省と共に業種横断で活動を推進

重点施策4)クラウド

企業のクラウド移行を引き続き支援。

[具体的な取り組みの例]

  • ビジネスキャッシュレスの推進
    SAP Concurとの連携により、キャッシュレス決済データそのものが領収書原本を代替できるようになり、領収書が不要に。
  • 最新の人事ソリューション「HXM」の提供
    クラウド人事システム「SAP SuccessFactors」と従業員エンゲージメントシステム「Qualtrics EmployeeXM」をコアソリューションとして、働く人すべてのエクスペリエンスを強化。多様化した従業員、多様化したキャリアパスの中から、全員が最高の成果を生み出せる環境を提供するのが狙い。

重点施策5)エクスペリエンス・マネジメント

従業員とお客様の両方に良質のエクスペリエンスを提供していく。

[具体的な取り組みの例]

  • LIXILにおけるエクスペリエンス・マネジメント
    住宅用建材製品を提供する世界的なリーディングカンパニーのLIXILは、Qualtricsのソリューションを導入し、従業員とカスタマーのエクスペリエンスを一括管理。従業員エンゲージメントの向上や顧客志向のさらなる徹底を図っている。

これらの5つの重点施策を柱に、お客様のデジタル変革になくてはならない存在になることを目指すSAPジャパン。その実践を通じてニッポンの未来を現実のものにしていくためのキーワードに、鈴木は次の3つを挙げます。

  • Customer First:お客様の成功に向けてとことんお付き合いすること
  • Co-innovation:多くのプレーヤーと協働で新たな発想を創り出していくこと
  • One Team:SAPジャパンの従業員が多様性を重視することで一丸となってパワーアップすること

最後に鈴木は、「本番稼働したところで終わりではありません。そのあとに、本当の意味でのデジタル変革のジャーニーが始まります。SAPは製品のみならず、サービスを通じて本番稼働後もお客様にしっかりと寄り添い、SAPのソリューションをフルに活用いただくために、チーム一丸となってサポートしていきます」と抱負を述べ、「SAPジャパンは、日本企業の『デジタル変革』の支援を通じて、変革を目指すすべての人と共にIntelligent Enterpriseを実現し、より良い社会を創るための活動をしていきます」と締めくくりました。

実際の講演は9月11日まで開催中のSAP NOWにご登録いただき、NK-02「お客様の「デジタル変革」になくてはならない存在に」を視聴ください。

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