備えていた企業が成し得た、危機のときにこそ患者の命を守れるしくみ

作成者:松井 昌代 投稿日:2020年10月19日

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本コンテンツのZuellig Pharmaの取り組みは、医療機関を顧客とする医薬品・医療用品流通業者による患者の命を守ることを目的としていることから、どうしても医療業界向けと思われがちですが、一方で命に関わるということで、どなたにも身近に感じていただけるのではと考えました。特に日本の多くの製造業、流通業のビジネス遂行のためのDXのヒントとしてお読みいただくことを願い、ご紹介します。

 

Zuellig Pharma

Zuelligは、20世紀初頭にフィリピンでその産声を上げ、1922年の設立当時は繊維、消費財、ヘルスケア製品、家電製品などさまざまな分野での総合的な代理店事業、流通業者でした。1938年にヘルスケア製品の輸入、マーケティング、流通を専門とする医薬品部門 Zuellig Pharmaを組織し、第二次世界大戦の荒廃ののち、企業を従来の貿易活動を超えてダイナミックな多国籍企業グループに拡大しました、その後Zuellig Pharmaは自律的な事業に発展し、Zuellig Groupの主力事業のひとつになりました。

現在Zuellig Pharmaは、アジア最大のヘルスケアグループのひとつとして、13か国市場でビジネスを展開し、数百万人の命の増大するヘルスケアニーズに応えています。世界トップ10の製薬企業を含む1,000以上の医薬・医療用品メーカーと取引し、320,000以上の医療機関に製品を供給しています。

日本国内だけに目を向けているとなかなか想像し難いですが、彼らの市場は製薬企業から患者までの安全で強固な医薬サプライチェーンが確立された国ばかりではありません。新興国市場でのビジネスでは、正規に製造されたものではない偽造薬に対抗することが求められ、既に彼らはSAPとともにブロックチェーン技術を活用した偽造薬を検出するモバイルアプリケーションを開発しました。そのアプリケーションの展開は自社製品の信頼を高めることに寄与しています。

「安全とは言えない医薬が入り込む余地のある市場」は彼らにとって明らかなビジネスリスクです。そのリスクをテクノロジーで克服していた彼らのサプライチェーン改革はこれだけに留まりませんでした。

そのしくみはRPAでクラウドで

Vancouver, British Columbia, Canada --- Two rows of computers, flat screen monitors --- Image by © Ocean/Corbis

彼らにとっての「次世代のオーダープロセス」とは、患者が待たされることがないように、顧客が必要なものをいつでもすばやく入手することを可能にするものでした。それを実現するために、クラウドでSAP Intelligent Robotic Process Automationを活用することを選び、オーダーを24時間365日処理し、ヘルスケア業界の柱として需要に対応しています。

彼らが実現したことを挙げると、

  • 顧客のオーダーを受け取る手動プロセスをデジタル化し自動化。これまで毎日20名の従業員が電子メールを開き、記載されたオーダーをスプレッドシートにコピーの後しPDFへの変換に依存していた俗人的業務を刷新
  • 担当従業員の休暇やそれに伴う各種理由による遅れの影響なしに、24時間365日これまで以上のオーダーを処理
  • 従業員が会社全体でより付加価値の高いタスクにシフト
  • 世界的なイベントや不測の事態の間も中断することなくオーダー処理を続行
  • オーダー処理をほぼシームレスでタッチレスな環境で遂行
  • 業界規制に準拠し、事前に承認された反復可能なオーダープロセスを使用することでの信頼性向上
  • RPAと光学式文字認識(OCR)を使用して請求書のPDFを読み取り、SAPソリューションでその情報を処理、オーダー受領から支払いまでのエンドツーエンドプロセスを実現
  • 3名のフルタイム従業員がタスクに取り組む場合に必要となるプロセスの監査に必要とする10,000を超えるITおよびシステム関連のケースのバックログ全体をクリア

肝に銘じるべきこと

もう、おわかりいただけたでしょう。彼らの目的はシステムをクラウドにしたことでもRPAを導入することでもなく、それらはあくまで目的を実現するための手段でした。

Zuellig Pharmaは、クラウドでRPAを使用して、オーダーを24時間365日処理し、ヘルスケア業界の柱として需要に対応しています。Covid 19の危機対応のためにSAP Intelligent RPAによって開発されたソースコードを使用して社内の人事管理を開始しました。今日、私たちはパンデミックの中でお客様に医薬品を届けるオーダーの処理を続けることができます

— Daniel Laverick

Head of SAP & IT solution, Zuellig Pharma Holdings Pte. Ltd

 

常日頃私たちは「DXは目的ではなく手段である」とお客様にお伝えし、文字情報としても発信しています。そしてこのZuellig Pharmaの取り組みはまさにそのことを教えてくれています。彼らは、活発な市場で増大するヘルスケアのニーズに応えるという目的、つまり患者に医薬品を届けることにリスクのある市場でそのリスクを克服するという目的のために、「最新のデジタルテクノロジーを取り入れた強固なサプライチェーンプロセスを構築する」という手段を選んだのです。たまたま今年パンデミックが起き、患者の命を守るためにはミスも遅延も許されない、元々彼らが必要とし目指した高度なサプライチェーン基盤が奏功したということです。

Tokyo, Japan --- Tokyo cityscape --- Image by © Iplan/amanaimages/Corbis

今年のパンデミックで物流に大きな支障が生じたことは誰の記憶にも新しく、さらに世界的なイベントの予定もある日本。その点でZuellig Pharmaの取り組みからのインサイトを得ることができます。

しかしそれよりも・・・

私たちはこの日本という平和で安全な国に暮らしています。「平和ボケ」という言葉も耳にします。一方、この国のデジタル化が諸外国に比べて遅れを取っていることは日本政府も認めています。その理由のひとつが平和で安全であること — リスクが少ないこと — であるなら、ともすればそのこと自体を未来に向かうリスクと捉えておくべきでしょう。感謝すると同時に気も抜かない。簡単なことではありません。過去には繁栄を謳歌したのちに衰退した国家もあります。しかし、現代は未来に向かうための手段のひとつとして「人間を助けてくれるのがデジタルテクノロジーと位置付ける」ことで歴史の轍を踏まないことも可能だと考えます。

これからも未来志向のトピックを読者の皆様にご紹介してまいります。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、Zuellig Pharmaのレビューを受けたものではありません。

出典:

Zuellig Pharma ホームページ https://www.zuelligpharma.com

SAP Business Trend                 https://blogs.sap.com/2020/06/05/sap-intelligent-rpa-success-stories-how-can-automation-streamline-customer-orders-during-times-of-disruption-at-zuellig-pharma/

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