快適さと経済性をバランスした新たなカーライフスタイルの広がり

作成者:山﨑 秀一 投稿日:2020年10月19日

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潮流

生活に必要なモノは、購入・所有が当たり前という認識が変わりはじめています。ブランド、デザイン、性能、諸元、価格、支払条件、アフターサービス、同乗する家族の声などをもとに比較検討を行い、購入を決定して所有してきた高額耐久消費財のクルマも例外ではありません。

image自動車産業100年に1度の大変革期のCASEやMaaSの中でも、「脱所有」は多くの市場で浸透しつつあります。ある米国の調査会社のモビリティの進化に関する調査レポートでは、“40%の消費者は移動においてクルマの所有は不要である”と回答しています。そこにはZ世代の55%、ミレニアル世代の45%が当てはまり、推計ではそれぞれ6,500万人、7,300万人となり、今後の巨大な米国自動車市場が大きく変化していくことを示しています。

 

シェアリング

サンフランシスコで産声を上げて、創業から10年を超えたUberの配車サービスは、69か国に事業展開しています。一日あたり2,100万回の移動、一か月に1.1億人の消費者が利用しています。uberスマホアプリで手配から支払まで完結できる手軽さや、乗車アンケートにもとづくドライバー評価や車種情報をもとに自分が乗りたい車を選択できることが、従来のタクシーとは異なります。海外では一般ドライバーが所有・運転している自家用車の配車サービスが普及しています。自家用車での移動における多くのシーンでは、助手席や後部座席は空いており、ドライバーは空気を運んでいる状態です。 自家用車のオーナーは、Uberサイトにドライバー登録を行い、客とのマッチングが成立すれば、空気を運ぶ代わりに客の移動を手助けして報酬を得ることができます。Uberでは、商用車のドライバーと荷主をマッチングさせる事業も開始しています。日本国内では、Uberは許可された地域でタクシー会社と提携をして、タクシーの配車サービスを実施しています。また、飲食店の料理を宅配する配車サービスも展開しています。

日本国内では、レンタカー会社や駐車場運営会社が母体のカーシェアリングが拡大しており、全国47都道府県10,000以上のステーション数でサービスを提供している事業者もあります。従来のレンタカーと比較した利便性には、10~15分単位で利用ができること、給油満タン返しの面倒がないこと、24時間の乗り出し・返却ができること、が挙げられます。利用は、カーシェアメンバ―登録完了後、必要時にスマホやパソコンから予約、ステーションからクルマをピックアップ、運転、ステーションへ返却、オンライン精算という流れです。

カーシェア会社が所有する「わ」ナンバープレートのカーシェアではなく、エンドユーザーが所有している自家用車と利用者をマッチングさせてシェアリングするサービスもはじまっています。海外でUberが展開している自家用車の配車サービスは、運転手はクルマのオーナーであり、利用者は助手席や後部座席に座って目的地まで移動するというものですが、このシェアリングのケースでは、オーナーが駐車場に寝かせている時間に、マッチングをしてシェアリングをするサービスです。自家用車の多くは、ナンバープレートが付いてからの多くの時間を駐車場で過ごしています。眠っているクルマを他人とシェアすることで、オーナーは収入を得ることができます。クルマを必要としている人は、インターネットにアクセスして、利用したい地域から自分の希望とオーナーの利用条件に合致する好みのクルマを選び、予約を入れ、当日は所定の場所でピックアップを行い、用事を済ませたら所定の場所にてクルマを返却、決済と手軽に利用できます。

このように、カーシェアにはいくつかのバリエーションがあり、エンドユーザーは利用目的に応じたサービスをチョイスして、今回の利用が満足でなければ、次回は別の車種や別のサービスからクルマを手配することができる点は、従来の所有では実現できなかった経済的なリスクが小さくて柔軟性の高いクルマの活用と言えます。

 

サブスクリプション

ここからは、同じく「S」ではじまるサブスクリプションについて、欧州自動車メーカー系のサービス内容について触れていきます。

多くの自動車メーカーは、自動車産業大変革期と新型コロナウイルス感染拡大のダブルパンチを受けて、新車販売台数が激減し、来年も売れにくい状況が継続することを予想しています。各社は既存事業の利益を確保するために、いま必要ではないモノ・コトへの投資は凍結し、全社規模でこれまでの仕事の無駄を排除してリーンな業務プロセスを構築し、固定費・間接費・物流費などの原価低減を実践する動きをはじめています。そうした経営を「守る」動きとは別に「攻める」ためには、販売台数を回復させて、今後伸ばしてゆくために新しいクルマの売り方が必要です。その一つの答えが、音楽や雑誌、アパレルの世界では先行している、いまの時代や若い世代のニーズにあわせた従来の現金・ローン・リースとは異なる「サブスクリプション」です。自動車メーカー各社は、新しいクルマの売り方として展開をはじめています。

 

VolvoのSMAVO
日本では3年契約と5年契約で、前者は2年後、後者は3年後に新車へ乗り換えができます。月額定額支払には、車両、保険、パンク、ボディ・ホイール・シートの補償サービス、ドラレコ、点検・整備などのサービスが含まれています。


PorshceのPassportのMulti-Vehicle Subscriptionporscheこちらは、現在日本で一般的に提供されているサブスクリプションとは大きく異なる内容です。2017年のアトランタを手始めに、現在ではUSで4か所とカナダで2か所の地域でサービスが提供されています。特徴は、月次定額方式で22種類のモデルの中から何度でも好きなモデルに乗り換えができることです。実際に利用者の傾向として、月に平均2.5回、50%は自宅で、30%は職場で乗り換えをしています。平日の通勤時はツーシーターのボクスター、週末は家族とドライブでSUVのマカンへ乗り換えるような利用ができます。

Mercedes-BenzのCollectionBMWのAccessなどのサブスクリプションサービスもPorsche同様に乗換え制限がない点が特徴です。

 

構え

今後益々、クルマは所有しないで、シェアリングやサブスクリプションを求めるエンドユーザーが急増してゆくビジネス環境において、各社はいかにタイムリーに魅力的なメニューを提供しつつ高い収益を計上し続けられるかが、モビリティ事業の勝敗を分けると考えます。高い収益力と成長性のためには、なるべく人に依存しないエンドツーエンドのリーンな業務プロセスで生じるデータを一元的にサポートできるデジタル統合情報基盤の活用が前提となると考えます。ではどんなデータやしくみが必要となるのか。

・ 利用者一人ひとりの顧客情報や顧客の声の管理と機械学習を組み込んだ高度なコミュニケーションの自動化

・ 車両一台一台の運行状態監視と予知解析によるダウンタイム最小化と安全・安心の最大化

・ 地域や国などの市場ごとの法制度対応とニーズに速やかに対応できる商取引の自由度の高さ

・ 市場、車種、サービス内容などの任意な切り口による経営者のかじ取りの意思決定の精度、鮮度、頻度の高度化

ちなみにスポーツドライビングが趣味な私としては、ブランド横断で、乗換え制限のないサブスクリプションサービスが日本国内でリリースされることを心待ちにしています。

※本稿は公開情報に基づき筆者が構成したもので、Uber、Porsche、Volvo 、Daimler、BMWのレビューを受けたものではありません。

 

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