OLTPとOLAPを融合し、本来のリアルタイム経営を実現するSAP HANAの技術


読者の皆様、はじめまして。SAPジャパンの松舘と申します。今回から「SAP HANAのテクノロジー解説」として、技術視点から見たSAP HANAについてご紹介させていただこうと思います。最後まで、お付き合いいただければ幸いです。

「真のリアルタイム」の実現を阻む技術上の制約

Network cablesこのブログをご覧の皆様はすでにご存知かと思いますが、創業以来、SAPが提供してきたERP製品「SAP R/3」のRはリアルタイム、3は三層構造を意味しています。この製品名に込められた“リアルタイム”が示すように、SAPでは当初から一貫してお客様のリアルタイム経営の実現に向けた取り組みを行ってきました。しかし、複雑化、巨大化するERPシステムと増加の一途を辿るデータが、リアルタイムの実現という本来の要件を阻むようになってきたのです。

この点については、受発注業務でのトランザクション処理と、受注一覧や受注傾向の分析結果などのレポーティング処理を比較すると明確になります。受注データの登録、更新、削除などを行う実行系であるオンライントランザクション処理(OLTP)は、ERPプラットフォームの機能として問題なく実行できますが、これがデータ検索や集計を伴うレポーティングや分析処理となると、パフォーマンス上の問題から、次第にERP上での実現が難しくなってきました。膨大なデータを対象とした検索および集計では、実際の処理速度に加え、データを格納したディスクへのI/Oがボトルネックとなってきたのです。

そこで登場するのが、レポーティング部分はデータウェアハウス化して、ERPの外側に置いて対応するという形態でした。データウェアハウス側では、オンライン分析処理(OLAP)の仕組みが確立され、事前に想定されるレポートの内容に従い、ディメンション(集計項目)とメジャー(定量値)のセットとして定義された各種のキューブが構成されます。

ERPにおける実行系処理と参照・分析系処理が、OLTPとOLAPに分業される形を取るようになったのは、このような“技術的制約”によるものです。しかし、現在ではスタンダード化しているこの姿は、ユーザーの期待とは大きく逆行するものでした。受注伝票の入力もその一覧表示も、さらに分析レポートも1つのプラットフォーム、1つの管理画面から実施できることが、本来のごく自然な姿です。また、データウェアハウス側へのデータアップロードは、基本的に1日1回の夜間バッチなどで行われる形態が多く、「データ鮮度」という意味でも、満足できるものではありませんでした。

SAP HANAが登場した背景には、このような状況への不満と、新たなテクノロジーによる解決への期待があったのです。

OLTPOLAPの融合=SAP HANA

このような要求への“解”となる動きが、SAP内部でスタートします。SAPの創業者の1人であるハッソ・プラットナー(Hasso Plattner)は、SAPが創業当時から目指していた“真のリアルタイムの実現”というテーマを、自らの最後のライフワークと考え、その基盤となる独自のデータベース開発に乗り出します。その後、幾多の紆余曲折を経て、2010年に発表されたのが、「SAP HANA」(当時の名称は「SAP High-Performance Analytics Appliance」)なのです。

SAP HANAは、メインメモリー上に処理データを保持する「インメモリーデータベース」として、データを列(カラム)指向で処理する「カラム型データベース」という特性を持ち、これらの技術を最大限に活かした「圧倒的な高速性」ですでに広く知られます。

しかし、ビジネスの視点からさらに注目すべきなのが、OLTPとOLAPを1つのデータベース上で実現できる点です。この両者の実現における細かなシステム上の動きは次回ご紹介しますが、1つのデータベース上でOLTP/OLAP機能を実現できることのメリットは、非常に大きなものとなります。

たとえば、コンシューマ向けのオンライン販売を考えた場合、トランザクションとして次々に発生する受注処理を実行しながら、地域別、顧客年齢別の受注傾向を瞬時に分析し、アドホックな形で時間限定のキャンペーンを策定し実施。そして、実施した施策の結果をリアルタイムで評価しながら、次のキャンペーン施策を立てる―、このような処理が可能となります。これまでのような夜間バッチによる集計用データのアップロードを介した運用では、到底実現できなかった「リアルタイム経営」が可能となるのです。2013年2月発表にされた、SAP ERPのバックエンドデータベースとしてSAP HANAを適用した「SAP Business Suite powered by SAP HANA」は、OLTP/OLAPの融合によるメリットを最大限に活かしたERPプラットフォームといえるでしょう。

ここまで一気にご説明してきましたが、読者の皆様にはまだ疑問が残っているのではないでしょうか。一般的なRDBMSに見られる行(ロー)形式での処理が前提となるOLTPと、高速集計処理などに向け列(カラム)形式での処理が有効となるOLAPを、1つのデータベース上にどうやって共存させるかという疑問です。次回以降でご説明させていただくこの仕組みこそが、まさにイノベーションのプラットフォームであるSAP HANAの最大の特長なのです。

次回は、「OLTPとOLAPの融合」について、技術的な視点を交えた少し詳しい解説をさせていただきたいと思います。引き続きご一読いただければ幸いです。

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