銀行業界のディスラプター、Discovery Bank

作成者:前園 曙宏投稿日:2020年10月19日

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南アフリカ発、金融業界の異端児

元々、Discovery Ltd.(以下「Discovery」)は南アフリカを拠点とする金融サービスグループであり、1992年に設立され、従業員数は約13,000人。世界初となる「健康増進型」保険で世界の保険の常識を一変させた南アフリカ発の業界異端児。現在の彼らの主要な金融サービスは、医療保険と生命保険のみならず、投資、貯蓄、カード、銀行へと拡がっています。そして他社に先駆けて構築した行動変容プログラムのプラットフォームとエコシステムが最大の強みとなっています。

2016年、Discoveryはグループ内にDiscovery Bankと呼ばれる新しいエンティティを立ち上げました(以前は、“Discovery Purple Card“というブランド)。そして、2019年に顧客のビヘイビア(行動)に応じた新たな銀行サービスをスタートさせました。Discoveryはビジネスを保険から銀行業に拡大、既存および新規顧客に銀行サービスを提供し、保険で培った行動変容に応じた新たな商品開発に着手したのです。今回は、銀行業に於いても既にディスラプター勢力として注目される存在となったビヘイビアバンキングについて紹介したいと思います。

Discovery

出典:https://www.discovery.co.za/corporate/sustainability-who-we-are

世界初、顧客の行動をベースにしたビヘイビアバンキング

まず、Discovery Bankの多くは、Z世代またはミレニアル世代の顧客と言われています。 

Discovery Bankは、世界で初めて顧客の生活行動(※食生活、フィットネス、禁煙、飲酒など)をベースにした独自の銀行モデル、ビヘイビアバンキングを開発しました。これにより顧客は個人の資産目標を設定し、目標を達成するための行動変容促進を図ることができるようになります。銀行は、顧客がより責任を持って経済的行動に取り組んでいることを認識できれば、デフォルト率を下げ、結果として生じる利益を共有し、個人と社会の両方にとってより大きな経済的価値や活力を生み出すことができるという考えです。

Discoveryは、Behavioral Economics(行動経済学)という新しいビジネスモデルを採用しました。顧客はVitality Moneyと呼ばれるリワードプログラムを通じて、自身の資産状況を評価し、目標の設定を行います。Discovery Bankアプリに組み込まれているこのプログラムで、週毎の目標に対する顧客の進捗状況を追跡し、結果を報告します。ユーザーは随時自身のパフォーマンスを確認することができます。

Vitality Moneyは、目標を達成した顧客に毎週報酬を渡します。継続することで特定のステータスレベルを達成するのに役立つポイントや報酬が付与されます。Discoveryパートナーからは、食品クーポンからフライト、ジムなどさまざまな割引が提供されます。さらに、積極的な活動により、預金や投資のリターン率の上昇やローン金利の優遇などの金銭的見返りも得られる仕組みです。ステータスレベルはダイナミックであり、顧客の行動変容に応じて上下します。ステータスレベルの低下は、通常人々が目標を達成するために金融行動を調整するように動機付けます。

Discovery Bankは、金融サービス会社であるDiscoveryの一部であり、さまざまなブランドを通じて保険や資産管理、および従業員向け福利厚生なども提供しています。また組織は、他の事業分野でも行動報酬モデルを活用しています。

「これは“単なる”リワードプログラムではないことへの注意が重要です。私たちの“プログラム”は、行動の変化に関連しているため、より豊かな社会作りに貢献することができます。これは非常に重要な差別化要因だと思います。」とDiscovery Bankの副CEOであるFrançois Groepeは述べています。また、「Discoveryは真のイノベーション企業です。」とCIOのJérôme Freyは言っています。そして、会長のAdrian Goreは、新商品が定期的にリリースされることに多くの情熱を注いでおり、「Discoveryが立ち止まることはありません。」と言っています。実際、Discovery Bankは、運用開始から6か月以内に、2つの新商品を発表しました。どちらも好評を博しています。

ひとつが Discovery Milesで、顧客は銀行口座を使用して特定の支出活動のオンライン・マイルを受け取ることができます。マイルは取引ごとにリアルタイムで発生するため、顧客は即座にマイ​​ルを通貨に変換し、銀行口座に入金ができます。もうひとつは iStoreという特典で、顧客は新しいApple iPhoneにてより良い行動によって生み出された報酬で利用料金を補填することができます。1か月の行動目標が達成されると、その月の電話料金をカバーするのに十分な報酬を生み出す可能性もあります。目標を達成できない顧客は、通常と同じく請求書通りに自己負担にて料金を支払うだけです。

テクノロジーの活用でより良い顧客サービスが可能に

Discovery Bankは最初のローンチ発表からわずか18か月でシステム稼働しました。強靭で信頼性の高いテクノロジーにより、わずか5分以内で新しい口座開設ができる顧客オンボーディングのための斬新なアプリケーションも容易に開発できました。

Discovery Bankでは、SAP S/4HANA Banking (SAP統合コアバンキングパッケージ)、SAP Customer Experience (旧SAP Hybris) および SAP S/4HANA(財務会計)などが採用されています。SAPのこれらのソリューションを活用することで、顧客毎にパーソナライズされた、世界初の個人の行動に基づいたダイナミック金利モデルを実現しています。また、マーケティングの観点から、SAP Customer Experience (旧SAP Hybris)を実装し、顧客に対するエンゲージメントを自動化しました。この自動化のおかげで、サービスをより一層、一貫性のある形で提供できるようになっています。

「テクノロジーは私たちにとって非常に重要です。迅速で機敏で堅牢でなければなりません。システム構成レベルで非常に高い柔軟性を備えた堅実な製品群が必要でした。」とCIOのJérôme Freyは述べています。

さらにDiscoveryでは、人工知能や機械学習などの急速に発展しているテクノロジーをソリューションに組み込む方法に着手されています。ただし、最も重要なのは、顧客の声に耳を傾け、銀行が顧客に対し可能な限り快適でより良い体験を提供できるようにすることと考えています。

テクノロジーを駆使して金融リテラシーを向上させる方法を構築することは、これからの時代、いかなる銀行にとっても基礎となるはずです。より多くの国内外の金融サービス提供会社が、テクノロジーを駆使して新しく興味深いサービスや商品を模索、開発し、多くの顧客へ提供されることを期待しています。

※本稿は公開情報をもとに筆者が構成したものであり、Discovery及びDiscovery Bankのレビューを受けたものではありません。

出典:Can behavioural banking drive financial literacy and inclusion?

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