キーワードは回復力、収益性、サステナビリティー ~ 2020年 各業界DX取り組み最新状況


前回は、年に一度行われる、世界的な有識者による審査でイノベーティブと認められた取り組みを紹介しました。

SAP Innovation Awards 2020 受賞取り組みから未来を読む

今回は以前と同様、SAPジャパンの業界スペシャリストが選んだ最新のDX取り組みのご紹介です。具体的には、SAP Innovation Awards 受賞者発表後の半年間に公開された、各業界の未来を見据えた取り組みです。

ご紹介は、今年6月のSAPPHIRE NOW Reimaginedで、SAP CEO Christian Kleinの基調講演で明らかにした3つのキーワードをResilience(回復力)、Profitability(収益性)、Sustainability(サステナビリティー)に沿っています。ただし、順番はまず、企業の収益力が活動の源であることから、収益性を支える取り組みから。さらに、いくつかの取り組みがこの3軸のうちの1軸に留まらず、3軸全てを備えているものもあることから、順を追って紹介してまいります。

 

力強い収益性を支えるDX

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未来を見据えた何らかの取り組みをするにしても、必要なのはその原資と、かつ取り組みの成功確度を高めるための企業文化の醸成です。

Discovery Bankの取り組みは、この銀行が顧客を「財布ではなく人間として」捉えていることを強く感じます。顧客は自身のパフォーマンスをモニターし、人間としての幸福を実現することで社会へも貢献できることを論理的に知ることができる、それを彼らが見せてくれています。世界にはこんな金融機関があることを、果たして日本のどれだけの人々がご存じでしょうか。

銀行業界のディスラプター、Discovery Bank(前園 曙宏)

複数の出自が違うフォークリフトメーカーが合体してできたグループ企業KION。しかしただ合体させただけでは開発から生産、また販売やアフターサービス領域でのコスト削減にはほど遠いので、根本からビジネスプロセスを見直しました。ドイツが提唱するインダストリー4.0のゴールのひとつ、Segment of One ものづくりを効率的に行うためのふたつの具体的施策は、同じくものづくり大国ニッポンの多くの企業にとって、ヒントの宝庫です。

KION Groupの長期ビジネス戦略に沿ったデジタル変革(古澤 昌宏)

5G展開が始まろうとしている今が特別なのではなく、ビジネス環境が常に急激な変化にさらされている通信業界。世界の大手通信業の一角である英国Vodafoneは、2000年代からの長きに渡る企業変革の取り組みの仕上げの手段としてSAP ECC 6.0からSAP S/4HANAに移行を実施。次世代経営基盤構築によって今後のビジネス展開に向けた構えを増強しました。

VodafoneSAP S/4HANAをてこにしたインテリジェントエンタープライズの実現(久松 正和)

自動車産業100年に一度の大変革期では、語るべきテーマに困ることは全くありません。今回は「脱所有」をテーマに、クルマを愛するユーザーの視点から、企業がユーザーに選ばれるためになすべきことは何か、そのために採るべき施策を先進する企業の取り組みから読み解きます。

快適さと経済性をバランスした新たなカーライフスタイルの広がり(山﨑 秀一)

リチウムイオン電池の製造販売における業界トップに君臨する、寧徳時代新能源科技股份有限公司(CATL)。創業後6年でトップに昇り詰めた躍進を支えたビジョンとその歩みから、世界の自動車メーカーに選ばれる理由を探ってみました。昨今の温室効果ガス削減に向けた世界的機運の高まりによって、世界中の企業にこれまでとは異なるマインドセットが求められています。先を行くCATLからは何らかのインサイトが見出せるはずです。

世界が求める環境改善への想いが躍進の原動力(柳浦 健一郎)

 

2020年、世界が新たに注目するのは回復力

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いまだ続く新型コロナウィルスの流行とその感染拡大を阻止するための経済活動への影響は、いうまでもなく21世紀の世界の歴史に残る事件です。ここからご紹介する企業や組織は、その原資の維持・確保のための収益力持続の取り組みだけでなく、突然起きた新型コロナウィルスへの対応のスムーズさにおいても特筆すべきものがある、いわゆる”回復力の高い”企業です。取り組みをご紹介するにあたり、何がそれを可能にしたのか、元々彼らが置かれている環境や企業文化にその解を探りました。

フロリダ州オーランド市といえばウォルト・ディズニー・ワールド。SAPのお客様にとっては昨年まで毎年SAPPHIRE NOWが開催されていたオレンジ・カウンティー・コンベンション・センターがある街です。世界有数の観光都市として人の往来の激しいこの街の住民サービスには、ひときわ迅速な新型コロナウィルス対応が求められました。

利用者の声をもとに、「使えるものは使う」方針で(桃木 継之助)

面積は日本の北海道よりも少し小さい、オーストラリア、タスマニア州。起伏の多い広大な地域に住む住民に電力を供給するハイドロ・タスマニアは、これまでにもSAP製品を活用した様々な取り組みを行っています。2020年、導入プロジェクトのさなか、新型コロナウィルス対応のために政府からはリモートワークへの強い指示が来たときに彼らはどのように乗り切ったのか。それを可能にしたシステム技術とは。元来「密」なコミュニケーションが求められるプロジェクト運営に必見の取り組みです。

ハイドロ・タスマニア: リモートワーク環境下での SAP S/4HANA プロジェクトの実施と稼働(田積 まどか)

アジア最大のヘルスケアグループのひとつとして、13か国市場でビジネスを展開しているZuellig Pharma。日本だけを見ていては想像が難しい、新興国市場ならではの課題に対応していたデジタル活用の経験が、実際に不測の事態が起きたときでも、患者の命を守る彼ら本来のミッション完遂を可能にしました。これからも、それぞれの国で想定外の普段とは違うことが起き得ます。あなたならどうしますか?

備えていた企業が成し得た、危機のときにこそ患者の命を守れるしくみ(松井 昌代)

 

収益性とサステナビリティーの両立は可能

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さらに、収益性や回復力に加えて、サステナビリティーも明確に事業戦略のひとつに加え、具体的に状況をモニタリングしている企業も現れました。

北欧デンマーク生まれのグローバル建築資材メーカー、ベルックスの3軸揃った取り組みは、業界を超えてどなたにも圧巻です。しかもその取り組みを惜しげもなく公開していることに、社会性を重視する彼らの姿勢と、だからこそ顧客である建設業界、ひいては未来に選ばれる企業であることを感じ取っていただけるでしょう。

ベルックス(VELUX)社が選ばれ続ける理由(土屋 貴広)

鉱山業界に対する先入観を完全に覆されただけでなく、企業の矜恃をカタチにしたらこうなると思わせてくれるのが、西オーストラリア州ロイヒルの数々の取り組みです。性別を問わず、人が働きたいと思う企業。それこそが未来に選ばれる企業の条件です。企業のビジョンを単なるお題目とせず、実際にカタチにするために考え抜かれた戦略と戦術、そしてアクションプラン。いかなる企業でも学べるお手本がここにあります。

マージンを最大化し続けるロイヒルのインテリジェント・サプライチェーン・フォー・アセット(東 良太)

 

さらなる難題へも果敢に

サステナビリティーという分野の代表的なテーマであり、かつ難題でもあるCO2排出削減問題への対応に、SAPは具体的に取り組んでいます。企業の社会的責任のひとつとしてCO2削減の取り組み状況を可視化するソリューションでは、バリュー・チェーン最上流の化学業界をモデルにイメージしやすいデモでご紹介をすることで、さらなる議論を始めようとしています。

気候変動への対策 − SAPソリューションが貢献できること(竹川 直樹)

学校の授業のオンライン化だけが教育分野における将来に向けた課題ではありません。SAPではCSR活動の一環として、次世代人材の育成活動を積極的に行っています。未来を誰にとっても喜びのあるものに変えていくためには若者たちに負うところが大であり、今その若者に希望と喜びを感じてもらうことは、企業として大人としての重要なミッションです。私たちにはそのために考え抜かれ磨き抜かれた手法とツールがあります。

ビジネス × IT教育を通じた高校生のキャリア形成支援(横山 浩実)

 

まとめ

このブログシリーズをお読みになっているのは、SAP製品をお使いいただいている、あるいはご検討中の企業に所属する社員の方が多いと認識しています。回復力、収益力、持続性。これからの人生100年時代、しかもいつ不測の事態が起きるかもしれないことを経験した今、一人ひとりが社会の一員として、それぞれの置かれた立場でこの3軸を考え決断していかなければならないことはお感じいただけるでしょう。ぜひ取り組み企業の社員としてでなく、ひとりの人間として、ご自身ならどうするかという視点でお読みいただければ幸いです。きっとそのことが皆様の組織にとってもプラスとなることを信じて。