SAP HR Connect Autumn 2020 DAY2|加速するSAPのデジタルトランスフォーメーションと人事制度改革

作成者:SAP Japan イベント投稿日:2020年11月13日

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2020年10月26日~30日の5日間、オンラインで開催された「SAP HR Connect Autumn 2020」。本稿では、DAY2(10月27日)に行われたSAPジャパン株式会社 常務執行役員 人事本部長のOlga Zgurskaya(オリガ・ズグルスカヤ)と、人事本部 HRビジネスパートナー・リードの石山 恵里子による「加速するSAPのデジタルトランスフォーメーションと人事制度改革」をご紹介します。人事部門が企業変革のドライバーとなり得る事例として、SAPのHRデジタルトランスフォーメーションと、人事制度の改革が参考になれば幸いです。

SAPジャパン株式会社 常務執行役員 人事本部長 Olga Zgurskaya(オリガ・ズグルスカヤ)

SAPジャパン株式会社 常務執行役員 人事本部長 Olga Zgurskaya(オリガ・ズグルスカヤ)

SAPの HRトランスフォーメーション

オリガはSAPにおけるHRチームを「極めて若く、多様性に富んだ、まさにグローバルなチーム。そして、良い意味で非常に「破壊的」な存在です。毎年数多くのイノベーションを導入し、2019年だけでもHR領域で100件近くのクラウドサービスを稼働させました。従業員から受けた要望は数十万件に及びます。毎年生み出す機会や、進めているプロジェクトがこの数だけあるということです。」と紹介しました(図1)。

図1:Fast Facts SAP HR

図1:Fast Facts SAP HR

続けてオリガは、これほど数多くの変革を推進するにあたっての優先順位を決める指針として、SAP HRの3つの原則を紹介。「一つ目はシンプル化。二つ目は標準化、そして三つ目が顧客である従業員の満足度です。どのような変革を進めるにせよ、チームにシンプルさをもたらし、スケールアップを助け、最終的に品質を高めるものでなければならないのです。」と述べました。

そしてオリガはその成功要因として、グローバルのHRオペレーションを集約した「シェアードサービスセンター(SSC)」と、「クラウド」を挙げました。SSCは現在、プラハとマニラの2拠点に統合。地域ごとの対応を最小化し、HRビジネスパートナーとセンター・オブ・エクセレンス機能との3つの柱により、HRのグローバル化を実現しました。また、クラウド化は従来に比べ劇的なスケールアップを実現、現在ではクラウド上にあらゆる問題に対応するソリューションを備え、HR部門はそれらを活用して“Capability Building”に基づき、社員に対して「経験」にフォーカスしたサービス提供を行っています(図2)。

図2:人事部門の“Capability Building”にフォーカスした継続的なHRトランスフォーメーション

図2:人事部門の“Capability Building”にフォーカスした継続的なHRトランスフォーメーション

これらを支えるテクノロジーについてオリガは「サービスはPCとモバイルの双方で利用することができますが、最も大切なのは、提供する全てのサービスにおいて極めて高度で俊敏性に富んだ技術を構築しているということです。」として、「例えば、AI、機械学習。音声アシスタント、またパーソナルアシスタントやチャットボットも導入。サービスは継続的に改善し、イノベーションを採り入れています。」と語りました(図3)。

図3:インテリジェント・データドリブン・HRシステム

図3:インテリジェント・データドリブン・HRシステム

オリガは今後について、「求めているのは人事業務を通じて機能横断的なインパクトを事業に与えることができているのかのデータ測定」と語り、「現在、従業員の経験と業務データを組み合わせる取り組みに重点を置いています。この統合データを利用し、ダイバーシティやインクルージョンなどの主要指標を特定し、組織全体の健全度を把握したい。」と抱負を述べました。

図4:HRサクセスを測定するための三段階のアプローチ

図4:HRサクセスを測定するための三段階のアプローチ


SAPジャパン株式会社 人事本部 HRビジネスパートナー・リード 石山 恵里子

SAPジャパン株式会社 人事本部 HRビジネスパートナー・リード 石山 恵里子

SAPのHRデジタルトランスフォーメーション

続いては、SAPジャパン株式会社 人事本部 HRビジネスパートナー・リードの石山 恵里子が、SAPのHRの変遷について「SAPでは2012年から2013年にかけてSuccessFactorsの提供企業を買収、そのインテグレートと共に、人事制度の変革を進めてきました。現在では人事オペレーションのフルクラウド化が完了、最新の人事トレンドを取り入れながら新たな施策をデジタル活用と共に推進しています。」と紹介しました(図5)。

図5:SAPのHRデジタルトランスフォーメーション

図5:SAPのHRデジタルトランスフォーメーション

そして以下、人事制度の変革における大きなトピックであった「ジョブ型人事制度(2012年)」、「グローバル報酬制度(2013年)」、そして「対話によるパフォーマンスマネジメント(レイティングしない評価制度/2016年)」の導入について解説します。

ジョブ型人事制度(Global Job Architecture)

SAPではグローバルで以下のジョブアーキテクチャが採用されています(図6)。

図6:SAPのジョブ型人事制度(Global Job Architecture)

図6:SAPのジョブ型人事制度(Global Job Architecture)

営業、人事などの大きな括りである「Functional Area」の中に、職務内容が近い専門分野で構成される「Job Family」があり、さらにその中に「Global Job Titles」があります。「Job Familyは報酬など市場比較ができるように、SAP固有ではない市場で利用されているものをベースにしています。また、Job Titlesにはピープルマネージャーとスペシャリストの選択が可能で、それぞれのJobはグレードごとに採用や育成、報酬の基本となるProfile(=Description)を有しています。この情報は全世界共通、すべての社員に公開されており、自律的に自身の進みたいキャリアへのチャレンジが可能です。」(石山)

報酬制度については、2012年~2013年にジョブグレードと給与レンジのリンケージを行いました。そのコンセプトはグローバルで統一した上で、報酬額は地域ごとの市場に基づいて決定されます。

Job Profileは下図の5つの情報から構成され、石山は「Job Profileには各ジョブの定義からスキルや知識、バックグラウンド、特有の成功要因などに至るまで詳細に記載されているため、最適な人財を社内から、あるいは社外からのハイアリングにそのまま使用することも可能です(図7)。」と、その特徴を説明しました。

図7:Job Profileの構成要素

図7:Job Profileの構成要素

このGlobal Job Architectureは人事関連のみならず、報酬、タレント育成、財務・経理、戦略的な要員計画、コンサルティングビジネスのリソースマネジメント、各国のベネフィット対象者、社内ツールやシステムへのアクセス権といったさまざまな人にまつわる事項のグローバル標準フレームワークとして機能しています。

評価制度の変化~SAP Talk

2016年以前は、5段階のパフォーマンスと3段階のポテンシャルによるマトリクスが存在し、年2回の評価面談を実施するグローバル統一の評価制度でタレント管理を行っていました。石山はこの評価方法の課題として「見える化には効果的でしたが、社内の競争意識を煽ってしまう、上位と下位のメンバーが固定化し中間層に手が入らない、さらに優秀な人員も会社からの次のポストへの異動を待つだけで自主性が育たない側面がありました。」と語りました。

そこで、2017年から採用した新たなパフォーマンスマネジメントが”SAP Talk”です(図8)。このレイティングを行わない、対話による新たな取り組みの目的を、石山は「『レイティングされてしまうと人は成長する意欲が沸かない』という脳科学の考え方を基に、コーチングやティーチングなど、モチベーションや成長意欲を向上させる対話を日常的に継続することでパフォーマンスを向上させていくものです。従来、年2回の面談機会を少なくとも四半期に一度と設定しましたが、実際にはさらに頻繁に対話がなされています。」と語りました。

図8:対話によるパフォーマンスマネジメント“SAP Talk”

図8:対話によるパフォーマンスマネジメント“SAP Talk”

そして「ピープルマネージャーに対しては心理的な安全性を担保する対話のための教育やトレーニングが施され、マネージャーとメンバーの同意のもとで、期中に目標設定を変えることも可能です。さらに、報酬についてはマネージャーの裁量を増やし、Pay for Performanceの徹底により、適切なCompensation Planningが実施できるようにしています。」と解説しました。

また、この変革に伴い、これまでの「評価委員会」が「タレントラウンドテーブル」に変更されました。石山はこの目的を「これはチーム内のタレントをどのように育成するかを徹底的に議論する場。従来は『Fast Tracker=早期に成長を遂げる人』の育成に力を入れていたのに対し、現在では『Catalyst=フレキシブルに組織の変革をけん引する、触媒となる人財』の育成に注力しています。」と語ります。

女性、若手などダイバーシティにも配慮しながら、リテンションリスクとその人材を失った場合のビジネスインパクトでマトリクスし、現状を見える化。石山はこの変革の効果を「場合によってはマイナスに働く社内の競争意識が大きく変わり、全員がタレントとして自ら変革する意識を高め、組織としての多様性と持続可能性も高まる」と述べました。

これら、パフォーマンスマネジメントの新旧比較をまとめたものが以下の表です(図9)。

図9:SAPパフォーマンスマネジメントの新旧比較

図9:SAPパフォーマンスマネジメントの新旧比較

ここで石山はトピックスとして、”SAP Talk”のアジャイル型の導入プロセスを次のように紹介しました。「評価制度の非常に大規模かつグローバルな変革ですが、SAPでは導入しながら改善するアジャイル型で実行しました。アーリーアダプター8,000人で早期導入し、その後に参加社員からのフィードバックを基に改良。約1年後に本格導入としました。実に9割近い従業員が継続、有用性を実感しており、早期参加したマネージャーは、サーベイにおいて不参加のマネージャーよりも高い信頼スコアを獲得しています。」

キャリア開発のパラダイムシフトとSAPのラーニングモデル

キャリア開発について石山は「従来の熟練型から、変化に対応可能な俊敏性へのパラダイムシフトが起きており、平均寿命が長くなるにつれ、学習と適応のサイクルを続けることで長く働ける考え方をSAPでも取り入れている」と述べました。その上で、現在のロールからいずれ自動化されるであろう仕事をマイナスし、新たな知識やスキルの深耕と拡張をプラスしていく、定期的なアップスキルとレスキルが必要として、SAPの継続的なラーニングモデルを紹介しました(図10)。

図10:SAPの継続的なラーニングモデル

図10:SAPの継続的なラーニングモデル

70%は経験から、10%はSAP SuccessFactorsからJobに応じてレコメンドされる教育、そして20%は仲間との共有やコラボレーションで学ぶスタイルになっています。

そして、SAPではグローバルでのすべての空きポジションを従業員が自由に検索できる仕組みが提供されています。現在のJobを1年以上経験すれば応募ができ、Job Changeが認められればマネージャーには拒否権がありません。

最後に

これまで紹介したサービスを始め、SAPではさまざまなHRサービスがクラウドから提供されています(図11)。

図11:クラウド上で展開されるさまざまなHRサービス

図11:クラウド上で展開されるさまざまなHRサービス

SAPでは、この効果についての5年間のサマリを公表。従業員エンゲージメント、ビジネスヘルス、リーダシップトラストのいずれも高い数値で推移しており、方向性が正しいことが見て取れます。

石山は最後に「こうしたDXの推進によって、SAPでは人のモチベーション、成長意欲、心理的安全性といった、より人間的な部分に注力できるようになりました。今後はさらに良い経験をクリエイトしながら、個人の貢献からチームの力へと変革を進めていきます。」と結びました。

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