SAP HR Connect Autumn 2020 DAY3|ニューノーマルヒューマンマネジメント―HR Techを企業が今、活用するべき5つの論点

作成者:SAP Japan イベント投稿日:2020年11月13日

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2020年10月26日~30日の5日間、オンラインで開催された「SAP HR Connect Autumn 2020」。本稿ではDAY3(10月28日)に行われた日本アイ・ビー・エム株式会社でタレント&トランスフォーメーション アソシエイトパートナーを務める久保田 勇輝 氏による「ニューノーマルヒューマンマネジメント~HR Techを企業が今、活用するべき5つの論点」をご紹介します。タレントマネジメント、AI、エンゲージメント、アフターコロナ、2025年の崖・・・さまざまな人事を取り巻くワードが飛び交う昨今。それら事象の本当の意味合いと関連性に加え、HR Techをいかに活用すれば良いのかを、事例を交えて解説します。

日本アイ・ビー・エム株式会社 タレント&トランスフォーメーション アソシエイトパートナー 久保田 勇輝 氏

日本アイ・ビー・エム株式会社 タレント&トランスフォーメーション アソシエイトパートナー 久保田 勇輝 氏

冒頭、久保田氏はIBMの取り組みを紹介。IBMでは「Talent & Transformation」を軸に、戦略・プロセス・システムにおける日本およびグローバル企業の課題を解決する、エンドツーエンドのサービスを提供しているとして、「コンサルティングとしての実績だけでなく、IBM自体の先進的・実験的取り組みから得た知見を基に『教科書に留まらない』価値を提供する」と、その特長を紹介しました(図1)。

図1:「IBM Talent & Transformation」

図1:「IBM Talent & Transformation」

HR Techを企業がいま、活用する上での5つの論点

久保田氏は、「今まで予測しえなかったことや先の未来だと思っていたことが現実のものとなり、各社の人事担当者を悩ませている」として、以下の5つの論点と、それにまつわるキーワードを挙げました。

  1. 日本型雇用の限界 ~ Job型雇用(タレントマネジメント)
  2. AIの実用化 ~ POC(お試し)
  3. ニューノーマル ~ 従業員エクスペリエンス
  4. 2025年の崖 ~ 業務標準化
  5. ERPの老朽化 ~ クラウド

久保田氏は「これら一見すると“解決策”に思えるキーワードが、実際は理解が不十分なことで“バズワード化”しているのではないか」との懸念を示しました。

HR Techの活用(1) 日本型雇用の限界~Job型雇用(タレントマネジメント)

5つの論点の1つ目、Job型雇用とタレントマネジメントで本来、解決したいことは「適材適所」。その本質は「事業をけん引するのに必要な人財の定義と、足りないものを明確化してそれを埋めること、そして従業員に認識させること」にあります。久保田氏は「現在だけでなく、未来:今後の事業変革に対応できる人財への準備という、2つの取り組みを行う必要があります。」と語りました。

まず「現在」必要な人財の定義として、「職種」と「スキル」の明確化と、それが企業内できちんと「オーソライズされている」ことが重要、と久保田氏は語りました。(図2)。

図2:「職種」と「スキル」の明確化が鍵

図2:「職種」と「スキル」の明確化が鍵

久保田氏は「IBMでは、グローバルで事業に応じて、職種の統一された定義があり、さらにはその職種を担うために必要なスキルが以下のように定義されている」として、下の図を示しました(図3)。

図3:IBMにおける職種とスキルの定義

図3:IBMにおける職種とスキルの定義

次に久保田氏は、「未来」に備えるタレントマネジメントのあり方を「次々と新たなテクノロジが生まれ、それを事業として取り込む際も、その『職種』『スキル』の定義がキーになり、事業に紐づけて行うことが成功の近道」と語りました。その際、人材の外部市場からの調達にばかり目が行きがちですが、実際に事業として推進する際、その多くは社内からの調達・育成になります。故に「外部からの獲得のみならず、社内人材への育成、教育の取り組みも欠かせない」と久保田氏は指摘しました。

さらに久保田氏は、未来を見据えた施策として「外部からは市場の報酬基準に合わせて雇用する必要があり、社内の報酬水準とのバランスが問題になるケースも多い。いかにして受け止める人事制度を作っておくかが鍵となる。社内における育成については、新たなテクノロジが生まれた段階で準備を行っておくことが必要。」と語りました(図4)。

図4:未来にむけてのレイヤごとの取り組み

図4:未来にむけてのレイヤごとの取り組み

新たな事業においても既存事業と同様、「キーポジション」とその要件、「職種(体系)」「等級・マネジメント」「ポジション」「職務定義」そして「スキルコンピテンシー」が、整合性を持って整える必要があります。「これらをタレントマネジメントシステムにきちんと落とし込み、見える化することで具体的なアクションが取れるようなり、はじめて事業として推進することが可能になる」と久保田氏は語りました(図5)。

図5:タレントマネジメントにおける事業に紐づく職種とスキル定義

図5:タレントマネジメントにおける事業に紐づく職種とスキル定義

久保田氏は、改めて「JOB型雇用=適材適所の実現のためのタレントマネジメント実行には、『職種』と『スキル』の定義がなされなければ、魂がこもらない」と結びました。

HR Techの活用(2) AIの実用化~POC

2つ目の論点はAI活用。「AIの実用化のためのPOC、とよく言われますが、その本来解決したいことは人事業務の高度化です。」と定義する久保田氏は「IBMでは、人事においてAIを『Interface』『Automation』『Inference』で活用している。いずれも単なる定型業務の自動化だけでなく、従来は人が行ってきた業務の代替や、高度化を支援するものが実用化されてきている。」と紹介しました(図6)。

図6:IBMにおける人事領域のAI活用

図6:IBMにおける人事領域のAI活用

中でもスキル推論については、これまで活用が難しかった文章データのテキストマイニングにより、AIがスキル辞書にマッチングし、従業員ごとのスキルとレベルをスコアリングする仕組みが実用化されてきていると紹介。その効果を久保田氏は「スキル情報収集リードタイムが1日に短縮され、スキル有無の判定精度も約95%を実現。従業員自身のメンテナンスを必要とせず、ビジネスのトレンドに対応したすばやいチーミングや適正配分に活用可能」と述べました(図7)。

図7:AI活用によるスキル推論の自動化

図7:AI活用によるスキル推論の自動化

続けて久保田氏は「AI実用化、高度な人事業務での活用には、その分析に必要となるデータの種類と量があることが前提です。あるべき姿、必要なデータを予測し、AIが人の判断に近づき、上回るようになるには、新たなデータの蓄積が必要であり、未来を見据えた準備として、今すぐにデータを収集し始める必要があるのです。」と説きました(図8)。

図8:AI活用による人事業務高度化のStep

図8:AI活用による人事業務高度化のStep

HR Techの活用(3) ニューノーマル~従業員エクスペリエンス

3つ目の論点はニューノーマルにおける、従業員エクスペリエンス。アフターコロナではこれまでとは異なる従業員とのコミュニケーション、エンゲージメント向上の施策が求められます。久保田氏は、コロナ禍における企業の悩みとして以下の3点を挙げ、具体的なHR Techの活用法を解説しました。

課題1:リモートワークが主体となった場合に所属長が部下の業務管理、指示を行う方法が見えにくくなる。

この課題に対し久保田氏は、オンラインOneOnOneの必要性を説きました。「Slack や Microsoft Teamsなどのフロー型のツールではなく、アクティビティごとに上司と部下がコミュニケーションする『オンラインOneOnOne』の仕組みを持つことで、見える化、蓄積と振り返りが可能です。」

課題2:オフラインコミュニケーションが減り、従業員の本音の把握や、顔色確認ができない。

これについて久保田氏はエンゲージメントサーベイ、月1回ほどのパルスサーベイ、そして360度評価などの実施の必要性を説きます。そして「その際は、他部署と自部門の違いを把握し、客観的に相対比較することが重要。そうすることで人事部門も、マネージャー自身も最適なアクションを取ることができるようになる。」と語りました。

課題3:OJTや集合研修がオンラインに代わり、ラーニングコンテンツが増え、提供の仕方がわからない。

これについて久保田氏は、IBMでの取り組みを紹介。「IBMでは年間学習時間目標を明確に提示して人事評価と紐づけしており、さらに、AIによる従業員へのレコメンデーションを行うことで社内の学習の文化を創出しています。」と紹介しました。

これらの施策はいずれも今後、オンライン(デジタル)とオフライン(対面)の両立が求められ、状況により最適なアクションが変わると予想されます。そのために久保田氏は「まずはライトに施策を実施し、従業員からのフィードバックを受けて改善案を企画、実施するPDCAのサイクルを早めに廻すこと」が成功の鍵であり、今後の潮流となると語りました。

HR Techの活用(4) 2025年の崖~業務標準化

4つ目の議題は2025年の崖に対応する業務標準化。この本質は「労働人口が減少するため、リソースの選択と集中を行わければ事業が継続できない」ということを意味します。

久保田氏は、多くの企業から寄せられる悩みとして、次の3つを紹介。

悩みその1:職人技の引継ぎ不在 属人的な職人技業務の引継ぎ人材がいない
悩みその2:税法など法改正、電子化が進むことへの業務やシステム追従が重荷
悩みその3:リモートでの人事サービス提供が要員確保、ノウハウを含めて準備できない

そしてこれらの悩みに対し「アウトソーシングは非常に有効ではあるものの、固有のシステムを利用しているが故に、外出しできるオペレーション領域が狭まり、効果が最大化できないケースが多くみられます。これを解消するには業務、システムを『自社保有のもの』として考えるのはなく、『サービスを利用する』形に切り替える必要があります。」と述べました。

IBMでは、人事、給与、勤怠、電子申請、年末調整申告、電子申告(e-Gov/eLTax)を業務・システムを融合させたサービス化した「BPaaS」を提供しています(図9)。久保田氏は、その導入効果として「これまでの効率化、標準化での解決ではなく、サービス化を行うことで抜本的な解決が実現します。」と語りました。

図9:IBMが提供するBPaaSのメリット

図9:IBMが提供するBPaaSのメリット

HR Techの活用(5) ERPの老朽化~クラウド

5つ目の議題はERP老朽化への対応。これはクラウド化だけでは解消されず、本来目的は、投資最適を図りたいということです。これに対する昨今の潮流は、ガートナーが提唱する「ポストモダンERP」という考え方。コアのERPを中心に、不足する機能をSaaS製品との組み合わせなどで構成し、アドオンの肥大化や専門領域に対するサービスの恩恵を受け、業務の最適化、高度化、コストの最適化を図るというものです。

久保田氏はこれに対し「HR-Techが盛んなアメリカでは、タレントマネジメント、データ活用の領域で『餅は餅屋』のソリューションが多く存在し、複数のソリューションを組み合わせて活用する傾向にあり、IBMも同様。しかし、日本においては外国産パッケージと日本業務の乖離がより顕著になっていることから、『最適ソリューション構成』を考える企業が少しずつ増えてきている」と解説。また、「SaaSにより個社導入のコストをかけなくてもビジネスモデルが成り立つようになってきているため、徐々にではあるが領域特化、付加価値重視のサービスを使うことで、コスト最適化を図る企業が増えてきている」と話しました。

久保田氏はある企業でのコンサルティング事例を紹介。「従来は一つのシステムで構築されていた人事、給与、福利厚生のシステムを敢えて切り離し、ファイル連携やAPIでのリアルタイム連携を行うことで、自由度が高いレベルで高まるという効果がある。さらに、ワークフローや年末調整、出張、勤怠といった従業員が使うシステムには汎用パッケージを活用することで変化にも対応でき、全体のサービスレベルの向上と共に、コスト効果も高まる」として、各エリアのパッケージ候補を示しました(図10)。

図10:人事領域で活用可能なSaaSパッケージ例

図10:人事領域で活用可能なSaaSパッケージ例

最後に

今回、久保田氏が解説した5つの議題と本来解決したいこと、HR-Tech活用のキモをまとめたのが下図です(図11)。

図11:5つの議題とキーワード、本来解決したいこととHR Tech活用まとめ

図11:5つの議題とキーワード、本来解決したいこととHR Tech活用まとめ

久保田氏はまとめとして「現在の課題を帰納的に解決するだけではなく、5年後、10年後を予測し、演繹的な課題解決のための準備が今、必要。そして、そのためにこれからの変化に対応できるHR Techを活用しなければなりません。」とした上で、「こうした議題にお悩みの際は、ぜひIBMにご相談ください。」と結びました。

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