SAP HR Connect Autumn 2020 DAY4|昭和の働き方から令和の働き方へ―創業55年の日系企業が挑むDX/BPRを軸とした働き方改革

作成者:SAP Japan イベント投稿日:2020年11月13日

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2020年10月26日~30日の5日間、オンラインで開催された「SAP HR Connect Autumn 2020」。本稿ではDAY4(10月29日)に行われた株式会社ソラスト 取締役 専務執行役員 チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー 人事総務本部長の川西 正晃 氏による「昭和の働き方から令和の働き方へ~創業55年の日系企業が挑むDX/BPRを軸とした働き方改革」をご紹介します。1965年に日本初の医療事務教育機関として創業した同社は介護、保育へと事業領域を広げ順調に業績を伸ばす一方、旧態依然とした社内業務オペレーションが大きな経営課題でした。今回は、SAP SuccessFactorsを活用した人事の取り組みに加え、基幹システムの刷新、経理・人事・総務業務BPRの成果と課題についてご紹介します。

株式会社ソラスト 取締役 専務執行役員 チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー 人事総務本部長 川西 正晃 氏

株式会社ソラスト 取締役 専務執行役員 チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー 人事総務本部長 川西 正晃 氏

冒頭、川西氏は同社の事業及び沿革について紹介。2012年にMBOによる非上場と同時に経営体制を一新、2016年に東証一部再上場を果たした後、介護事業におけるM&Aをテコに毎年2桁成長を実現する一方、約27,000人の社員が日々行う紙と手作業ベースの旧態依然とした社内業務オペレーションが長年、大きな経営課題であったことを明かしました。

中でも人事の役割の変化について川西氏は「かつての『人を管理する』組織から、どうしたらパフォーマンスやエンゲージメントを高められるかを考え、戦略的にサポートする『HRビジネスパートナー』へと変わってきており、人事部門は自らを変革する必要がある。」と語ります。そして、そのための中期ビジョンとして、大きく3つを掲げていることを説明しました(図1)。

図1:トラスト人事が目指す「ビジネスパートナー」としての中期ビジョン

図1:トラスト人事が目指す「ビジネスパートナー」としての中期ビジョン

川西氏は、このビジョンの実現には「どこにどういったスキルを持つ人材がいるのかをデータ化しておくことが重要である」と話します。それは「このビジョンを実現するためにいろいろやってみたが、テクノロジーの力を借りないと、自分たちの仕事のやり方を変えないと実現できない」との経験から得た結論であり、「人で差別化し、競争優位を確立するためにはDXとBPR、働き方改革が必要」との方向性を示しました。
 
そして、旧来の人事業務における課題を川西氏は「27,000人の人材制度の運用が紙と手作業で行われていて、データが残らない。システムも人事部員以外はデータにアクセスできず、会社の資産である人材情報が上司の頭の中で管理されている。このやり方では間接部門の業務量がビジネス規模に比例して増大するため、将来売上が3倍になれば販管費も3倍になってしまう。」と語ります。

中でも「働き方改革」について川西氏は、「オフィスの風景」を強く意識したと次のように話します。「風景の違いは働き方の違い。それにより生産性も変わります。美しいオフィスは生産性の高い働き方を生み、それが社員の満足度にもつながる。そのため、紙の書類と文房具、自席に縛られる働き方ではなく、どこでも働けて高い生産性を実現する環境を実現する必要があると考えました。」

そして2019年、同社はオフィス環境を刷新します。フリーアドレスを取り入れ、いつでもすぐに集まり協働できるコラボレーションスペースも実現しました。しかし川西氏は、オフィス環境を変えるだけでは働き方は変わらない、と話します。「オフィスを刷新して数カ月たつと、社員の机の上が紙の書類で埋まっていきました。業務プロセスやシステムが変わらなければ、働き方を変えることはできないのです。よく『お洒落なオフィスは外資系だからで、日本企業には必要ない』といった声も聞かれますが、実際は利用しているシステムや業務プロセスの違いであり、生産性を高めるには総合的に取り組む必要があるのです。」

全社の基幹システムも刷新

こうした考えから同社は現在、社内の基幹システム全体のリニューアルにも取り組んでいます。川西氏は従来の課題を、次のように話します。「当社の基幹システムの多くは昭和の時代に構築され、紙と電話、FAXベース、拠点完結型の業務プロセスを前提にしていました。そのため、業務ごとに部分最適で構築され、複雑な連携が必要。さらに、法や行政、ビジネスの要請に対応できないことが手作業で補完されていました。」

加えて、川西氏は人事システムなど一部分だけを刷新しても非効率であると語ります。「人事は経理や会計システムと連携するため、新システムを導入すると従来のシステムとのインターフェースを開発する必要があり、工数もコストも非効率であると考えました。」

同社ではこれらの課題を改善し「全体最適」を実現するため、2018年の会計システムを皮切りに、2021年7月までにすべてのシステムの刷新が進められています(図2)。

図2:旧来(左)と新(右)基幹システム俯瞰図

図2:旧来(左)と新(右)基幹システム俯瞰図

新人事システムの要件定義とベンダー選定

同社は、2019年11月にSAP SuccessFactorsを導入しました。選定にあたっては最終的に200近い要件が定義されましたが、川西氏は主な項目として、以下の4つを挙げました。 

  1. すべての社員が人事データを検索・参照・利用できること
  2. 目標管理、評価、報酬管理、タレントビューなどあらゆる人事制度がシステム上で運用でき、過去データを蓄積、参照できること
  3. 社員のスキル、経験、キャリアの志向をデータベース化し、利用できること
  4. 紙ベースの手続きを排除し、セルフサービス化できること

この要件を基に、比較検討した結果が以下(図3)です。

図3:新人事システム選定時の比較

図3:新人事システム選定時の比較

川西氏は「国産、グローバルベンダー計4社から提案を受け、要件との適合、コスト、導入パートナーの信頼度などを勘案し、SAP SuccessFactorsの採用を決めました。」と採用理由を話します。加えて川西氏は、比較検討時に気付いた点を次のように話します。「まず気が付いたことは、国産とグローバルベンダーではデザインコンセプトが異なるという点でした。国産が人の管理、電子社員台帳的なデザインであるのに対し、グローバルは戦略的人材マネジメントツールとして設計されている印象があります。そして、信頼できる導入ベンダーは、優秀な営業とSE、パートナーがセットになっているという点です。留意すべき点としては、プロセス改善を行ってからシステムを構築するべきということと、プロダクトのオリジナルデザインを尊重すべしという点です。過度の作りこみをしない、せっかくのデザインを台無しにしないことも意識すべきでしょう。例えば、グローバル企業では当たり前の機能だが、自分たちは使わないので不要としてしまうと、将来利用したい際にまたコストがかかることもありますので、注意が必要です。」

ちなみに、同社内ではSAP SuccessFactorsを「STELA:Solasto Talent Engagement & Leader Assistance」と呼称しているとのことです。

BPRの取り組みと投資回収

続いて川西氏は、同社が2019年に実施した医療業務におけるBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)の取り組みについて解説しました。

同社では全国50拠点の支社ごとの紙と手作業ベースの業務オペレーションを改め、採用、人事、経理のクラウドシステムによるモバイル&クラウドベースでの業務への統合を実行しました。この結果、105名いた拠点の事務担当者を本部の人事スペシャリスト30名のみに削減。約2.6億円ものコスト削減効果があったとのことです(図4)。

図4:医療業務で実施したBPR

図4:医療業務で実施したBPR

同社ではこの実績を踏まえ、2020年4月から介護事業のBPRへの取り組みを開始しました。しかし、介護業務の報酬請求や売上計上は非常に複雑で、削減できる業務の見極めが困難だったとのこと。川西氏はそのプロセス最適化策としてLean Six Sigmaのフレームワークを用いた、工程ごとのValue Add Analysisの考え方を解説しました。

こうしたBPRおよび業務のDX化の取り組みで得られるコスト削減効果は年間7億円近くに上り、刷新する基幹システムの総ランニングコストを大きく上回る試算となっています。2018年からすべての減価償却が完了する2026年までのROIも1.9となり、承認を経てプロジェクトが実行されていることが解説されました。

最後に

川西氏はこれらDX、働き方改革、BPRの今後の取り組みについて「将来的には業務系のビジネスプロセスを含めた事業遂行のノウハウの標準化、スケーラブルのクラウド化を実行したい。」と語りました。そして、その実現のメリットについて「社員はここにつながれば業務ができることで、モバイルワークが実現します。各拠点やグループ会社は販管人員が削減でき、生産性と収益構造が改善。さらにはM&Aで一員になった企業のPMI(ポストマージャーインテグレーション)も早期に実現でき、グループ全体として圧倒的な市場競争優位性が確立できます。」(図5)

図5:ソラストプラグインオペレーション構想

図5:ソラストプラグインオペレーション構想

さらに川西氏は、このシステムの同業界の他の企業への外販提供の可能性にも言及。最後に「30年後もリーディングカンパニーであるために、テクノロジーを駆使して当社の得意なことで、日本の医療、介護、保育を支える会社になることを目指します。」と結びました(図6)。

図6:ソラストの将来構想

図6:ソラストの将来構想

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