SAP Industries Virtual Forum 2020 オンデマンド ハイテク産業―グローバルのハイテク産業の最新トレンドや技術革新をご紹介
作成者:SAP Japan イベント 投稿日:2020年11月9日
2020年3月に開催された ハイテク産業向けSAP Industries Virtual Forum 2020。ここでは、以下3つのセミナーの内容をご紹介してまいります。
- Hewlett Packard Enterprise CTOが語る 変革の道のり
- ハイテク産業の「すべてをサービスとして(everything-as-a-service)」ビジネスモデル
- ハイテク産業のインテリジェントサプライネットワーク
(本セミナーの模様はオンデマンドでこちらからご覧いただけます。)
Hewlett Packard Enterprise CTOが語る 変革の道のり

SAP Industries Virtual Forum 2020|HPE社 デイブ・カーライル氏
なぜHPEは、エッジコンピューティングとインテリジェンスへの移行を目指すのか?
目標を「世界最先端のエッジツークラウド企業になること」と語るHPE(ヒューレットパッカードエンタープライズ)CTO/グローバルIT担当 デイブ・カーライル氏はその実現に向けて最新のデジタルエンタープライズを稼働させるための全セキュリティ体制を構築する能力が必要で、それをas-a-service エクスペリエンスにより実現しなければなりません。」と語りました。
HPEが社運を賭けて挑む、エッジコンピューティングとインテリジェンスへの移行の目的についてデイブ氏は「近いうちにデータセンターの中よりその外から得られるデータがはるかに多くなる。重要なのはデータ量や演算量よりも、さまざまなシナリオの中でアクションを実行するために必要なインテリジェンスの量です。」と語り、「それを収集、活用するために大小さまざまな、または自動車など移動体にもエッジデバイスが組み込まれ、さまざまなクラウドと通信する時代を見据えた戦略なのです。」と説明しました。
デイブ氏は「AI、機械学習、ブロックチェーンなどの新たなテクノロジーは、ほとんどがインテリジェンスに関連するものだ」として「いま、HPEではそれらの活用で目指すべき未来や差別化について検討を重ねています。」と明かしました。そして、これらの世界がもたらす効果を「さまざまなものが相互作用し、一つに統合される。そしてお客様のエクスペリエンスやお客様との関係が改善され、新たなビジネスモデルが実現して行きます。」と語りました。
HPEのビジネスモデル変革、as-a-serviceプラットフォームにおけるSAPの貢献とは?
次に、このHPEのビジネスモデル変革におけるSAPの貢献について問われたデイブ氏は、「SAPは長い歴史の中でHPEの変革に深く関わる戦略パートナーであり、それは現在も続いている」と語り、その一例として「新しいサブスクリプションや管理バックボーン、統合課金処理やメディエーションなどの機能について、SAPが中心となってHPE独自の『トランザクションコア』を推進しています。」と明かします。デイブ氏は「その最終目標はビジネスの柔軟性とスピードを大幅に引き上げること」と語り、「SAPはトランザクションにとってバックボーン、つまりはコアになっています。」と語りました。
S/4HANA移行に際し、HPEがグリーンフィールドアプローチを選択した理由
HPEでは、10個のERPシステムをグリーンフィールドアプローチによってS/4HANAに統合しています。デイブ氏は「全世界の経理財務業務をS/4HANAで稼働させているHPEは、受注管理とサプライチェーン導入の真っ最中。目標に向かって順調に進んでいます。」と語り、「いま注力しているのは各国展開とローカリゼーション」とその進捗を明かしました。
S/4HANA移行に際しグリーンフィールドアプローチを選択した理由についてデイブ氏は「単純に変更が従来の移行とはけた違いであること」として「カスタマイズの程度も、ビジネスのプレッシャーも違う。HPEの場合は非常に大胆な改革と、ビジネスのシンプル化を目指すための選択であり、S/4HANAがまさにビジネスプロセスのシンプル化への転換点となりました。」と述べました。デイブ氏は見積から回収まですべてのビジネスプロセスの自動化率を大きく高める『ノータッチ』と呼ばれる取り組みが変革の目玉と語り、そのためのクラウドネイティブ開発やAI MLに多額の投資を行っていることも明かしました。
デイブ氏はこれまでの物理的な製品提供からの変化をこう語ります。「お客様は何でもサービスで提供され、そのサービスが向上していくことを期待しています。HPEの多くのインテリジェンスはそれらの自己修復に関連し、実際に最前線で稼働しており、サービスの中核となっています。お客様の需要変化予測もインテリジェンスをうまく使えば、意外と早く実現するでしょう。」と述べました。
変革の成功のカギとは?
最後に、変革を成功させるカギは?と問われたデイブ氏は「従来の受注管理やサプライチェーンの動きの遅さを解消すべく、HPEは新たなS/4HANAの基盤上ですべてを新しいas-a-service機能に集約しました。成功のカギは変化を迅速に推し進めることです。期待される成果を世界レベルのスピードで遅滞なく、もちろん予算内で実現することは容易ではありませんが、問題に適応する能力、確信を持って目標に向かって確実に制御できる能力、そして成果を達成するスピードと、予測可能性です。」と結びました。
ハイテク産業の「すべてをサービスとして(everything-as-a-service)」ビジネスモデル
SAP ハイテク産業ソリューションマネージャーのイザベル・ライングルーバーは、ハイテク産業におけるビジネスモデル変革を大きく3つに分類します。「1つ目はソフトウェアビジネスモデルへの変革、2つ目はソリューションおよびサービスビジネスモデルへの変革、そして3つ目は成果ベースのビジネスモデルへの変革です。」

SAP Industries Virtual Forum 2020|SAP イザベル・ライングルーバー
次にイザベルは業種ごとに焦点を「ソフトウェア業界では、いまや多くのビジネスソフトウェアがサブスクリプションにより提供されています。ハードウェア業界では、インフラストラクチャーやプラットフォームがサービスとして提供されているほか、DaaS(Device as a Service)も勢いを増しています。半導体業界ではまだ多くないものの、組み込まれたプログラマブルチップにより機能を動的に有効化するサービスなどが、今後普及していくでしょう。」と解説します。
ビジネスモデル変革へのSAPの支援
イザベルは、このビジネスモデル変革へのSAPの支援について、以下の8つを挙げました。
- すべてのビジネスとテクノロジーレベルを網羅するサポートを提供
- 利用状況の追跡、顧客の保有権利と財務プロセスを含む契約管理全般
- サブスクリプションや従量制課金、新たな収益要件にも対応するファイナンシャルマネジメント
- これらのプロセスは機械学習などのインテリジェント組み込みにより自動化、拡張可能
- IoTを構築可能な定義済みソリューション、デバイス健全性を監視可能なSAP Predictive Maintenance
- SAP Cloud Platformがアプリケーションの構築を支援
- SAP HANAがビジネスに必要なインサイトを提供
- SAP Qualtricsはカスタマーと製品のエクスペリエンスを統合し、顧客価値を最大化
事例:照明器具の販売からサービス提供型へのビジネスモデル変革を実現したSignify(旧Philips Lighting)社

SAP Industries Virtual Forum 2020|Signify社 ウィルフリード・ウィーカーズ氏
同社のデジタル業務担当プログラムマネージャー、ウィルフリード・ウィーカーズ氏は「照明市場の世界的なリーディングカンパニーである当社は、従来の照明機器や電球の販売から、光を提供するサービス提供事業へとシフトチェンジしました。そのためには工場と計画システムを見込み生産から受注生産に変える必要がありました。受注からデリバリーまでのエンドツーエンドの流れのデジタルによる統合を、SAP Leonardoで始め、Digital Manufacturing Cloudを活用しています。これは適切な製品を適切なタイミングで製造するのに有効です。SAPと当社は四半期ごとに反省会を行い、真剣な討議を重ねています。」と語ります。
「サービスとしての継続性」ベースのビジネスモデル変革に役立つ5つのアドバイス
最後に、Accenture社ハイテク産業担当グローバルリーダー、シニアマーケティングディレクターのデイブ・ソヴィー氏が、「サービスとしての継続性」ベースのビジネスモデル変革に役立つ5つのアドバイスを行いました。

SAP Industries Virtual Forum 2020|Accenture社 デイブ・ソヴィー氏
- エンドツーエンドのカスタマーエクスペリエンスと顧客のライフサイクルに集中し、組織全体でデザインシンキングすること。
- 将来実現したいエクスペリエンスを製品ロードマップで熟考し、今後3年間必要となる機能を今、アジャイルデリバリー思考で設計に組み込むこと。
- ディストリビューターとリセラーという、従来型市場戦略の再考と販売サイクル全体の根本的な変化。
- 必要な変化への真の理解。価格設定、提供方法、機能の定義、ユーザーとエンタイトルメントなどを定義する能力。
- この移行を組織変革と捉えること。過小評価せず、カスタマーサクセス部門を立ち上げ組織の文化そのものを変革すること。
ハイテク産業のインテリジェントサプライネットワーク
SAP ハイテク産業 ソリューションマネージャーのドミニク・エルレバッハは「いま、ハイテク産業の多くがリードタイムの短縮と強いコスト圧力に直面しています。SAP Ariba Networkにより企業はグローバルなサプライヤーベースを利用して、極めて容易に商品やサービスの価格や条件を比較、見積を取ることができるようになりました。今日、顧客が期待する応答性を達成するには、供給市場に対する高い俊敏性が求められます。ハイテク産業のサプライチェーン担当者が、優れた顧客サービスとコスト競争力に加えて、市場破壊に対応する能力のバランスをいかにうまく保つかが成功のカギとなるのです。」と語りました。

SAP Industries Virtual Forum 2020|SAP ドミニク・エルレバッハ
ドミニクはその目標を「企業の中にあるあらゆるデータをリアルタイムかつエンドツーエンドで可視化すること、そして意思決定支援ツールにより速やかに成果を得られるようにすること」と語り、SAP デジタルサプライチェーンソリューションの活用を促します。そして「今やSAPはこうしたお客様の意思決定をはるかに迅速に実施できるようになりました。事業情報と機械学習やブロックチェーンなどの最新テクノロジーがSAPによって統合されます。これこそがハイテク産業が求める柔軟で回復力が高い、信頼できるソリューションの構築基盤です。」と語りました。
事例:SAPの支援でインテリジェントサプライネットワークに移行したMicrosoft
Microsoft サプライチェーンビジネステクノロジーズ プリンシパル プログラムマネージャーのコレイ・ヒュージス氏とサプライチェーン CTOのロバート・メシェウ氏が、同社の実現したデマンド ドリブン サプライチェーンについて解説。両氏はその効果を「SAPのインタラクティブで使いやすい統合仮想プラットフォームツールによる顧客の需要把握で、顧客へのサービス提供が迅速化し、運転資金が3億ドル、納期遵守率も5%改善され、在庫水準も下がりました。次のステップとしては、デジタルサプライチェーンと組み合わせたさらなるメリットの実現です。今後4~5年は安心してビジネスにまい進できます。」と語りました。
Deloitte社が語るキネティックエンタープライズの重要性
次はパートナーの視点です。キネティックエンタープライズとして進化する企業を目指すDeloitte社 プリンシパルのデブ・バッタチャレルジ氏が、その変革への4つのポイントを紹介しました。

SAP Industries Virtual Forum 2020|Deloitte社 デブ・バッタチャレルジ氏
- 「クリーン」過去のテクノロジーによる技術的負債が存在しない
- 「インテリジェント」ビジネスに必要なインサイトが獲得できる
- 「包括的」アプリ、サービス、パートナーからなるエコシステムとビジネスプロセス最適化能力、迅速なイノベーションのための方向転換が可能である
- 「即応性」変化を予測、クラウドに対応し規模をオンデマンドで正しく調整する
デイブ氏は、「これにより企業は進化する能力を身に着け、真の改革に乗り出せるようになる」と、キネティックエンタープライズへの変革の必要性を説き、Deloitte社がSAPのテクノロジーを活用し、どのような変革を進めているかを詳しく解説しました。
(本セミナーの模様はオンデマンドでこちらからご覧いただけます。)