SAP BusinessObjectsとSAP Analytics Cloudで 目的に応じて分析ツールをハイブリッド活用 人材/組織の変革と経営基盤の充実へ
作成者:SAP編集部 投稿日:2021年2月19日
東急建設株式会社は、鉄道・道路・橋梁などの土木事業、多摩田園都市開発や渋谷再開発などの大規模プロジェクトを多く手がけています。環境変化への対応力を高めるため、近年では新たな戦略事業の核となる不動産事業、国際事業なども展開し、競争力の向上と収益多様化に取り組んでいます。2003年からSAP BusinessObjectsを活用してきた同社では、データ可視化や分析を強化するため2019年にSAP Analytics Cloudを導入。建設業の課題とされる長時間労働の削減をはじめ、経営企画、営業管理、原価管理など、データ活用の幅をますます広げています。
さらなる成長に向け、意思決定を支援する分析ツールを求めて

東急建設株式会社 経営戦略本部 ICT戦略推進部 次長 コーポレートICTグループリーダー 矢代 彰紀 氏
経営戦略本部 ICT戦略推進部 次長 コーポレートICTグループリーダー の矢代 彰紀氏は「当社には、数値に基づいて理論を組み立てていくというデータ活用の文化が根づいています。SAP BusinessObjectsについては2003年ごろに導入し、各部門がそれぞれ必要なデータを収集/加工して活用してきました。一方、中期経営計画に基づく3カ年のICT戦略を進めるなかで、データを集計するだけでなく、見やすく可視化して迅速な意思決定につなげたいという要望が増えてきました」と語ります。
社内にはITシステム、ネットワーク、PCなどの運用管理を行うシステムセンターという組織があり、東急グループ内のIT専門会社である東急テックソリューションズ株式会社が業務を担っています。矢代氏と同センターのメンバーは、データを見やすく可視化するダッシュボードを作成する場合、SAP BusinessObjectsのみでの構築は難しいと判断し、ツールの選定に乗り出しました。そこで検討されたのがSAP Analytics Cloudです。

東急テックソリューションズ株式会社 建設ソリューション事業部 マネージャー 早川 洋志 氏
「SAP BusinessObjectsの導入は外部ベンダーに構築を依頼しましたが、近年は社内スキルが向上し、システム内製化の体制が整っています。SAP Analytics Cloudはさまざまな機能があり、簡単にグラフなどが設定できますし、既存のSAP BusinessObjectsのデータ資産が活用できることを評価しました」と、東急テックソリューションズの建設ソリューション事業部 マネージャー 早川 洋志氏は振り返ります。
そのほか複数の製品とも比較し、最終的にSAP Analytics Cloudの採用が決定しました。「SAP BusinessObjectsのデータはもちろん、ほかのデータもインポートして利用可能です。日本語のドキュメントも揃っており、BIツールとしては導入コストが低く、スモールスタートできることも決め手となりました」(矢代氏)
建設業の課題である長時間労働の解決にデータを活用
SAP BusinessObjectsとSAP Analytics Cloudのハイブリッド活用は、人事部が主導してきた労働時間管理から始まりました。建設業は他業界と比べても長時間労働が顕著であり、業界団体である日本建設業連合会を中心に作業所の完全週休二日化などに取り組んでいます。また2019年に改正された労働基準法における時間外労働の上限規制は5年間の猶予が与えられています。

東急建設株式会社 人事部 太田 喜剛 氏
東急建設では1か月あたりの時間外労働上限を2020年度は80時間と設定し、以降徐々に数値を下げ、2024年4月からは45時間とする全社統一の目標値を定めました。その中で、人事部は全社員の労働時間のリアルタイムでの把握と上司も含めた関係部門、関係者へのスピーディーなフィードバックの実施が求められます。そこで労働時間管理をダッシュボード化し、部署ごとに残業時間の超過を把握できるようにしました。人事部の太田 喜剛氏は、ダッシュボードの効果について次のように語ります。
「従業員の労働時間を管理者が把握しやすいよう、以前は毎月人事系システムからデータを取得し、作表したファイルを各部門に送付していました。現在はSAP BusinessObjectsで自動集計されるため作表と送付業務が不要になり、手作業によるミスの心配もなくなりました。各部門担当者は自身の見たい時に労働時間を把握できるようになり、効率が格段に向上しています」

東急テックソリューションズ株式会社 建設ソリューション事業部 北 信之 氏
SAP Analytics Cloudによるダッシュボード構築を担当した東急テックソリューションズの北 信之氏は、構築方法について次のように説明します。
「SAP BusinessObjectsでユニバースを作って、そこからデータを取り込むモデルを作り、チャートなどで可視化するための部分であるストーリーを作ります。今回の要件である、部門の絞り込みについてはモデルを階層化することで実現できました。モデル作りは少々時間がかかりましたが、ストーリー部分はシステムに詳しくない人でも設定できるほど使いやすいです。SAP BusinessObjectsのデータを利用できるのは大きなメリットで、システム運用を内製化しているのですぐに構築を開始することができました」
労働時間管理のダッシュボードはシステムセンターで試作して人事部がレビューする工程を繰り返し、1カ月程度で構築できたといいます。IT部門と事業部門が互いに理解し協調できるのも、データを重視する企業風土の表れです。
経営企画、営業、原価管理などに活用分野を拡大
人事部の太田氏は、今後のSAP Analytics Cloud活用について次のように語っています。
「管理職の方々にはタイムリーに適正な情報をなるべくわかりやすく伝えて、少しでも時間外労働を減らしていきたいです。今後は、経営層に労働時間の状況を適切に伝えることで、人員配置や採用活動を最適化していくという狙いもあります。さまざまな情報を掛け合わせて、新たな人事制度を設計するための分析にも活用したいとも考えています。うまく活用して、働きがいのある会社にしていきたいです」
ICT戦略推進部には、ほかの部門からの要望も次々と届いています。
「建設工事の事業管理している経営企画部が経営者に対して説明をするものや、営業部門の担当者が受注状況などを確認するもの、工事の原価を管理する部門から予実管理を分析するものといった要望があり、構築を進めています。ほかにも経費精算システムのSAP Concurと連携して経費の使い方を分析したり、AIのスマートディスカバリーを活用したりするなど、新たな気づきを得られる仕組みを作っていきたいです」(早川氏)
2021年から始まる次の経営計画を策定するなかでも、経営層、各部門でビジネス分析へのニーズが高まっているといいます。
「働き方改革推進部との会合で人事部向けに作ったダッシュボードを発表したところ、働き方改革にも活用できるのではと強い関心が集まりました。また、経営判断のためのダッシュボードのニーズも明確化されています。蓄積したデータをSAP Analytics Cloudによってさまざまな角度から分析し、また機械学習も取り入れてリスクや問題の原因究明、そして未来の予測などに活用したいです。私たちの部門がまだ気づいていないデータ活用方法があると思っていますので、ユーザーにもっとアピールできるような活動をしていきたいです」(矢代氏)
「活気ある風土のもとで真価を発揮する環境変化に負けない企業グループ」を目指す東急建設の強みは、理論的なデータ活用という企業文化にあります。SAP BusinessObjectsとSAP Analytics Cloudは、同社の意思決定を支えるますます重要な役割を担っていくはずです。

渋谷スクランブルスクエアをバックに、 左から北氏、早川氏、矢代氏、太田氏