サステナビリティの本質とその指針について


2021年が始まり、一年の新しい計画を立てている読者の方々も多いかと思います。
個人だけでなく、法人の視点でも、経営舵取りの指針を見直そうという動きが、昨年の新型コロナによる影響を受けて増えているように感じます。

本投稿では、2020年のパンデミックや政府の脱炭素宣言を受けてにわかに話題となった「サステナビリティ(持続可能性)」に対する向き合い方について取り上げてみたいと思います。
私自身も当事者として、このテーマで自社または社外での支援に関わることが増えるようになりました。ただ、業態によって枝葉は変わりますので、今回は共通の幹に焦点を当てています。

まず、自社のサステナビリティに関する取り組みの紹介から入ります。(参考までに、こちらでグローバルサステナビリティ責任者のメッセージも配信しています)

SAPでは2009年から「サステナビリティ経営」へのシフトを対外的に掲げ、その方針の下で事業戦略及び活動を変化させています。2015年に国連が発表したSDGsに対しても、それまでの流れをふまえつつマテリアリティ(重要課題)の設定やそれに紐づく活動を統合報告書等で積極的に開示しています。
そして2020年からは、自社の活動に閉じずにステークホルダーの方々と一緒に、まずは気候変動をテーマにした「CLIMATE21」というプログラムを開始しました。

ここで重要なポイントは、サステナビリティに舵を切った背景です。決して思いつきや時代の波(当時は今ほどブームではありませんでした)に乗ったわけではありませんでした。
当時は、SAPの主要な商材であるERPの販売網としてグローバル展開がひと段落して、いわゆる「大企業病」または「官僚化」への危機感を募らせていました。
グローバル化によるバックオフィスのシェアード化など業務変革は進めていたものの、テリトリ毎のしがらみや優秀な人材流出などで組織が硬直化してしまい、顧客やそれをとりまく社会など、社外で起こっている変化への対応が後手に回っていました。
その強い危機感を元に、当時のCEOを中心とした経営層が打ち出したのが、「インテリジェント化」と「サステナビリティ重視」という指針です。今ではそれは「Intelligent Enterprise」というコンセプトとして2018年から提唱しています。

「インテリジェント化」と聞くと、AI・RPA・IoTなど先端技術に目がいきがちですが、重要なのはその利用目的で、(マシンと共存共栄出来る仕組み化を通じて)個々が付加価値業務に集中できる環境づくりにあります。
そしてもう一つの「サステナビリティ重視」とは、教科書的には「持続性のある社会の実現」と翻訳出来ますが、それを実行し続けるためには「個々が価値のある社会を実現したいという強い思い」が欠かせません。今ではそれを「Purpose(存在意義)」という言葉で、企業全体で日常的に意識付けをしています。
この2つの指針を横並びにすると分かるのが、価値に対する範囲と方法が若干異なるだけで、目指すものは「ステークホルダーを大事にする全員参加型の経営」ということです。

上記を、仮にBuzzword(流行用語)で表現しなおすと「ステークホルダー資本主義の時代の下、DXを通じたサステナビリティとパーパスドリブン経営の実現」と言い換えることもできなくはありません。(相当冗長な表現ですが)

社外でのご支援で散見されるのが、まさにこれらのBuzzwordごとにサイロ化された企画検討やプロジェクトの構造です。
具体的には、「働き方改革」や「DX(デジタル変革)」や「WFH(Work From Home)」、そして「サステナビリティ」を別々のテーマとして議論し、責任者も分けた体制を設ける企業も見受けられます。
上記の自社事例で引き合いに出したように、これらは経営の指針から見ると相互に影響を与えるものであり、その根っこでは繋がっています。
もし皆さまの所属する企業で、例えば「サステナビリティ経営を目指す」という指針が出たときには、従来から話題に挙がっていたであろう「働き方改革」「DX」といった既存の活動も絡めてその目的や体制などの検討を見直すことをお勧めします。
こういった混乱の時期においてはどうしても新しいBuzzwordが飛び交い振り回されがちですが、一旦俯瞰的に全体を眺めて、その本質的な意味を冷静に問うことで、今までやってきたこととのつながりが必ず見出されると思います。

最後になりますが、本年が本当の意味でサステナビリティ元年となり、そして何よりも読者の皆さまが健康で幸福な1年になることを心より願って今回の締めとします。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。